第41話 八雲と転校生
昨日から学校が始まり、今日からはもう通常日課へと戻る。完全に休みが終わってしまったのだ…。
今日の朝も
ガララララ
教室の扉が開き、担任の
相変わらずとこさんはその美貌で生徒から絶大な人気を誇っている。
金髪ウルフカットでスタイル抜群、メガネに黒スーツとなればもう鬼に金棒だ。
「みんな驚け!今日は転校生が来たぞ!」
水野先生が大きな声で言った。
この人は優しいおじさんという感じで同じく生徒から人気だ。
「転校生ー!?マジかよ!」
「可愛い子だと良いな!」
「どんな子だろねぇ。」
「せっかくならイケメンがいいよね!」
そう聞くことのできない''転校生''というワードにクラスは大盛り上がり。
あちらこちらでどんな人だろうと話し合っている。
確かに…転校生なんて人生初だしちょっと楽しみではあるな。
コンコン
扉からノックする音が聞こえ、騒ぎまくっていたクラスが一瞬にして静まり返る。
そう…転校生がやってきたのだ。
しかしこう考えると…ハードルが上がってかわいそうだな…。
「入っておいで、マツリちゃん!」
先生が名前を言った事で転校生が女子であることが判明。
男子たちは歓喜の雄叫びを上げた。
ガララララ…
教室の扉が開き、スッと転校生は入ってきた。
その瞬間、全員が彼女の容姿に釘付けになってしまう。
スラっとしていてスタイルの良い体型、何より教室にさしこむ朝日を受けて優しく光る甘い蜂蜜のようなブロンドの髪。ボブっていうんだっけ?短めの髪に大きな赤色のリボンがぴょこんとしている。
髪に負けず劣らず輝く青空のように澄んだ八雲と同じ碧眼。
一言で表せば金髪碧眼美少女。
転校生属性までついているのでもはや非の打ち所がない。
「ハロー!アメリカから来ました!マツリです!」
明るい声で彼女がそう言うとクラスは興奮で声が上がった。
「すげえ!アメリカ!金髪だ!」
「新美先生と姉妹みたいだな!俺らのクラス最強すぎるだろ!」
これが男子の意見。
「マツリちゃん、ちょっとかっこよくない?」
「ね!分かる。正直好きかも…。」
マツリさんは髪が短めで背が高かったのでボーイッシュな感じもして女子人気も高そうだ。
「ほんとだ…私とちょっと似てますね。」
とこさんでさえメガネをクイっとさせてのぞいている。
しかしマツリさんはクラス中が盛り上がる中スタスタと歩いて行き、ある人物の前で止まった。
なんと…八雲だったのである。
その光景にクラスは再び静寂に包まれた。
俺ですら体を前のめりにして見てしまったほどに驚いた。なんだ…?俗に言う自分が一番だと言う宣戦布告なのか…?いや、第一印象だがマツリさんはそんなタイプじゃないだろうし…。
すると…マツリさんは八雲の前で地面に片膝をついた。
さらに八雲の手を取りうっとりとした表情でこう言ったのだ。
「会いたかったです…。
「「「ええええええ!?」」」
マツリさんの言葉で静寂は破られ、またも声で溢れかえる。
「ど、どう言うことだ…!?」
「あの二人知り合いだったのか!?」
俺も頭がこんがらがって状況を理解出来ない。八雲にあんな知り合いがいたのか…?
「えっ…?いや、その…ごめんなさい、どちら様でしょうか…?」
だが八雲はかなり驚いたようであたふたとしながら言った。なんだ…知らなかったのか…いや、でもじゃあなんでマツリさんは八雲を知ってるだ?
「えへへ…」
少し照れたように顔を赤くしてマツリさんが口を開いた。
「朝にキミが歩いてるとこを見てね…あまりの美しさにもう一度会いたくなっちゃって…。つい入学しちゃった。」
てへぺろ☆感覚でさらりと言うが…ちょっと待て…つい入学しちゃった…!?
「「「「えええええええ!?」」」」」
やはり全員同じ事を思っていた。
——————
なるほど、マツリさんの親はアメリカの大財閥でつい入学しちゃったを実現出来るらしい。
大騒ぎになってそれこそお祭りのようになっているクラスだが、背が高くボーイッシュなマツリさんと可憐で可愛い八雲を王子とお姫様になぞえる人が続出している。
一目惚れして八雲に会うために入学したエピソードがそれに拍車をかけた。
理想的だの憧れるだのなんだの言う中、誰かが「
すると少しずつそれは広まっていき、ついには俺の耳に届いてしまった。
——————
(はあ…自分でも釣り合えてないとは思ってたけどさ…やっぱり他のやつらにもそう思われてたのか…)
あれこれ考えてるとどんどん気持ちが沈んでいく。
同時にマツリさんと並んで立つ八雲が遠い存在のように見えてくる。
いや…実際そうだったのか…。今もチラチラと俺の方を見てくれてるけどまともに視線を合わせられる気がしなかった。
——————
「失礼ですが湊くんが釣り合えてないことなんてないです。」
突然、八雲が語気強めにクラスに向けて言った。驚きのあまり俺は伏せていた顔を上げ、彼女の方を見る。
なんと…彼女の表情は俺が今まで見たことない…怒った顔だったのだ。
「むしろ私の方がお世話になってばかりです。今までは他人にあれこれと決められてきた人生でしたが…湊くんだけは私が自分で好きになった大切な人です。」
呆気にとられてしまったクラスメイトたち。
普段は肯定しかしない我らが女神様が初めて自分たちに反対意見を言ったのだ。
しかしマツリさんだけは別でにこりと微笑み、俺の元にやってくる。
先ほど八雲にやったのと同じように俺の前で片膝をついた。
「ボクの推しの想い人…。きっとあなたも
と輝く碧眼でウインクをする。
俺は八雲とマツリさんの言葉に救われてしまった。クラスのみんなが言おうと八雲がああ言ってくれるなら俺には十分すぎるぐらい幸せな言葉なのだ。
——————
「マジでごめん!!」
あの後、クラスのみんなが一斉に俺の元へ集まり謝ってきた。
「いやいや、もう良いよ。実際その通りなんだし。」
「こら、湊くん?」
めっ、と言うかのように隣にいた八雲から怒られてしまった。
こんな時にこんな事を思うのはダメかもしれないが…怒る八雲も可愛い。
「ごめんよ。もう言わない。」
「はい!偉いです。」
みんなの前で頭を撫でてくる。これは…恥ずかしいからやめて欲しいけど…八雲の手が触れるたびに心が落ち着くから…そのままにしておこう。
じぃ〜…パシャパシャ…
クラスのみんながにんまりとしながら俺たちのやりとりを見てくる。
「うんうん…この前湊なら安心って言ったしな…。」
「だねぇ…。はっきり言って推せるよね。」
「ああ…本当にすまねえな湊。」
「だから良いって。つかパシャパシャってなんの音?」
そのまま流してたがなにやらカメラのシャッター音が鳴り響いている。しかも連写で。事故ってるわけじゃなくて多分、意図的に。
一同は一斉に音の出所を探るために後ろを振り返る。
「ハァハァ……
さっきの王子様のような雰囲気など微塵もなくなったマツリさんの姿があった。表情は緩みまくり、にまぁとしながら息を荒くさせて俺たちの写真を撮っている。
え…この人ってこう言う…
「…マツリさんって
「だね…。」
クラスでオタクとして有名な二人が口を揃えて言う。そしてマツリさんを同族として迎え入れようとした目で見た。
かっこいい印象はなくなってしまったが俺はこの人に助けてもらった。
本当に…王子様だったのかもしれないな。
帰ったら…八雲にお礼しよう。
明日学校に行ったらマツリさんにも。
☆☆あとがき☆☆
本日もありがとうございました!
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