第13話 髪洗ってもらうの…良いかも…
「お二人は本当に仲が良いのですね。羨ましいぐらいです。」
俺と
長い銀髪に水滴が滴り、光を反射して輝いているような美しさを感じられる。
「今しがた煽られてムカついてたところだけどな。」
「まあだ言ってんの?お兄ちゃん。そう言えば八雲おねえちゃんには兄妹とかいなかったの?」
「私は…一人っ子でしたのでちょっと寂しかったですね…。」
八雲さんが悲しげに微笑んだ。
「そっかあ…。一人だと寂しいよね…分かるよ、私も昔はそうだったから。」
「…翠ちゃんは
「そそ。私、養子なんだ。だから内藤さん—パパとママ、お兄ちゃんにはすっごく感謝してるんだっ。」
翠が俺の方を向いてニコッと笑った。
「…そ、そんな事気にすんなよ。俺も翠が居て楽しいから。」
「へへっ、ありがと。じゃあ私一生お兄ちゃんと暮らそうかなあ。」
「そうとはならんだろうが…。」
「三食付いて掃除、洗濯、朝も起こしてもらえるなんて。これに慣れちゃったらもう離れられないよねぇ。」
「なら少しは手伝えるようになれよ。」
「それは…善処します!…おら!」
突然翠がぱしゃっと俺の顔めがけて湯船の水をかけてきやがった。
「おまっ…!なにしやが……る!」
負けじと水を翠にぶっかけて応戦。
戦いは激化した。
——————
「ふーたーりとーもー?それぐらいにしておいてはどうですか〜?顔がびちゃびちゃですよ?」
八雲さんが笑いながら制裁に入って来たので俺たちは戦いの手を止めた。
「よしっ!じゃあ湊くん、私の方は終わりましたのでどうぞっ。座って下さい!」
「あ…そうだった…。」
完全に忘れていた…。
だが逃げ道はないし体よりはダメージは少なそうなので大人しくここは従おう…。
なるべく八雲さんの体を直視しないように顔を逸らしながら椅子へと座る。
「それでは洗っていきますね〜。気になるところがあったら言って下さいっ。」
「…お願いします。」
手にシャンプーを取り、泡立てる音が響く。
しばらくし、俺の髪にスッと八雲さんの細い指が入ってきた。
しゃかしゃかしゃか…。
強すぎず、弱すぎずの丁度良い力加減で…これは……。
「どうですか?」
八雲さんが聞いてきた。
「…めちゃくちゃ気持ちいいです…。」
ヤバい…。めっちゃ気持ちいいぞこれ…。
正直毎日洗ってもらいたいぐらい…っていやいやいや!それはダメだろ…!
「本当ですか?でしたら毎日でも洗って差し上げますよ!私に出来るのは…こういったことしかありませんから…。」
自虐的に笑う八雲さん。こんな顔させちまったからには否定はできないよなあ…。
「たまに…たまにお願いします。」
「っ!はい!ありがとうございます!」
「良かったねえ。お兄ちゃん。」
「…これに関しては素直に嬉しいな。」
こう思うぐらいに気持ちよかったのだ。
——————
「二人とも。」
俺の髪をシャワーで優しく流してもらっている時に八雲さんが声をかけた。
「どうしたの?」
「私は…。すっごく今の生活が好きです。湊くんと翠ちゃんとの毎日はとても楽しいですから…。ですので、その…世間知れずで何も出来ない私ですが…どうぞこれからもよろしくお願いします…!」
シャワーを一度止め、俺たちに頭を下げた。
急だったので俺と翠は二人で顔を見合わせて驚いたが、少しして翠が口を開いた。
「八雲おねえちゃん。私もね、本当のおねえちゃんができたみたいですっごい楽しいよ!だからさ、気にしないで?」
「そうだよ。俺も八雲さんとの生活すげえ楽しいぜ?みんなでわいわいしたりさ。」
思っていた事をありのまま伝える。
すると八雲さんが顔を上げた。
目元が少し潤んでいたがきっと風呂の水だろう。少し赤くなっているのも長風呂したせいだろうな。
「ありがとうございます…二人とも!」
「うんっ!もちろんだよ。さっそろそろ出よっか!私先に行ってるね!」
そう言って翠がばしゃーっと湯船から出て外に行った。
「じゃあ俺たちも出よう。八雲さん、先出て良いよ。」
「はーい!」
さっきの事があったからなのか八雲さんは嬉しそうだ。
一人になり、風呂の真っ白な天井を見る。
「ふぅ……。乗り切ったーーっ…!」
色々あったがこうして無事に人生二度目の八雲さんとの風呂を終えたのであった。
ただ…髪を洗ってもらうのはアリだな。
まさか俺に洗ってもらってすらいた八雲さんが他人の髪を洗えるほどに成長していたとは…。
色々と教えてあげた翠…ナイスだ。
☆☆あとがき☆☆
本日もありがとうございます!
今回は少し短めとなっています!
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