第31話 八雲さんと大晦日!
昨日掃除をしたので今日はゆっくりしようと言う事で、三人でだらだらとテレビを見ている。
格好もラフな家着でまさに休日って感じだ。
「いやあ…もう今年も終わりかあ。なんか早えな。」
「確かにそうですねぇ…。特に最近はあっという間でしたし。」
「だねー。ここ一ヶ月はおねえちゃんが来てから一瞬だった。」
そういやもう
ピンポーン
「お客様でしょうか?」
「今日は
思い出し、ソファで寝転がっていた
コイツは…本当にだらけるプロだな…。
「ん、そうだった。でもお昼ぐらいからって言ってたよ?」
「まあ良いや。とりあえず俺出てくるわ。」
起き上がり玄関へと向かう。
ガチャリ
「はーい、どなたで……っておお、マイか。」
「うぃーす先輩。後輩兼いとこの
「おう、わざわざありがとな。」
マイはジャージ風のジャケットに白のラインが入った黒色のスパッツを履いている。
服装にさほど興味がないマイらしい格好だ。
しかし手にでっけえ袋を持ってる。
「ってどしたんだそのでけえ袋。」
聞くとマイは少しピクッとして俺の耳元で小さな声で言った。
「えっと…これはこの前追試の時に先輩と話したじゃないっすか?そん時たまたまだったとは言えあんなことがあったんじゃあひどいこと言っちゃったなって…。」
少し俯きながらマイが袋を差し出す。
その時って八雲さんがいなくなった時か…。
「気にすんなよ。八雲さんも戻って来たわけだし。それに俺は感謝してるんだぞ?」
「…へ?感謝、すか?」
「そうだよ。マイがああやって言ってくれたおかげで俺、ちゃんと八雲さんと向き合えてる気がするんだ。だからありがとな。今度言おうと思ってたとこだったんだ。」
「そ、そうだったんすね…。なら良かったっすよぉ…。私のせいで先輩が悩み続けてたらどうしようかと思ってたところっす。これお詫びとしてどうぞ。んじゃあ私は行きますっすね。」
袋を俺の手に握らせ、扉の方を向いた。
思えば…マイにはいつもお世話になってるよな…。
「マイ、良かったら家で遊んでかないか?この後桜ちゃんも来るからさ。予定が無ければだけど。」
するとマイは俺の方に向き直り、笑顔で答えた。
「はいっす!楽しそうっすね。」
俺とマイは二人でリビングまで歩く。
そういや…この袋なんなんだろ。
「マイ、これって?」
「ああ、それすか?まあ、後でのお楽しみということで。」
ニヤリとして俺を見てくる。
なんだよこれ…。
——マイ視点——
「じゃあ俺、お茶とお菓子でも持ってくるわ。」
「あ、私もちょっと部屋行ってくる。」
バタン
ちょ…ちょちょ…。
「初めまして、
「よ、よろしくお願いします…っす。」
いきなり二人かよーーーーーーっ!
マズイ…この前クソだのなんだの言っちゃった手前、白華先輩と話すの気まずすぎる…。
と、とりあえずカバン置いて…落ち着こう…。
「あ、そのキーホルダーって…。」
白華先輩が私のカバンのキーホルダーを指さす。
「え、知ってるんすか?手術廻戦。」
「もちろん!すごく面白いですよね!」
…驚いた。こんな上流の人が漫画知ってるんだ…。あ、いやこの人そういえばこっち系な感じしてたしなあ…先輩の話聞いた感じで。
「私、あのダークな雰囲気が好きなんですよ!設定とかも凝っててすごいですよね!」
「分かるっす!予想外の展開がバンバン来るから目が離せないって言うか。あと似た漫画で……」
「ワンダーワンダーだよね!」
白華先輩が身を乗り出して答えた。
すげえ…まさかここまでわかるなんて…。
「そうっす!私、ワンダーワンダーめっちゃ好きなんすよ!」
「分かります!話に無駄がないですよね!それに登場キャラが一人一人すっごく立ってて魅力的で!」
「そう!そうなんす!先輩すごいっすね!私はあのキャラが……。」
ハッ…思わずメチャクチャ楽しんでしまった…!でも白華先輩…すごく話しやすいな…。
一度呼吸を整えて向き直す。
「マイちゃんは湊くんのいとこなんでしたっけ?しっかりした子だと言っていましたよ。」
「え?先輩がそんな事言ってたんすか?」
先輩も素直じゃねえなあ、コノヤロ。
「そうですよ、困った時に頼りになるとこの前。」
「あー…先輩はお人好しすぎて悪い人に騙されないかいつもハラハラしてるっすよ。あの人結構思い切った事すっから…。」
あ…しまった。これじゃあ私が白華先輩の事を言ってるような言い方をしてしまった…。
「ってあはは…。私ってば何目線で言ってんだか…。」
「すごい…マイちゃんはそんなところまで分かるんですね…。私ももっと見習わなきゃいけません…。湊くんもマイちゃんはすごくしっかりしていて頼りにしていると言っていましたよ。これからもよろしくお願いします、マイちゃん!」
白華先輩が天使のような微笑みで私に言う。
私は白華先輩の言葉を聞いて正直驚いてしまった。
どんだけ良い人なんだろうこの人は…。(チョロい)
「ってあはは…。私こそ何目線で言ってるんだか…。まだまだマイちゃんには頭が上がりませんね。考えてみれば私こそ一番怪しい出会い方をしたのでは……」
「白華先輩。」
名前を呼んだのに気付き先輩がこちらに顔を向けた。
「白華先輩こそ湊先輩と一緒にいてあげて下さいっすね!」
「マイちゃん…!ありがとうございます!」
先輩がまだいない事を確認し、私は白華先輩にこっそり手招きする。
「先輩先輩、良ければ湊先輩のあれやこれや教えてさしあげましょうかぁ…?」
「あ、あれやこれや…ですか…!?」
お、興味あるのか?ノリノリじゃないの。
「そうっす…。例えば先輩の好みとか…。」
「こっ…好みっ…!」
白華先輩の顔が赤くなった。
おんやあ…?この人かわいいじゃん…。
「そんじゃあまずさっきあげたこれを着てみてくださいっす…。サイズは気にしないでくださいっすね。」
「わ、分かりました…!」
袋を白華先輩に渡す。
くっくっく…湊先輩め…これは腰を抜かすにちがいないぜ…!
——————
「かっ………!」
お茶とお菓子をお盆に乗せてマイたちに出そうとリビングへと戻るとなぜか八雲さんが立っていた。
いや、そこは重要じゃない…。重要なのは…八雲さんの服なのだ…!!
「ど、どおです…か?湊くん…?ぶ、ぶかぶか〜ですよ…?」
手を猫のようにしてポーズをとる八雲さん。
しかし大きすぎる袖で隠れてしまっている。
いや、袖だけじゃない。全体的にぶかぶかなジップパーカーが八雲さんのスラッとした体を隠している。
「どうっすか?私からのプレゼントっすよ二人とも。」
俺は一旦持っていたお盆を机に置いてからぶっ倒れた。
「みっ、湊くん!?」
「先輩、分かるっすよぉ…?先輩は女の子が着るぶかぶかな服がめっちゃ好きだってぇ。」
倒れながらも立っていたマイに握手をするため手を差し出す。
「お前ほど…良い後輩兼…いとこは…いねえ…!」
「任せてくださいっすよ…!先輩…!」
ガシッと握手を交わしそのまま起き上がらせてもらった。
「八雲さん。」
「は…はい…!」
真剣な眼差しで八雲さんを見る。
彼女は顔を真っ赤に火照らせていた。
ぶかぶかな黒と白のジップパーカーとフードの中から見える綺麗に輝く銀髪が相乗効果を生み、奇跡的なハーモニーを奏でている。
「めちゃくちゃ…か、可愛い…よ。」
「そ、そうですか…なら良かった…です…!」
言うのが少し恥ずかしくかったが本当に…今年最後に良いものが見れた…。マイには感謝しきれないな…。
「先輩先輩、これ。」
「ん?」
袋の中からもう一着パーカーを出したマイ。
「実はこれ、ペアルックにしてるんすよ〜。良ければ今夜神社にでも着て行ったらどうっすか?」
「ま、マジか…。」
ペアルックになってるとは…ぬかりがない…。
ピンポーン!
「よーす!湊ー!遊びに来たぜー!」
「紫央くんがいるところに私あり!クロエもいるよー!」
リビングの扉が勢いよく開き紫央とクロエが半ば押し掛けるように入ってきた。
二人の後ろからはひょっこりと桜ちゃんも現れた。
「お、お前らどうやって家の中に?」
「私がお入れしましたんですよ。湊様。」
「え?」
三人の後ろから背の高い女性が歩いてくる。
金髪のウルフカットはすごく聞き覚えがあり懐かしい気持ちになる。
そうだ、帰ってきたんだ。
「とこさん!」
「お久しぶりですね、湊様、お嬢様。」
八雲さんのメイドのとこさんが帰ってきたのだ。
「とこ!」
八雲さんも気付き、彼女に飛びついた。
とこさんにはすごくお世話になった…。
また会えて俺もすごく嬉しい。
「遅くなりましたお嬢様。ただいまです。」
「おかえりなさい…!とこ…!」
全員が集まり、賑やかになった俺ん家のリビングを眺めた。
こうしてまた八雲さんとみんなで一緒にいられることがすごく嬉しいな…。
「よし、みんな!今日は昼飯は寿司の出前取っといたからどーんと食べろよ!」
「マジか!湊かっけえぞ!」
「ごちだねぇ〜!」
「私まで頂いても良いのかな…?」
「何遠慮してんの桜。今日ぐらい良いじゃん。食べてきなよ。」
「それじゃあ湊くん、準備しますか。」
「おう。皿持ってってくれるか八雲さん。」
今年最後の日。俺はこうしてまた八雲さんといられることが本当に嬉しいんだ。
夜はすき焼きでも作ろう。
☆☆あとがき☆☆
今日で今年も終わりですね…!
みなさま、ありがとうございました!
来年からも「汚部屋の園の白華さん」をよろしくお願いします!
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