第46話 家に遊びに来たいマツリさん
「み…Mr.
月曜日、憂鬱な学校も終わり八雲と帰ろうとしていると、突然マツリさんに呼び止められた。
夕日を受けてカラメル色に照る彼女のブロンドの髪は相変わらず綺麗で男子たちの視線を釘付けにしていた。
にしても「ミスター」ってのはちょっと…恥ずかしいな…。
「普通に湊で良いよ。どうしたの?」
そう聞くと彼女は何かを言おうとしては口を閉じ、しばらくずっと金魚のように口をパクパクさせている。
「えっと…どうしたのでしょうか…?」
八雲も疑問に思ったのか俺にこそっと言ってきた。しかし聞こえたらしくマツリさんは焦ったようで、急に大きな声で俺たちに叫んだ。
「きょ…きょきょきょ…今日、
——————
「お邪魔しまぁす…」
「どうぞー。」
どうやらマツリさんは家に遊びに来たかったらしい。そうならそうとすぐ言ってくれれば歓迎したのにな。
「とりあえずソファにでも座ってて。俺、紅茶淹れてくる………ってどうしたの?」
なぜかリビングに入るや否や周りを見渡してぽーっと顔を赤らめて立っているマツリさん。
「ここが…」
小さくそう呟くので八雲と顔を見合わせて首を傾げる。するとまた呟いた。
「ここが二人の愛の巣…聖域……!!」
「なっ……!!」
「…………っ!!」
またしても急な言葉に目に見えて動揺してしまった俺たち。
そうだった…この人は八雲ラブのそっち系の人なんだった…。
容姿とのギャップがすごすぎて毎度忘れてしまう。
「おっ…俺!紅茶淹れてくっから!八雲はマツリさんと待ってて!」
「は……はい!」
とりあえずこの空気を変えるために俺はキッチンへと逃げたのだった。
——————
コト…
お盆にティーカップを三つ乗せて行き、ソファの前のテーブルに置いた。
「
マツリさんが紅茶を一口飲む。
部屋は寒かったのでほっとしたらしい。
「マツリさん、この前はありがとうな。」
「
カップを持ちながらきょとんとした顔をされた。改めてお礼を言うの忘れてたしちゃんと言っておかないとな。
「マツリさんが転校してきた時だよ。あの時言われた言葉、俺すげー嬉しかったんだ。ありがとう。」
「私からもちゃんとお礼をしたかったんですよ。マツリさん、ありがとうございます。」
二人で頭を下げるとマツリさんは焦ったように言った。
「ふ、二人とも!頭を上げてよ!ボクらただボクが思ったことを言っただけだし!」
「その言葉が嬉しかったんだ。だからさ、今日みたいにもう遠慮しないで良いんだよ?」
「そうですよ。私たちもう友達ですからね!」
「…二人とも…!」
俺たちの言葉に嬉しそうな表情を浮かべる。
うんうん…良かった良かった。
「じゃあさ…
しばらく三人で話しているとマツリさんが真剣な
「もちろんですよ!」
八雲が嬉しそうにマツリさんの手を握る。
どうやら心を開いてくれたと思ったらしい。
むしろ今まで心開きすぎたが
「一つ…一つだけ聞いても良い…?」
握られた手をうっとりした顔で見つめるマツリさん。
「もちろん。」
「なんでもどうぞ!」
真剣な顔になぜかどんどんと赤みがさしていく。……なんか悪い予感がするぞ…。
「ふ…二人は……もう……」
「……うん…」
「……はい…!」
「ふぁ……''
「なっ……!」
「キ……キ……スですか…!?」
俺の予感は的中してしまった。
目の前でもじもじして恥ずかしそうにするマツリさんは爆弾をぶっ込んできたのだ…。
しかしこれ…どう答えたものか…。
「遠慮なく」なんて言ってしまった手前、断ることは出来ないし…。
チラと八雲の方を見てみた。
「えっと…その…ええっ………と…」
マツリさんの比にならないぐらい真っ赤になっていた。すると俺の視線に気づいたのかズボンの裾を引っ張って助けを求めてくる。
流石に恥ずかしいのかぷるぷるも少し震えて目で訴えてくるので俺も覚悟を決めることにした。
「んと……しま…した。」
「…………!!!!!!」
恥ずかしくて噴火しそうになりながらも伝えると、なぜかドンッと音が響いた。
気がつけばマツリさんの姿はそこになくなっていたのだ。
「ま、マツリさん!?」
「だ、大丈夫ですか…!?」
なんとマツリさんは床にぶっ倒れていた。
とても幸せそうで安らかな顔に鼻血を少し流して。
「なんか…この話すると…」
二人してソファを見た。
初めてキスした時の事が鮮明に蘇ってくる。
ふしゅううう…という音をたてて俺たちも倒れそうになるのを堪えた。
「えへへ…。なんだかちょっと…恥ずかしいですね…」
意識がないのに更に鼻血を流したマツリさんを夢から覚ますのに二時間ほどかかった…という。
☆☆あとがき☆☆
本日もありがとうございます!
今日も寒いですね…体調にお気をつけて引き続きお楽しみください!
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