第42話 八雲と膝枕

 アメリカからの転校生、マツリさんが来た日の夜。俺は既に風呂から上がり、ぐったりとソファに寝転んでた。

 久々の学校、昼に起きた出来事で疲れてしまったのである。


 「そういやお兄ちゃんのクラス、転校生が来たの?すっごいウワサになってたよ。」


 隣でアイスを食べながら一緒にテレビを見ていたすいが言う。

 ちなみに八雲やくもは風呂に入ってるので今は俺たち二人だけだ。


 「そうそう、アメリカから来たんだって。」


 「アメリカ!?すごー!どんな人だった?」


 「優しい人だったよ。綺麗だし。」


 思った事をそのまま伝えると翠はニヤッとして寝転んでた俺にのしかかってきた。


 「うぐ…なんで乗ってきた…。苦しいだろ…。」


 「ひっさびさに二人きりだったからぁ。それよりお兄ちゃん、いいの?綺麗とか言っちゃって。八雲おねえちゃん怒っちゃうよ?」


 「本当のことだし、マツリさんには色々助かったから怒ったりしねえよ。」


 「ふーん。」


 会話が一旦終わり、テレビの音だけが流れるもしばらくすると翠が再びアイスを食べ始めた。あろうことか俺の上で。


 「…アイス食べるなら降りろよ。こぼれたら大変だろ。」


 「えー?おにいふぁんもたべりゅ?」


 咥えていたアイスを口から離し、俺の前に持ってきた。

 ソーダか…しかも中にバニラが入ったやつ。

 うん、アイスの魅力には抗えん。一口もらうことにした。


 「ん、さんきゅ。」


 するとなぜか俺が食べたところをじっと見つめだす。


 「食べすぎたか?」


 「あ、いや。間接キスだなって。」


 「なぁに今更言ってんだ。家族なんだから間接キスじゃねえだろ。」


 「まあ…そうか。」


 そう言うと翠は起き上がって顔を少し赤くしてアイスを一気に頬張った。


 「おいおい…」


 うわー…ありゃ冷たそー…。

 後から頭がキーンってなるやつだ…。


 「…………っっっ!」


 案の定、直後に頭を抱えてジタバタし始めた。

 つか寝っ転がってたら眠くなってきたな…。

 目あけてるのキツくなってきた。

 時間は…8時半か…。9時ぐらいまでちょっと寝よ…。


 ——————


 「…んぐ……」


 しばらく寝ていたようだが目が覚めた。

 しかし頭に感じる感触がソファのクッションと違う。


 ほんのりあったかくて…心地良い柔らかさで…一生ここで寝ていたいと思えるほどに気持ちいい。それに時折頭を撫でる手が…これまた気持ちいい……ん…?……手…?


 開きかけていた目をパチっと開き、自分がどこにいるのか知った。


 上から俺を覗く柔らかな眼差し。

 下を向いてるので少し垂れる綺麗な銀髪が顔に当たって少しくすぐったい。

 そして…下から見るからこそはっきり分かってしまう二つの山の存在が強調されている。


 「お目覚めですか?」


 穏やかな笑顔で寝起きの俺を一気に包み込んだ八雲。あまりの可愛さにドキドキして恥ずかしくなったので起きあがろうとすると…


 「あ、だめですよ。」


 体を起こそうとした直後、近かった顔がぐいっと更に近づき、八雲の顔が目と鼻の先になる。

 顔が一気にあつくなるのを感じつつも大人しく従うことにした。


 「ふふっ。良い子です。」


 またも髪を撫でてくる。

 恥ずかしいのに…抗えない…。


 「ど、どうして俺は膝枕されてるの…?」


 苦し紛れにそう言うと八雲はぽかんとした顔をした。まるで何を言ってるんだ?みたいな顔で。


 「どうしてって、みなとくんがお疲れのようでしたから。日頃のお礼です!」


 「いやいや…最近は俺のがお世話になってるよ…。昨日も今日もさ。」


 「良いんです。湊くんにはいつも助けられてばかりですから。遠慮なさらずに甘えて下さいな。」


 八雲の体から感じる人肌さえもそう言ってるかのように訴えてくる。

 

 「…ありがとう。」


 素直に伝えると頭を撫でる手のスピードが増し、わしゃわしゃと思いきり撫でられた。

 

 「…ですけど湊くん…。」


 「ん?」


 撫でる手を止めて急に俺の顔をじいっと見てくる八雲。視線がチラチラと泳ぎ、言おうかどうか迷ってる、と言った感じだ。

 顔を赤くさせ口をぱくぱくとしている。


 「…その…変なこと聞きますけど…ええっと…私と…マツリさん…どっちが綺麗ですか…。」


 「…さっきの聞いてたのか…。」


 何かと思えばさっき翠に言われた事だった。

 多分自分の言った事にむっとして頬を膨らませている。そんな姿も可愛いな…。


 「ごめんなさい…めんどくさかったですよね…。」


 「んーん。」


 膝枕されている状態からかなり恥ずいが向きを変えてお腹の方を向き、ぎゅっと抱きしめる。

 八雲のお腹に顔がうずまり、柔らかさと体温がダイレクトに伝わってきた。


 「綺麗なんて話じゃない。俺は八雲が好きなんだよ。」


 「…っ!」


 トクン…トクン…トクントクントクン…


 顔は見えないが体から聞こえる心音がどんどん鼓動を早めていくのが証拠だろう。

 少しだけ悶えた八雲はしばらくして体を倒し、俺のお腹に頭を乗せた。


 「私も好きです…湊くんが。」


 「うん、ありがとう。」


 ——————


 「…ところで、それは何してるの?」


 あの後、なぜかずっと俺の髪やらお腹に顔を埋めている八雲。

 

 「…ぷはっ。何って湊くんの匂いを堪能していました。」


 「え、なにそれ。かなり恥ずかしいんだけど。」


 「むぅ、恥ずかしくなんかないですよ。こうすると湊くんを体いっぱいに感じれるのでとても幸せです。」


 「そ、そっか…。じゃあどうぞ…?」


 「はい!ありがとうございます!」


 そして再び俺の胸にダイブした八雲。

 こうすると相手をいっぱい感じれるのか…。

 いいな…。


 「良ければ今度…俺もやっても良い?」


 「…えっ?」


 分かりやすく体をビクッとさせる。

 もぞもぞと顔が上がると、真っ赤に染まっていた。


 「…もっとさせてくれるなら…良いですよ…?」


 目を細めて言う姿がなんていうか…色っぽいと言うか…大人っぽい魅力で…不意にもドキっとしてしまった。


 「ご遠慮なさらず…ご堪能ください。」


 俺もやられるのは嫌じゃないのでそう伝えると八雲の顔がぱあっと輝いた。


 「…それじゃあ…遠慮なく。」


 この後、しばらく猫吸いならぬ''湊吸い''を堪能した八雲だった。


 


 


 

 


 ☆☆あとがき☆☆

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