第22話 八雲さんと心配
「ふぁあ…おはよぉごじゃいまぁす…。」
部屋の扉がガラリと開き、
先日買った寝具を開いていた部屋のベッドにセットすれば八雲さん専用の部屋の誕生だ。
「おはよう八雲さん。」
「おはようございますお嬢様。」
「んっ…?」
やはりとこさんも早起きする人らしく、俺たちは同時に起床したので良い機会だし早速家事のあれこれを教えてもらっていた。
「二人とも、もう起きていたのですか…?」
キッチンで料理する俺たちの元にやってきて尋ねてきた八雲さん。
「うん。とこさんに家事について色々教えてもらってさ。これがすげえんだよ!今まで俺がどんだけ無駄な動きをしていたか…。」
「いえいえ、そんな事はありませんよ
「そ、そうかな。あ、そうだこの時なんだけどさ。ここってどうしたら……」
「そこでしたらこれをこうして……」
とこさんは家事のプロフェッショナル。
彼女の話はマジでためになるからこのチャンスを活かすために俺もまたレベルアップしなきゃならない。
「あ、八雲さん、そろそろ朝ごはん出来るから翠起こしに行ってくれないか?って……どしたのその顔……。」
料理から顔を上げ、八雲さんの方を向いてみると、彼女は少しだけ眉を上げてほんのりと頬を染めている。
言われて気づくと、はっとした顔をし慌てて顔を逸らした。
「なっ…なんでもありません…。翠ちゃん起こしに行ってきます…!」
そう言うとバタバタと急いで翠の部屋に行ってしまった。
「な、なんだあ…?」
「あらら…これは私がやってしまった、というやつでしょうか。」
とこさんが八雲さんが去って行った先を見つめ、いたずらっぽく笑った。
「……?」
何かあったのだろうか…?
——————
スヤスヤと眠る翠のベッドに潜り込んだ八雲。気持ちよさそうな翠にぎゅーっと抱きつき胸に顔を埋める。
「な…なんでしょう…この気持ち…。」
とこと湊くんはただ一緒に家事をしてくれていただけ…それに湊くんはとこに家事を教えてもらっていただけ…。だけど…。
「あんなに楽しそうな湊くんの顔…見た事ない…。」
翠にしがみつく力が増すと、突然体に腕が回された。
「……どったのおねえちゃん。」
「すっ翠ちゃん…!?起きていたんですか…!?」
「なあんか今日は目が覚めちゃって…。ウトウトしてたけどおねえちゃんが来たので起きちゃった。」
「そ、そうですか…。」
胸にいた八雲の位置まで翠は下がると、顔を覗く。
「なんかあったのお…?おねえーちゃん。お兄ちゃんのこと?」
「っ!翠ちゃんは心が読めるのですか…?」
「まあねぇ。」
「ほ、ほんとだったんですか!?」
「…冗談だよ。そんなことよりお兄ちゃんがどうしたの?」
「いやっえっとお…ほんの些細なことで…。」
「相談ぐらい乗るよ?」
「んぐ……では……。」
八雲は翠の言葉に乗り、先ほどの一件を話した。
———
「かくかくしかじかで…。」
「なあんだ、そんなこと?」
「え、えぇ?」
予想外の言葉に八雲は戸惑ってしまった。
「おねえちゃん、安心しなよ。大丈夫だよ。」
「そ、そうですか…?」
「うむ。じきに分かるぞよ。」
肩をポンっと叩き、言い切った翠に八雲は少しだけ安心感を覚えた。
「ありがとうございます…!翠ちゃんっ!なんだか少し心が軽くなったような気がします!」
「うん!あ、そろそろご飯かな?」
「はっ!忘れてました!ご飯の準備が出来そうなので翠ちゃんを起こしてこいと言われてたんでした!」
「なるほどねぇ。んじゃ行こっかおねえちゃん!先行ってて!すぐ行くから。」
「はーい!」
八雲はベッドから起き上がり、部屋から出て行った。
「はぁ…。私ってやっさしい〜…。」
大の字で寝転がり、一言呟いた翠。
しばらくして立ち上がり、リビングへと向かう。
——————
「やっと起きてきたか翠。もうご飯食べれるから座れよー。」
「はーい…って美味しそー!いただきまーす!」
俺たちはそれぞれ席に着き、遅めの朝食をみんなでとることに。
「そういえば、湊様はどうして家事にここまで頑張れるのですか?普通の高校生でしたらもっと遊びたいでしょうに。」
とこさんが俺に話しかけてきた。
「俺ですか?うーん…。今まで翠の世話で家事するのは当たり前の生活だったからなあ…。なんていうかこれが普通っていうか…。」
「大変、じゃないのですか?」
尚も質問が続く。
「大変ですけど、俺は好きですよこの生活。こんな俺でも八雲さんと翠の役に立てると思うとさ。だからこれからも色々お願いしますよ、とこさん!」
「…ふふっ、もちろんですよ。」
とこさんは少し微笑むと、俺の隣にいた八雲さんに視線をチラと移し、ウィンクした。
「ん?どうしたんですか?」
「いえいえ、なんでも!それにしても湊様、この卵焼きとても美味しいですよ。これは私がお教え出来ることも少なくなってきましたね。」
「いやいやいや、俺なんてまだまだで…これからもよろしくお願いしますよとこさん。」
「はい、もちろんですよ。」
そうだ、俺は今の生活が好きだ。
確かに大変だと言われれば大変だがやりがいがあるし誰かのために頑張る事自体結構好きだったからな。
そのためにももっと家事レベルを上げてかないとな!
——————
「良かったね、おねえちゃん…!」
翠が小さな声で八雲に声をかける。
「…はい!」
八雲はとこと話していた湊に目をやると、溢れるばかりの笑顔で答えた。
☆☆あとがき☆☆
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