第23話 八雲さんに勉強を教えてもらおう
「
「?どうしました?
「べ、勉強を教えてもらいたいんだけどっ…!」
——————
というわけで俺は今、リビングのテーブルに勉強用具一式を並べて八雲さんと一緒に勉強をしています。
「それじゃあ私はお邪魔にならないように部屋に戻っていますね。何かあればお呼び下さい。」
「私は…勉強教えてもらいたいし一緒にやろうかな…。」
とこさんはお隣の旧八雲さん宅に、
それにしても翠が自分から勉強するとは、珍しい。
「んー…ここどうやってやるんだあ…?」
俺が今やっているのは数学。
とりあえずワークを開いてみたは良いが既に何も分からん…。
「あ、ここはですね…。」
早速手が止まっているのに気づいた八雲さんがシャーペンを手に取り俺のワークにサラサラっと書き込みをしてくれた。
「この問題は面積を求めるのでsinを使いますが…湊くんはまずこの三角比の表を覚えましょうか。基本からやっていきましょう!」
「うん…!」
それにしても…八雲さんって勉強する時はメガネ掛けるんだ…。
銀色の髪にすげえ似合ってて…大人っぽい。
いかんいかん…集中…!
「どうしました?」
「な、なんでもっ!」
どうやら見ていたのがバレてしまったらしく、隣から顔を覗かれた。
すると距離がグッと縮まり、肩と肩が触れる。
「また分からないところがありましたか?」
メガネの八雲さん…破壊力が高い…!
「あ、えっと…ここが…!」
苦し紛れに指を指した問題。
分からないのは本当だ。
「cosの求め方でしたらcosθ=b/aと置くんですよ。そうですね…見つけ方としては英語のCを描くように三角形を見るんです。同様にsinθも筆記体のSのように見れば分かります。」
「C…本当だ…!あとはこのb/aに数字を入れるってことか!」
「正解ですっ。よく出来ました。」
微笑みかけながら八雲さんは手を俺の頭の上に置き、よしよしと撫でてきた。
なんだこれ恥ず…。
「やっ八雲さん、教えるの上手いね…!なんかこう、勝手な偏見だけど天才だからもっと教え方が抽象的かと思ってた…。」
「上手いだなんてそんな…。でも…私も昔は湊くんと一緒で勉強なんて全く出来なかったですよ。」
「え…?」
八雲さんはまた少し微笑み、話してくれた。
「元々、勉強が大嫌いだったんです。だけど家の都合上、せざるを得なかった。ですので嫌々ですが自分なりにもやり方を模索し頑張っていたものです。なによりやらなきゃ怒られるし…。昔は私、''こんなの将来のためになんかならない''って言ってたんですよ?おもしろいですよねっ、ふふっ。」
「や、八雲さんがそんなことを…。」
なんというか、俺はずっとこの人は生まれながらの天才なのかと思っていた。
だけど…思ってたよりずっと俺たちに近いって言うか…親しみが湧くな。
「ですが今は勉強しておいて良かったと思っています。」
「え?なんで?」
「決まってるじゃないですか。」
懐かしげに上を見て話していた八雲さんが再び俺の顔を覗いた。
しかもさっきより…距離が近え…!
「こうして湊くんに教えてあげられるからですよ。」
ドキッ…
なんだろ今の…八雲さんの顔がすごい輝いて見えるって言うか…直視できねえ…。
「おねえちゃーん。ここどうやってやるの?」
「あ、あとは翠ちゃんにもですね!」
そう言って翠の方に行ってしまった。
まあ…今のはナイスプレーか妹よ。
さてと…俺も教えてもらった事を反芻して勉強勉強…。
それにしてもこの俺がこんなに出来るなんて…。これはアイツにも教えてやりたいな…。
——————
「みなさま、勉強は捗っていますでしょうか?お菓子焼いてきたので一度休憩にしましょう。」
あれからしばらく勉強を続けていると部屋の扉が開き、お皿を持ったとこさんが現れた。
「さあ、どうぞ。今紅茶を淹れてきますので召し上がってください。」
「ありがとうございます。いただきます!」
お皿に盛られていたのは綺麗な焼き色のクッキーに丁度良いサイズのシュークリーム。
「ん〜…。サックサクでおいっし〜…。勉強すると甘いもの食べたくなるよねえ…。」
翠が早速シュークリームを幸せそうに頬張る。
「ほんとになあ…。俺もとこさんにお菓子作り習おうかなあ。」
「それいーじゃん!習ってよお兄ちゃん!」
「こんなに美味いと確かにアリかも…。」
「ふふ、湊様ならすぐに覚えられると思いますよ。こちら紅茶です。」
「ありがとうございますとこさん…。」
「いえいえ、これくらいお安いご用です。
…あ、そう言えば湊様と翠様にお客様がいらしているんでした。」
「俺たちにお客?」
「ええ。今お呼びしますね。私の部屋でお待ち頂いておりましたので。」
とこさんはそのお客とやらを呼びにまた俺の家から出て部屋に戻って行った。
「翠、誰か呼んだのか?」
「いや?誰だろう、私のとこに来る人なんて桜ぐらいしか思いつかないけど…。」
「なあ。俺も
「あ、湊くん、頬にクリームがついてきますよ。」
「え?ほんと?」
「はい、話していた時についたのでしょうね。取りますのでじっとしていてください。」
「ああ、ありがとう八雲さ………。」
この刹那、同時に二つの出来事が起こった。
「おーす!湊!お前メール見ねえから俺たちがわざわざ出向いて……」
「みーなーとー!早くメールみろよー……」
「翠ちゃーん。一緒にあそぼー……」
まず一つは部屋の扉が勢いよく開き、紫央とクロエ、それに桜ちゃんが入ってきたこと。
別にそれは問題ではない。重要なのはもう一つ……。
突然近づいてきた八雲さんの顔…その時頬に感じた柔らかな感触…!微かに部屋に響いた音…!
間違いない…この人俺の頬に付いたクリームを…口で直接取ったんだ…!
「はい、取れましたよ。あれ?どうしました?お顔が真っ赤ですよ?湊くん。」
「や、やや、八雲さん…今何を…?」
「何をって…クリームを取ったんですよ?」
「ど、どこで…?」
「口で。」
確かめるように言葉を聞くと、自分の口を指指した。
この唇が俺の頬に……意識するとみるみる顔が真紅に染まるサンタの服が如く蒸気する。
「ど、どわああああああ!!??」
「み、湊くん!?」
急いで顔を隠し、八雲さんの視線から外す。
——————
「こ、これどういう状況…?」
「さあ…?」
紫央とクロエも入った途端この光景だったのでさっぱり事情が分からない。
しかし…。
「しっかしあの湊が…!ここまで進展してたなんて…!俺嬉しいよ…!」
「だよねぇ…!もはや私たち、親の気持ちになっちゃうよお…。」
紫央とクロエは感動した。
「す、すすす、翠ちゃん…これは…。」
一方桜は翠の隣でピシリと石のように固まり答えを待っていた。
「わ、私も分からん…。八雲おねえちゃんって距離感バグりまくってるから…真意は分かんないんだよなぁ…。」
そんな全員のやり取りをキッチンから隠れて見ていたお世話係のとこ。
「ああお嬢様…なんて大胆な…!湊様のお顔があんなに真っ赤に…!」
——————
これってほっぺでもキス…なのでは…?とかいや、これは事故だ…とか考えるたびに八雲さんは全く意識していないという事を思うと余計に恥ずかしくなる湊だった。
☆☆あとがき☆☆
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