第39話 みんなで映画鑑賞!
「ええー!!
ファミレスに来た
しかし翠から湊と
「ちょ、声でけえよ!」
「ご、ごめん。」
翠が周りを見渡して慌てて注意した。幸いファミレスは活気に溢れていたので誰も気にしてない様子。
桜はテーブルに突っ伏して分かりやすくしょげた。
「はぁぁ…そっかぁ…まぁでもそうだよねぇ…おにいちゃんにとって桜たちは妹のようなもんだし…」
「まあねぇ…昔からずっと一緒だったしね。」
「そう考えれば割り切れるけどぉ…でもやっぱりつらいなぁ…失恋かあ…」
「ねぇ…」
「「はぁ…」」
二人で大きくため息をつき、ジュースをジューっと飲み干した。
しばらく死んだような顔をしていた二人だが突然翠がガバッと顔を上げる。
「妹だよ!」
「へ?」
ふっふーん、と得意げに笑って見せる。
「私は義妹、桜は昔からの付き合いでほぼ妹!でもね、八雲おねえちゃんはそうはいかないでしょ?」
「…??どゆこと?」
頭の上にはてなを浮かべ、首を傾げる桜。
「だ、か、ら!お兄ちゃんの妹ポジにいれるのは私たち二人だけってこと!考えてみれば特権じゃない?だってお兄ちゃんって付き合った訳だけど私たちならずっと側にいれるし。」
「た…たた、確かにぃ…!」
意味が分かり顔を輝かせた。
「とゆうわけで冬休みも残り2日だし今日は家に泊まってけよ!」
「いいの?」
「お兄ちゃんもおねえちゃんも気にしないって。それに普通に桜と遊びたいし。」
「翠ちゃん…!」
そうと決まれば翠は速攻でポケットからスマホを出して湊に連絡をした。
『お兄ちゃん、今日桜家に泊まりにくる。』
——————
ピロン
着信があり、一度ゲームを止めてソファ脇に置いてあるスマホを取ろうとするも…
「んー…」
「あ、ごめんなさい!私取ります。」
猫のように膝にすっぽりと八雲が座っていたので腕が伸びない。
それに気づいたのか俺の代わりにスマホを取ってくれた。
「ありがと。」
「いえいえ。」
八雲はまるで湯たんぽのようにあったかく、人生で一番心地良くゲームしたかもしれないと感じるほどに快適だった。ゲーム中はコントローラーを持つから抱きしめるようにやれるのも利点だ。
なによりすごく可愛い。
それはともかく。
メッセージアプリを開き、確認してみると翠からで桜ちゃんが家に泊まるという内容だった。
「今日桜ちゃんが泊まりに来るって。大丈夫?」
「もちろんですよ。お泊まり、楽しそうですね!」
「だな。じゃあ良いよって返しとく。」
ちょいちょいっと返信し、再びゲームに戻る。
—————
「ただいまぁ。」
「お邪魔しまぁす。」
あれから二時間ほど経ち、翠たちが帰ってきた。時刻は5時頃。丁度夕方だ。
リビングの扉が開き二人が入ってくる。
「あ、おかえり。」
「おかえりなさい、二人とも。」
未だ八雲を膝の中に入れてゲームをしていたのでその光景を見て二人に一瞬ガン見された。
しまったなあ…気づかなかった。
「もお〜お兄ちゃんたちイチャイチャしすぎ。」
翠が茶化して笑ってくる。
「す、すまん!俺、ご飯の準備するよ!」
「私お手伝いします。お二人は待ってて下さいね。」
「「はーい!」」
そう言って半ば逃げる形でキッチンへと向かった。
あれ…考えてみればこれくらいのことなら付き合う前からやってなかったか?八雲から一方的にだけど。
そう思いつつも今日の献立を考える。
うーん…大人数、お泊まり、ときたら安定のカレーか。幸い材料はあるし。
「今日カレーにしようと思うけど桜ちゃん、良い?」
キッチンから聞くと元気な声が返ってきた。
「やったあ!湊おにいちゃんのカレー大好き!」
「おっけー。んじゃ待っててね。」
桜ちゃんは昔から翠とは違って好き嫌いなくどんなものでも美味しく食べてくれるから嬉しい。料理を教えてあげて時も一生懸命だったしとても良い子だ。
「湊くん、ご飯研ぎ終わりましたので炊飯器セットしておきますね。」
「お、ありがとう。じゃあ野菜出しといてくれる?」
「分かりました!」
——翠視点——
キッチンで二人の息のあった料理姿をじっと見ながら隣に座っていた桜が口を開いた。
「なんか…」
「''夫婦みたい''でしょ?」
なんて言おうとしていたかは手にとるように分かる。なんせ私も思ってたから。
「すごぉい…よく分かったね。」
「まあね。あの二人、前から夫婦みたいな距離感だったけど付き合ってからはそれに箔がかかったって感じ。」
「ねぇ…。んでさ!今日は何するの?」
桜が楽しそうに微笑んで聞いてくる。
これはもう決めていたので即決だ。
「ふっふ〜ん。これですっ!」
スマホの画面を桜に見せた。
「これって……」
——————
一時間ぐらいでカレーは出来上がり、みんなで食べた。
みんな美味しいと言ってくれたが桜ちゃんからは絶賛の嵐で久々にこんなに褒めてもらったので照れてしまった。
食べ終わり、休憩にみんなでゲームをして遊び、俺と八雲で片付けをしてる間で二人に風呂に入ってもらう。
そんなこんなでもう夜の8時になっていた。
「ふ〜…。お兄ちゃん、おねえちゃん、お風呂空いたよ〜。」
「おう。八雲、先入ってきて良いよ。」
「はーい!あ、一緒に入りますか?」
さらりと聞いてくる八雲。
その言葉に二人の視線は一気に俺へと注がれた。
こ、この人はこう言う事をすぐに…。
「きょ、今日は…一人で入ろう!ふ、二人もいるし!」
「ふふっ。それじゃあお先いただきますね。」
少し微笑み、風呂場へと向かう八雲。
((''今日は''なんだ……))
湊が慌てふためいている時、翠と桜は密かに思った。
「ふー…この後は俺たち部屋にいようか?二人で遊びたいだろ?」
三人でソファに座り、だらだらとテレビを見る。
「実はお兄ちゃんこれ見て……」
「ん?」
なにやら二人がにやぁっとしながらスマホの画面を見してくるのでなんだと思い見てみる。
「こ、これは……!」
——————
俺も風呂に入り、全員が揃った。
翠と桜ちゃんは部屋のカーテンを全部閉めて電気も消し、雰囲気作りにいそしんでいた。
「お二人とも今日はもうおやすみになるのですか?」
そんな様子を見て疑問に思ったのか八雲が聞く。
「ふっふっふ…おねえちゃん、これを見て。」
翠がテレビのリモコンを操作して画面を付ける。
暗闇の中テレビに映し出されたのは一つの映画の画面。そう、ホラー映画だ。
「これは…」
「ホラー映画だよ八雲おねえちゃん!一緒に見よ!」
桜ちゃんもノリノリで答えた。
なるほど…八雲とみんなでこれを見たかったワケだな。
「ホラー…映画ですか…見た事ないですし気になりますね。」
「大丈夫?これ結構怖いって評判のやつだけど。」
一応心配になり、注意をしておく。
「二言はありません!さ、見ましょ!」
興味が湧いたのか顔をキラキラとさせてソファに座り、待機し始める。
まあ、本人が言うんならいっか…。
「いいねおねえちゃん!じゃあ流すよ!」
こうしてホラー映画が開始した。
ちなみに赤い風船を持ったピエロのやつである。
——開始10分…——
「きゃっ…!!」
「わぁぁっ…!?」
「ひぇっ…!!」
排水溝から例のピエロが出てきた途端に三人とも違った悲鳴をあげて驚いてる。
八雲に至ってはすでに俺の手を握りしめ、抱きついてる。
翠と桜ちゃんもクッションで顔を隠しつつも画面をビクビクしながら見ていた。
うーん…先が思いやられる…。
——開始一時間…——
「きゃぁぁっ…!!!」
「ひゃああああ!!」
「わ、わあああ!!?」
ここまで何度も悲鳴をあげている三人だが洗面から髪の毛のようなものが掴んでくる時に一層叫び声をあげた。
ぶるぶると怖がりながらも画面を見る八雲の姿…。普段とはまた違った可愛さがありとても新鮮だ。
俺は平気なのでホラー映画…また見ても良いかもしれない。
——開始二時間…——
「良かったあ……。」
「す、翠ちゃあん…」
「こ、こええ…」
なんとか三人とも無事に見終わり、エンドロールが流れ始める。
言い出しっぺの翠と桜ちゃんは凄まじく怖がっているようだ。
そういやこの二人、昔から怖いもの苦手なの忘れてないか?
「おつかれ、三人ともよく見たな。」
「…湊くんは怖くなかったのですか…?」
「ん、俺?まあ怖いとこはあったけどそれ以上に怖がってる八雲が可愛かったから。」
「かっ…可愛いって…!」
ぶるぶると震えていた八雲の顔がほんのりピンクに染まる。
「くそぅ…お兄ちゃんは大丈夫な人だったか…」
「桜たちのがビビってどうするんだよぉ…翠ちゃん。」
ガチャン……
話していると突然、玄関の扉の鍵が開く音がした。
「だ、誰だ…?こんな時間に。」
時刻はすでに日付を回って12時半。
こんな遅くに来る事なんてまずないのに。
「え、えっとお…鍵を渡してるのは誰でしたっけ…?」
恐る恐る俺の顔を見て言う八雲。
雰囲気もあり、俺すら少し怖くなってきた。
「お、親と…とこさんと…八雲、翠だけ…。でも親もとこさんも来る時連絡入れるし…」
ギィギィ……
すると中に入ってきたようで床の軋む音がして段々と誰かがこっちに近づいてくる。
「ちょ、ちょ……!マジでやばくない…!?」
「こ、こわいよぉ……!」
ホラー映画効果で軽くパニックになっている翠と桜ちゃんは俺の腕にしがみつき、顔を埋める。八雲も怖くなったのか俺の体にくっついてきた。
いやいや…これは俺も怖いってぇ………!
ギィギィ…ガチャン……!
ついに謎の誰かがリビングの扉に触れ、ゆっくりと開けてきた。
「っっっっっっっ…!!」
「ひぃぃぃぃぃ…!!」
三人は声にすらならない声をあげて俺にしがみついて離れない。
肝心の俺もどうすることも出来ずに立ち尽くす。ヤバいヤバい…どうしよう…!
テレビの光に照らされ、人影が見える。
「だ、誰ですか…?」
思わず声が震えてしまうもその謎の人に問いかけた。
すると……
「あれ…?湊様?まだ起きてらしたのですか…?」
返ってきたのは聞き覚えのある声。
よぉく顔を見てみるとその正体はとこさんだった。
「と、とこさん…!?なんでこんな遅くに…?」
「お仕事が忙しくて…お嬢様のお顔だけでも、と思ってこっそり寄ってみたのです。」
「ああ…なるほど…。あ、三人とも、大丈夫だったよ。とこさんだった……」
正体がとこさんだと分かればもう怖くない。
俺の腕にしがみつく三人に呼びかけてみるも…怖さのあまり寝てしまっているみたいだ。
俺は事の顛末をとこさんに教えてベッドに運ぶのを手伝ってもらった。
「なるほど…そんな事があったのですね…ごめんなさい、お邪魔してしまって…。」
「いえいえ、とこさんは悪くありませんよ。お仕事お疲れ様です。」
「ありがとうございます…湊様。」
三人を一緒に寝かせるには俺のベッドが一番大きかったのでそこに寝かせることに。
俺はソファで寝ようかなと思っていると…
「湊くん…」
どうやら起きてしまった八雲に呼び止められた。
「どうした?」
「その…怖くて…一緒に寝てくれませんか…?」
「…お兄ちゃん、私も…。」
「桜もぉ…」
みんな起きたらしく、全員が俺を呼び止める。
さっきのビビりようからしてこの三人は本格的な怖がり…うーん……。
「…分かった。」
そう言うと三人に引っ張られてベッドに引きずり込まれた。
「ふふ…。施錠は私がしますので皆様、ぐっすりとおやすみ下さい。」
とこさんも行ってしまい、俺は三人と一緒に寝ることになった。
八雲が俺の横で体を抱きしめ、桜ちゃんが反対側で俺を抱きしめて、翠が桜ちゃんを抱きしめて寝る…。
大きいとはいえ流石に四人は狭いと思ったが安心したのかみんなすぐ眠りに入った。
「おやすみ。」
そっと呟いて俺も寝ることにした。
でもホラー映画は…しばらくは良いかな…。
☆☆あとがき☆☆
遅くなりました!そして長くなってしまいました!
今回の話を書くために昔観た某''それ''の映画見返したのですが歳を重ねたせいかあまり怖く感じなかった…。
それはそうと…本日もありがとうございました!
良ければ小説のフォローや☆評価ぜひ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます