第40話 学校が…始まる
「はああああ……」
朝起きて準備をしながら大きなため息をつく。
なぜなら今日から…学校です…。
「どうしたんですか?そんなに大きなため息をして。」
制服に着替え終わり、ソファにバタリと座り込んでいると
「ちょ、ちょちょ!ズボン脱ぎながら話しかけてこないでよ!」
着替えの途中で今しがたズボンを脱ごうとしている最中だったのだ。
少しだけチラつく彼女の太ももが魅惑的に俺を誘惑する。
いや…だめだ…耐えろ俺…!
「え?
「みっ…見られても良いって…!お、俺がまだ心の準備が出来てないから!その…お部屋で着替えてもらえると…助かります…。」
どこを見ても良いか分からず、視線をうろちょろと移しつつ小さな声で言った。
すると八雲は俺の言葉を素直に聞いてくれてパジャマのズボンを履き直す。
「す、すみません!私、自分のことしか考えてなくて!」
「あ…いや、俺が情けないのが悪いから…。八雲は悪くないよ。」
「情けないなんてことありませんのに…。それじゃあ私、着替えてきますね。」
俺の言ったことが腑に落ちないと言いたげに小さな声でぼそりと言っていたが時間も時間なので着替えに行った。
そう…実際その通りで八雲は俺に心を許してやってくれているのに変に恥ずかしがってちゃんと向き合えてない。…羞恥心がないというのは否めないが俺だけだと思いたい。
これからは今まで以上に八雲にしっかりと向き合っていかないとな。学校も始まるし。
ガチャ
「お待たせしました。」
部屋の扉が開き、着替え終わった八雲が出てきた。
久々の制服姿…。
純白のシャツに銀髪があわさりまさに輝いて見える。
スラっとした体型もモデルのようでとても綺麗だ。スカートから伸びる脚、さっきズボンを脱ぐ際に見てしまったためか少しドキッとする。
今までは思ったことなかったけど…この姿を学校のやつらに見られると思うと…なんかこう、もやっとするところがあるな…。
「湊くん?」
色々と考えていたらだんまりしてしまっていたらしく、八雲が顔をのぞいてきた。
青く澄んだぱっちりとした碧眼が俺の心をものぞいくるような感じがする。
「なっなんでもないよ!いやその…久しぶりに制服見たけど…可愛いなって…。」
「っ!ありがとう…ございます。」
顔をピンクに染めてもじもじとする八雲。
相変わらず俺からの押しは弱いままだ。
「お兄ちゃんたち…イチャイチャしすぎて遅刻しないようにね。」
学校に行く支度を終わらせ、部屋から出てきた
「わ、分かってるよ!」
「す、翠ちゃんも…お気をつけて…」
「はーい!じゃあ行ってくるねー。」
紺色のサイドテールをふりふりとさせて翠は玄関の扉を開けて出て行った。
二人になったことで微妙な沈黙が流れた。
「俺たちも行こうか!」
「は、はい!そうですね!」
休みが終わり、また前と同じように二人で学校に行くことに。
変わったところは…俺たちの関係か。
これでもう時間ずらしたり隠れたりしないで済むのはちょっとありがたいよな。
——————
始業式は昔のように体育館に集まったりはせず、放送で行うのであっという間に終わった。
本当に特に変わったことはない。
いつも通り校長先生の話は長いし、めんどくさいけど至って普通。
そして相変わらず八雲の周りには男女問わず人だかりができていた。これも普通。見慣れた光景だ。
そう…見慣れた光景だ…見慣れた……
「おい、どうしたんだ?そんなムスッとした顔して。」
休憩時間中に俺の席に来た
そんなことよりも…今こいつ俺がムスッとした顔してるって言ったか?
「いやいや、ムスッとした顔なんかしてねえし。」
とりあえず否定する。
「いやいやいや、ムスッとした顔してたね。俺は見逃さんぞ。明らかにお前は八雲さんの方を見てムスッとした顔をしてた。」
言われて自分の視線の先にいる人物を見る。
驚き、八雲だ。
今も女子や男子から冬休み中どこに行った、だとか何をした、と質問攻めにあっているのを華麗に笑顔で捌いているところである。
現代の聖徳太子みたいだな。
「…八雲を見てたのは認めるよ。でも俺はムスッとした顔はしてないね。」
「ふ〜ん…
にやぁっとして俺の視界に入ってくる。
しまった…最近はこっちが定着してたから…
「おいおい、俺がからかうわけないだろ?」
俺の顔が明らかに''うわ…またからかわれる''と発しているのに気づいたのか紫央はにやけた顔をやめて言う。
「…からかわないのかよ。」
「ったりめえだろ。親友がようやく良い人と巡り会えたんだ。俺も嬉しいよ。」
バンバンと肩を叩いてくる。
こいつは…普段はチャラいが俺が落ち込んでる時とかにはすぐ気づいて励ましてくれる。良い友達だ…。
「ありがとう。でもムスッとした顔については違うからな!」
「はいはい。でもそれに気づいてるのは俺だけじゃないかもだぜ?」
再びニヤっとして言ってくる。
なんのことだよ…。
——————
学校は午前中で終わり、11時半にはもう既に家にいた。帰り道、八雲がチラチラとこっちを見てきてたが何かあったのだろうか?
「その…湊くん?」
「ん?」
なぜか慎重げに聞いてくる。
「今日は、どうかしたのですか?」
「今日?」
「なんだか今日の湊くん、ムスッとした顔をしてたので…」
「ええ?」
ちょうどさっき紫央に言われた事をそのまま言われた。そんなに分かりやすくムスッとしてたのか…俺。
しかし紫央には言わなかったが本当は理由がある。まあ…多分あいつも分かってて言ってきてるんだろうけど…なんか言うのが恥ずかったし。
「えーっと…」
「…はい!」
すごく真剣な顔をして俺の話を聞く八雲。
なんか…改まって言うのも恥ずかしいなこれ…
「たださ…八雲がみんなから可愛いだとか言われるのがちょっと…あと制服姿も可愛いから…その…なんというか…ちょっとモヤっとしただけ…!でもこれは俺の性格が悪いからであって八雲に非はないか………」
顔が熱くなるのを感じながらも視線を逸らして言っているとさっきまで緊張でこわばっていた八雲の顔がみるみると緩んでいった。
「良かったあ……私…何かしてしまったのかなって思ってたんです……。」
「八雲に悪いとこがあるわけないじゃん!悪いのは俺だっ………むぐ…!」
言ってる最中に突然手で口を塞がれてしまった。そしてずいっと八雲の顔が近くにくる。
「湊くん、湊くんは何も悪くなんかありません。性格だってぜーんぜん悪くないです。」
「れ、れもこんなことれ…。」
上手くしゃべれないのでモゴモゴさせながら言う。ただでさえ顔が近いからドキドキしてるのに…なんだよこのプレイ…。
「違いますよ。湊くんは可愛いです。とーっても。」
「か、かわいい?」
「はい、可愛いです。」
にこりと笑い、口の手をどけて今度は俺を抱きしめた。顔が胸にうもれて…顔がかあっと赤くなる。
「心配しなくても私は湊くんのものです。どこにもいったりしないしずっとそばにいます。」
「………」
「それにね、学校のみんなから言われるのも勿論悪い気はしませんけど湊くんから言われるのが一番嬉しいんですよ…!だからこれからも言って下さい、いーっぱい可愛いって!」
「………!」
見上げると優しく微笑んでいた八雲の顔が見えた。
この顔を見たら…なんか俺が悩んでた事がバカバカしくなるぐらい全て吹っ飛んでった。
そうだよ…心配なんかしなくても良かったんだ。
「…八雲。」
「なんでしょうか?」
すごく優しい、まるで天使様のような声で答えてくれる。
「もう少しこのままでいても良いかな…。」
「もちろんですよ。湊くんが満足するまでずっとこうしててあげます。」
「…ありがとう。」
ぎゅっと八雲を抱きしめた。
☆☆あとがき☆☆
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