第15話 八雲さんとゲーム

 「ん?どしたの二人とも。めっちゃ疲れてそうな顔して。昨日寝れなかった?」


 「あのなあ…。」


 現在午後1時。

 ようやくすいを起こす事ができ、みんなで食卓について目玉焼きやソーセージといったザ・朝食を食べてる最中に俺たちを見て言ってきた。

 俺も八雲やくもさんも髪はボサボサとなり疲れ果てている。


 「俺たち、お前を起こすために頑張ったんだぞ。いい加減早く起きろ…。」


 「え〜、私朝大っ嫌いだもん。やだやだやだあー。」


 「ちったぁ早く起きる努力をだなあ…。目覚ましつけるなりなんなりしてみたらどうだ。」


 「目覚ましで起きるのはなんか嫌なんだよねえ…。なんか大きな音で起こされるのやじゃん。」


 「ま、まあまあ二人とも!今日はせっかくの休日ですしこのくらいておきましょう?それより今日は何をしますか?」


 八雲さんが会話に入り即座に話題を変える。


 「…という事だ。今回はこの辺にしといてやるけどこれからは少しで良いから自分から早めに起きろよ。ここ、大事だからな。」


 「はーい!おねえちゃんなにするー?」


 「…やれやれ。」


 俺の言葉は速攻で流されてしまい、八雲さんの方へと向いてしまった。

 調子の良いヤツめ…。


 ——————


 ジャー…


 食べ終わった皿を洗っていると、リビングから八雲さんがやって来た。


 「お皿拭きますね。」


 「ああ、ありがとう。」


 最近はこうして拭いてくれたりなど手伝ってくれるようになりバンバン割っていた出会った当初と比べると見違えるほど成長している。

 元々頭の良い八雲さんだから物覚えも早いのだろう。


 「翠ちゃんがみんなでゲームやろうよって言っていたのですが私、やり方分からなくって。みなとくん、教えてもらえませんか?」


 「もちろん。俺ゲーム得意だから任せてよ。」


 「それは頼もしいですねっ!」


 分担して皿洗いを終わらせて二人でリビングに向かった。


 ——————


 「あ、お兄ちゃんたち来た来た。やろ!」


 「お前は…グータラを体現したかのようなヤツだな。」


 「良いじゃん。たまの休みぐらいにはさ。」


 「いやいや、いつも通りだろ。」


 「えへへ。よいしょっ、さっ何やる?」


 ソファに寝転がりながら右手でスマホ、左手で机に置いてあるお菓子をつまみ、テレビを垂れ流していた翠。

 お兄ちゃん、この先が心配だよ…。


 俺たちも座り、三人でテレビを眺める。


 「そうだなあ…。八雲さん、もちろん初めてだよね?」


 「はい。ですのでなるべく簡単なものにしていただけると助かります…。お二人ともごめんなさいね。」


 「良いって。じゃあみんなでやれて簡単なやつをいくつかピックアップして順にやってってみようか。今日は時間あるし。」


 「ありがとうございますっ!」


 「よし翠、選ぶぞ。」


 「おっけー!」


 ——————


 「ざっとこんなもんか。」


 机に翠と選んだ色々なゲームを並べる。

 乱闘ゲー、レースゲー、パーティゲーなど様々だ。


 「じゃあこれからやってみるか。翠、カセット入れといて。」


 「はーい!」


 「それはどういうゲームなのですか?」


 「これはレースゲーだよ。コントローラー使ってキャラ動かすだけだから大丈夫だと思う。」


 「ほんとですか?それはたのしみですっ。」


 俺が最初に選んだのは国民的なゲームキャラを題材にしたレースゲー。

 これなら初心者にも優しいし比較的簡単だからいけると思うが…。


 『エェェェェイト!!』


 ゲームから高らかな声が聞こえてきた。


 「これをこう持って…。」


 「こうするのですね…了解です。」


 八雲さんにあらかじめ操作方法を教えておきゲームを開始。


 ちなみに俺は紫色の背が高いキャラ、翠と八雲さんはお面をかぶった小さいキャラ。

 水色とピンクを選んでおりパステルカラーでかわいいそうだ。


 『3……2……1……GO!!』


 レースが始まった。


 「八雲さん、Aボタン押して、進むから。」


 「えーっと…Aですね…わかりました…!」


 俺と翠は経験者なのでスイスイ進むが八雲さんはやはりぎこちない。

 しかししばらく続けていると結構上達し、順位も真ん中ぐらいに落ち着いてきた。


 (それにしても…)


 俺は常に一位を維持し、独走していたので余裕がありチラッと八雲さんを見てみる。


 「ここは右に曲がって…次は左…」


 集中して本人は気づいていないが…


 (本当に体、傾くんだ…。)


 漫画やアニメでは見た事あったが現実でも起こるんだなこれ…。 

 でもなんというか、すごく可愛いな…。


 俺の視線に気づき八雲さんがこちらを見る。


 「なっ…なんですか湊くん。よそ見してると落ちちゃいます………あー!」


 落ちたのは八雲さんの方で見事にコースから外れて落ちていった。


 「むぅ…湊くんがじーっと見るからぁ…。」


 ちょっとむっとした顔で俺を見てくる。


 「ごめんごめん。丁度良いしそろそろ次のゲームにしようか。」


 「お兄ちゃん、あれやろうよ。」


 翠が選んだのはみんなで出来る乱闘ゲー。

 最初の人には少し難易度が高くないかな?


 「いやーこれ、八雲さん出来るかな?」


 「多分大丈夫だよ!やってるうちに慣れる慣れる〜。」


 「まあ、試しにやってみるか。」


 ケースからカセットを出してゲーム機本体に差し込む。


 「難しいのですか?」


 「んー、初めての人にはちょっとむずいかも。」


 「なるほど…あ!良い事思いつきました!」


 「…ん?」


 なんか…八雲さんがこう言う時は何かしでかす時のような…。


 ストンッ


 「こうすれば直接湊くんに教えてもらいながらできますねっ!」


 八雲さんは急に立ち上がり、俺の膝の中にスポンッとおさまると腕を自分の手のところに移動させてまるで俺が八雲さんを抱きしめているかのような構図が出来上がってしまった。


 「そ、そそ…そうだ…ね。」


 やっべえ…八雲さんの体温、体の柔らかさ、その他色々がジャストゼロ距離で伝わって来て…緊張とドキドキが同時に襲ってくる…。


 『3…2…1…スタート!!』


 「よし、じゃあおねえちゃんには最初手加減しようか……ってうわあああ!!」


 始まった瞬間、緊張のあまり八雲さんの手を握りながらも速攻でコントローラーを動かして開始数秒で即死コンボを決め、翠のキャラを殲滅させた。


 「す、すごい…。うますぎますよ湊くん…!」


 「もおー!お兄ちゃんがやるなんて聞いてないよー!」


 「す、すまんな。俺ちょっとトイレ行ってくる。二人でやってて良いよ。」


 ——————


 ガチャ…


 「あっぶねー…。」


 トイレと言ったが別にトイレには行きたくなくてただ心を落ち着かせたかっただけだ。


 「八雲さんは心臓に悪いなまったく…。」


 しばらくしてリビングに戻る。


 ——————


 「お、おおお、お兄ちゃん…!おねえちゃんって本当に未経験…!?」


 「え?」


 そう言われたので画面を見てみるとなんかえげつないことになってる。


 「ろ、6連勝!?この一瞬で…!?」


 「さっきの湊くんの動かし方を真似たら出来ました!勝てると楽しいですねっゲーム!」


 「ま、マジ?」


 さっきのは俺ですらかなり練習したコンボだったのに…あんな一瞬で、しかもたった一回で覚えたって言うのか…?

 いや、八雲さんは学校一の頭脳を誇る天才。

 こんな事も可能なのかよ…!…いや、まて。


 「じゃ、じゃあさ、次これやってみない?」


 俺が選んだのはfpsゲームだ。

 普通なら初心者に教えるものなんかじゃないが八雲さんならもしかして…!


 「面白そうですねっ!お願いします!」


 ここは恥を忍んで…さっきと同じように八雲さんにコントローラーを持ってもらって俺がその上から握り、操作する。


 一回ゲームを通してやり、次からは俺と翠を交えて三人でやる。


 『champion』


 ゲームに浮かび上がる文字。


 「す…すごい…すごいよおねえちゃん!うますぎるよ!」


 「そ、そうですか?これも湊くんが教えてくれたおかげですよっ!ありがとうございます!」


 「八雲さん、良ければこれからも一緒にゲームやろうよ。暇な時とかさ。」


 「はいっ!喜んで!」


 間違いない…。八雲さんは一回体験すれば完璧にこなせる天才だ…。


 この後、三人で引き続きゲームをし続けた。

 翠も上手いが、完全に俺の動きをコピーした八雲さんはそれを遥かに上回る。


 ヤバい…めちゃくちゃ楽しいぞこれぇ…!


 久々にゲームに熱中した一日となった。

  


 


 

 ☆☆あとがき☆☆

 本日もありがとうございます!

 良ければブクマや☆☆☆評価ぜひ!

 引き続き白華さんをよろしくお願いします!

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