第36話 八雲と両思い
「ありがとうございました〜。」
お互い少し気まずくなって口数が減り、いつの間にか行きつけのスーパーでの買い物を終えていた。
エコバッグの中で買った物がガサゴソと鳴る音だけが聞こえる。
「………」
「………」
この
八雲さんが話してくれるのを待ってどうする…。俺から話さないとダメだろ…!
そういえばさっきの事も気になるし…。
「あ、あの…!」
「は…はい!」
第一声、つっかえた。
ただ八雲さんも俺の言葉にすぐ反応してくれたあたり待っててくれたのだろうか。
「その…さっきの母さんに教えて欲しいってのは…?」
「そっ…それは……」
途端に街灯に照らされた八雲さんの顔が赤く染まる。
視線が俺と地面を行き来して定まらない。
しかし意を決したようで口を開いた。
「
「へ?」
意外な言葉にマヌケな声が出てしまった。
八雲さんが俺を意識させる……?
「…湊くんも知っての通り私の家族はあんな感じで学校のみなさんも優しくしてくれましたけどそれも外見だけを見てですしね。」
「……。」
悲しそうに微笑むのを見て俺は胸が悲しくなる。それと同時に俺が言わなきゃダメな言葉が口から出かけている。
「初めてなんです。私の全部を見て私を知ってくれたのは…湊くんが…。」
「八雲さん…。」
「私がどれだけ湊くんの邪魔になっているかは分かっています…だけど…それでも私は……」
トスン
言葉を言い終える前に俺は八雲さんを抱き寄せて自分の胸に近づけた。
袋を持っていない左手でぎこちなく体に手を回して。
「邪魔なんかじゃない…。」
「…湊…くん?」
突然の事に驚いたようで上目遣いをして俺の顔を覗く。
「邪魔なんかじゃないよ…俺が一緒にいる。」
緊張のしすぎで言葉に詰まり上手く言う事が出来なかった。
「俺…今まで八雲さんが俺なんかって思ってずっと気持ちに気づけずにいた…ごめん…。」
「良いんです…そんなこと…!」
「けどちゃんと向き合ってみて分かったんだ。俺、八雲さんの事が好きだ。」
「…!」
腕の中にいる八雲さんが俺を見つめる。
すると俺の手に何かが触れた。
ガサリ
「まだまだ何も出来ない私ですが…良いんですか…?」
エコバッグを半分持ってくれたようだ。
一人で持つと重かったものも二人で持つとうんと軽くなった。
俺はバッグを持ち上げて見せた。
「二人で一緒にやっていけば良いんだよ。これからたくさん。」
「………!」
八雲さんの目に涙が溢れ、バッグを持ってない右手が俺の体に回された。
「私も…みなとくんが…!好きです…!大好きです…!」
月明かりと街灯が八雲さんの綺麗な銀髪、涙、全てを輝かせて俺を照らした。
好きだな…改めて再確認する。
「…うん。」
「みなとくんが…私の事を好きになってくれるなんて…思ってもなかった…!夢みたいです…!」
「…うん。」
「私…なんかで良いんですか…?」
その言葉を聞き、俺は少しだけ笑ってしまった。これじゃあ俺たちお互い様だな…。
「俺こそ…俺なんかだよ。二人でさ、お互い自信持てるように頑張ろう。」
「はい…!湊くん…!」
「これからも…よろしくな…、八雲さん。」
体に回していた腕を解いて俺たちは歩き出した。真ん中には二人で荷物を持っている。
「好きです。湊くん。」
「好きだよ。八雲さん。」
俺たちの進む道は厳しいものかもしれない。
八雲さんの家族のこと、周りのこと。
だけど俺は決めたんだ。八雲さんを一人にしないって。
彼女の笑顔を守るためにも俺は…彼女に釣り合えるよう努力しないと…!
「…湊くん…。」
「ん?」
少し顔を赤らめ、もじもじしながら話しかけてきた。
こんなに可愛いの権化である八雲さんが俺のこと好きだなんて…信じられないけど…分かってると更に輝いて見える…。
「その…一つだけお願いがあるのですけど…。」
「お願い?」
「えっとぉ…うう…やっぱり恥ずかしい…。」
「俺ができることなら頑張るよ。」
そう言うと八雲さんはうーん…と唸りながら悩みだした。
うん…可愛いな。困ってるとこすらずっと見てられる…。
「よし…。」
覚悟が決まったようで俺の方を見た。
…どんなお願いなのだろうか…。
「''八雲''って…呼んでくれませんか…?」
俺に見せた顔…眉を少しだけ下げ、服の裾を掴んできたお願いの表情…!あー、やばい…。これから俺、なんでも言う事聞いちゃうかもしれない…。
「わ…分かった…。えーっと…じゃあ…や、や……」
期待の眼差しを向けてじいっと見てくる。
いざ言うとなると…恥ずい…!
「や…八雲…。」
ぱああっと顔がきらめいて今まで見た中でもトップクラスの幸せそうな笑顔を見せてくれた。
この夜に輝く月と遜色ないぐらい俺にはその顔が綺麗に思える。
やばい…俺の顔、大丈夫かな…。ニヤニヤしてないかな…。
「っっっ…!ありがとうございます…!湊くん!大好きです!」
この時間が人生で一番幸せに感じた。
☆☆あとがき☆☆
ついに二人も心が通じ合えるところまできました…!ここまで本当にありがとうございます…!
これからもがんばりますのでよろしくお願いします!
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