第44話 八雲とファーストキス
「土曜日だあああ!」
この数日、途方もなく長く感じた久々の学校も土日という素晴らしい時を迎えて一旦休みとなった。
起きる時間は…早く起きる体質で変わらないが、それでも一日のモチベーションがまるで違う。
朝ごはんも作った…掃除もしたし洗濯もやった…遊びに行く
「…ううっ…今日さっむ!」
部屋は凍てつく空気で覆われ、冷気が体をぶるぶると震わせた。
既にテレビの前にいた
ココアの入ったマグカップを握り、ソファのクッションを
まるで小動物のようだ。
「きょ、今日は…とても寒いです…ね。」
俺が来たのに気付き、カタカタと体を震わせて言った。とりあえず隣に座ることに。
「だね…ベッドにいても良いけど布団は干しちゃったし…。」
何かあったまる策はないかと考える。
暖房は…あるけど電気代がかかるし…いやでもこんなこと言ってる場合じゃないな…。ストーブぐらい買っておけば良かっ……
「八雲!」
「ど、どうしたんですか急に?」
「良いのあった!」
「良いの?」
急いで布団がしまってある棚に行き、あるものを取りに行く。そしてそれを持って八雲の元に戻った。
「じゃじゃーん!そういえば昔翠と使ってた毛布があるんだった!これ使お!」
そう言うと勢いよくこくんこくんと頷いて賛成してくれたので早速ソファに敷いて、二人で中に入る。
「「あったかあ…」」
耐えることすらキツかった寒さが毛布のおかげで一瞬にして和らぎ、一気にぬくぬく空間へと一変した。
それに隣でぴったりとくっつく八雲のおかげで人肌によりさらにあったかくなる。
「気持ち良いですねぇ……あったかいと眠くなっちゃいます…」
「分かる…俺もウトウトしてきた。」
「ふふ…それじゃ少し寝転がっちゃいますか。ほら、
こてん、と寝転がった八雲。
俺の方を向いて隣をぽんぽんと叩いてくる。
これは…俺も来い、と言ってるんだろうな。
「…じゃあ遠慮なく。」
恥ずかしいが隣に行きたい欲には抗えず、素直に応じた。
ソファに二人で並んで寝るには少し狭いのでかなり体が密着しているのでさっきの比じゃないぐらいぽかぽかしてきた…。
「んん…あったかい…。すっごく気持ち良いです…。」
「う、うん…。気持ち良いね。」
寒さから逃れられて気持ち良さそうにとろんとした表情を浮かべる八雲。
腕を回された他、足まで絡まってきたので俺はドキドキして死にそうだよ…。
「くすっ…、どうしたんですか?そんなに顔を真っ赤にさせて。」
あれこれと考えていたら八雲が少し笑いながら言ってきた。…誰のせいだと思ってるんだ…
「いや…その、顔が近いなって…。」
「ふふ、そうですねぇ…キスできちゃいそう………」
ぼんっ
自分の言った事を理解したのか俺よりも顔を真っ赤にして八雲が口をぱくぱくし始める。
目を右に左に、上下左右泳がせてあからさまに慌てだす。
「あ、あのっ…ええっと…忘れて…くだ…さい」
「う…うん。」
なんとなくお互い気まずくなり、黙り込んでしまう。
それもそのはず…八雲が口にした「キス」と言う言葉が頭から離れないのだ。
意識しないようにしてもいつの間にか視線が八雲の唇へと向かってしまっている。
とても艶やかで…可愛らしくて…柔らかそうで……その全てが俺を魅了する材料になってしまう。
(でも…)
本当にここでヘタレて良いのだろうか…。
最近、ずっと八雲に助けられてばっかだし男らしいところのカケラも見せれてなかった。
このままで良いのか…?自分に甘えてくれる八雲に俺は甘えてるんじゃないか…?
「そんなのダメだ…」
「…え?」
ボソリと口に出し、覚悟を決める。
俺が…行動しないと…!
ギシ…
「ひゃっ…」
俺が動いた事によりソファが小さく軋むと共に八雲が声を上げた。
寝ている姿勢から起き上がり、八雲の上に跨ったからだ。
しかし…直視するのは恥ずかしいのでせめてものとして毛布を頭までかけて中に入った。
「みな…湊…くん?」
「…八雲、好きだよ。」
恥ずかしすぎて一刻も早く目線を逸らしたい状況だったがなんとか視線を合わせ続け、身を乗り出して顔を近づけた。
ちゅっ……
それは…キスというにはあまりに拙く、ただ唇どうしをくっつけたようにも思えるが…確かに感じた八雲の唇のあたたかさ、思ってた通りの柔らかさ…。
唇を離し、顔を上げようとすると八雲の腕が首に回り、止める。
暗くても分かる。八雲の顔は…真っ赤に染まり上がり、目からは涙が少し
「…八雲?」
「ダメです…終わっちゃやです…。もっと…もっと。」
赤くなった顔に涙が妖美に光り、艶やかに感じて思わずごくりと息を呑む。
「…して?」
「…っっっ!!」
俺はもう一度顔を近づけ、八雲と唇を重ねた。
今度はくっつけるだけじゃなくて…。
相変わらず余裕はなく、無我夢中だったが八雲もそれに応えてくれて彼女からしてきてくれたり、唇を食んだり、何度も何度もキスをしてお互いの感触を感じあった。
毛布の中はどんどんと熱が上がり、暑くなるぐらいだった。
「ぷはっ…」
彼女の吐息が顔にかかる。
俺たちは一度顔を上げ、お互い見つめ合う。
「…もう…本当にキスするなんて…。驚いたんですよ…」
「ごめん、嫌…だったかな…」
「嫌なら…こんなにいっぱい…し、しないもん…。ちょっとびっくりしただけです。」
「そ、そっか…なら良かった。」
キスを終えて初めてまじまじと見るお互いの顔。唇を見るたびに「ああ、俺はキスしたんだな」と考えてしまい、思い出すだけでドキドキする。
「湊くん…」
「…ん?」
「私…今…すっごく幸せです…」
「…俺も幸せだよ。」
「…その…もう一回だけしても良い…です…か」
「っ!も、もちろん。」
「じゃ、じゃあ…」
ずいっ
八雲は目を瞑り、唇を少し突き出して俺からしてもらうのを待つ姿勢をとる。
その無防備な姿に一層ドキッとしてしまう。
(どんだけ…可愛いんだよ…)
俺はもう一度、八雲にキスをした。
☆☆あとがき☆☆
本日もありがとうございます!
ついに二人もここまできちゃいました…。
みなさま、これからも末永くよろしくお願いします!
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