第45話 ファーストキスの弊害

 「日曜日ですっ♪おっ休みっ♫」


 朝、目が覚めてキッチンへと向かうとウキウキるんるんで鼻歌を歌いながら料理しているとこさんがいた。

 ふわっふわな金髪がとこさんの動きと合わせて喜びを表している。


 「おはようございます、今日はお休みですか?」


 「おはようございますっみなと様っ!そうなんです!今日は久々のお休みです!」


 「そうなんですね。ごめんなさい、お休みの日にまでご飯作ってもらっちゃって。」


 「良いんですよ。湊様には普段からお嬢様がお世話になっておりますしね!」


 「ありがとうございます。俺、手伝いますね。」


 「これはこれは、じゃあお願いします。」


 とこさんと学校での話を話したり、何気ない日常の話をしたりして料理を進める。

 先生の仕事も上手くいってるようでなによりだ。生徒からの人気もすごいことになってるし心配なさそうだけど。


 しばらくして料理が出来上がり、テーブルへと運んでいると、


 ガチャ


 「おはよぅごじゃいますぅ……」


 今日は少し遅めの起床な八雲やくもがやってきた。

 眠たそうな目をこすりながら手伝いにきてくれる。


 「おはようございます、お嬢様。」


 「おはようとこ…今日はお休みなのですか?」


 「はい!久々にお嬢様と一緒にいられますね。」


 「それは嬉しいです。湊くんもおはようございます。」


 「うん、おはよう。昨日の夜かなり冷えたけど寒くなかった?」


 「おかげさまであったかかったです。ありがとうございます。」


 「なら良かった。ご飯出来てるから準備して食べよ。俺、すい起こしてくる。」


 「はーい、分かりました!」


 バタン


 八雲と朝の挨拶を済ませ、半ば駆け込む形で翠の部屋に入った。

 理由は…ただ一つ。


 (ヤバい…なんか意識して顔を直視できねぇ…!!)


 昨日、なんだかんだでファーストキスを終えた俺たち。

 あれ以降どうしても顔を見るたびに思い出してしまいドキドキする。

 寝る前もねだられてキスしたけど…一回って言われたのに何回やったんだあれ…。

 八雲ってもしかして噂に言う''キス魔''ってやつなのか…?


 ま、まあ良いや…とりあえず翠を起こそう。


 ベッドを見ると布団にくるまった翠がいた。

 今日はスムーズに起こせると良いけど…無理だろうな。


 「おーい翠、起きろよー。」


 「………んん…」


 しばらく体を揺さぶり続けると、目が開きはじめた。

 

 「もうご飯だぞ。起きろよー。」


 「お兄ぃ…ちゃん……」


 スッと体が起き上がり、眠たそうな目で俺を見つめる翠。まずい…これはまたいつものパターンか…。


 「お兄ぃちゃん…好き…♡!」


 突然、ガバッと腕を回され抱きしめられた。

 離れようとするも力が強すぎて脱出不可能。

 一体どこにそんな力があるんだ…。


 「お、おおい…早く起きろ…って…!」


 「好き好き好き…!」


 次第にスキンシップはエスカレートしていき、翠の顔が俺の顔へと近づいてきた。

 そして…その目は俺の口へと注がれている…気がする。


 「ちょちょ、ちょちょちょ…それはヤバいって…!」


 必死に抵抗するもがっしり掴まれた腕はほどけずにどんどんと翠の顔は近づいてくる。

 これは…マズイ…!どんだけ寝ぼけてんだよ…!


 「湊く〜ん。翠ちゃん起きましたか…って…!」


 八雲が部屋に入ってくるがそんなどころではなく、必死に翠を振り解こうとするが…マジで離れない…。

 もう翠の顔は目と鼻の先…何しようとしてるのは…なんか分かってしまった。


 「だ…だめ…!」


 すると突然八雲が飛び込んできて、翠からされる前に俺の口にキスをした。

 あまりに突然すぎて…俺も寝ぼけていた翠もまんまるに目を開けて驚いてしまった。


 「…ぷはっ…」


 どうやら翠も目を覚ましたようで、八雲が口を離した。

 俺は…驚きとドキドキで放心状態。

 翠も翠で目が覚めたら義兄がキスしてるところを見て同じく放心状態。


 唯一八雲だけが多分正気?でいる。

 俺の服の胸元を掴んで顔を埋めて呟いた。


 「…湊くんは……私のだもん……」


 「…!!」


 その一言で一気に俺は正気へと戻された。

 代わりに…ヤバい…八雲が可愛すぎて…この場でもっとキスした……


 いやいや、ダメだろ…翠もいるんだし。


 「ご、ごめん!わ、わた、私先行ってる…!」


 顔を真っ赤にした翠が寝癖をぴょんぴょんさせて部屋から飛び出して行った。

 まあ…無理もない。


 「や、八雲…?そろそろ俺たちも行こうか?」


 「……は、はい…」


 「………」


 「………」


 なんとなくお互い気まずい空気が流れる。

 八雲は顔を赤くしたまま俺の胸にいるまんまだ。


 「…八雲?」


 「…はい?」


 「顔、上げて。」


 「…?」


 ちゅっ…


 顔を上げてもらった隙に俺の方からも…キスをした。二人しかいない部屋に唇を離した際に生じたリップ音がなまめかしく響く。


 「その…俺も八雲としかしないから…安心してよ…」


 「…!」


 恥ずかしいのか八雲は耳まで赤面し、俺の腕の中でぷるぷると震えた。


 「じゃ、じゃあ!そろそろ行こうか!ご飯もう出来てるし!」


 「そ、そうですね…!行きましょうか…!」


 俺も恥ずかしくなり、立ちあがろうとするも八雲にまたしても止められた。なんだろうと思い、ベッドにいまだ座っていた彼女の方を振り返ると…


 ちゅ…


 急に立ち上がった八雲からキスをされた。

 突然の事で目を開けたままだったので…初めて明るいところで八雲のキス顔…を見てしまった。

 目をきゅっと瞑り、自然な表情で少しだけ背伸びをしている。

 そんな姿に…一層ドキッとしてしまった。


 「私も…湊くんとしかしないですから…!」


 「……!」


 そう言うと八雲も部屋からパタパタっと出て行ってしまい、俺一人だけとなる。

 多分、恥ずかしさの限界を迎えたのかな。


 「まあでも……」


 それは俺も一緒だ…。あまりの出来事に顔…ニヤけてなかったかな。

 最近の八雲は…可愛すぎて困る。

 


 


 


 


 ☆☆あとがき☆☆

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