第9話 第一回戦開幕!
「それじゃあ15分くらいで試着室のとこ集合ってことにしよ。」
クロエの提案によって突然始まったファッションショーみたいなの。
一店舗めは赤色の看板が目立つ「クロクロ」だ。
「分かりました。
「ちょっと待って!」
「湊と
「…俺たちが審査員?」
「俺と湊どっちも公平性にかけるけど良いのか?」
「待って、紫央くん。それはもちろんクロエの方に天秤が傾いてるよね?」
「八雲さんの服楽しみだな〜湊。」
「コラーッ!紫央くんめぇ…あっと言わせてあげるからね…?」
「冗談だよ。冗談。お前のも楽しみにしてるから頑張れ。」
紫央がクロエの方を見て言う。
なんだかんだ言っておいて紫央は優しい男だ。
「きゅんっ……。クロエ頑張るぞー!」
そう言うとクロエは店の中へと消えて行った。
「八雲さん、勝負じゃないんだから気にせずに自分の好きな服選んできて良いからな。」
「それは分かっていますが…その…湊くんが満足出来るように頑張ります…!」
「え、ええ?」
なぜだか八雲さんも気合が入ってるようだが…俺の事は気にせずに自分が好きな服を着て欲しいんだけどなあ…。
「大丈夫だよお兄ちゃん。私が着いてるから期待して待ってて!」
俺の困惑した顔を見たのか翠が去り際ひっそりと耳元で囁いてきた。
こう言う時はなんて頼れる妹なんだ…。
「そんじゃあ俺たちは楽しみにして待ってますかあ。」
三人がいなくなり、俺と紫央は一旦店の外に出て空いていたベンチに腰掛ける。
「女子って大変なんだなあ…。俺なんかファッションとか一度も気にしてなかった。」
「そういやお前、年がら年中パーカーだもんな…。まあパーカーも悪くないけど他のも着といた方が将来にも良いんじゃねえの?」
「一度パーカー沼に落ちるともう出て来れなくなるぞ…。しっかし俺に比べてお前はシャレてんな。」
紫央は紺色のロングコートを羽織り、ジーパンを履いていてなんとも爽やかな雰囲気を醸し出している。だが着飾っていないので自然というかなんというか好印象が持てた。
語彙力がないからこれぐらいしか感想は言えないが…。
「はは。ファッションも大切だぞ?」
「…頑張るよ…。」
こうして他愛もない話をしていると15分はすぐに訪れた。
—————
ピロン
「お、終わったみたいだぜ。俺たちも行こう。」
連絡があったので二人で試着室まで行くと、翠が立っていたのですぐに分かった。
「あ、お兄ちゃんたちきたきた。おねえちゃーん!クロエさーん!きたよ!」
「はーい!」
「分かりましたあ!」
翠が試着室へと呼びかけると中から八雲さんとクロエが答えた。
「それじゃあお待ちかね。どうぞ!」
合図と共に両方の部屋のカーテンが開く。
「おお…!」
俺が最初に見たのはもちろん八雲さん。
彼女はベージュのニットのカーディガンにロングスカート姿だった。
淡色で統一されたコーデは、八雲さんの可愛らしさを最大限引き出していてまさに清楚の化身というか可愛さの具現化というか…。
とにかく俺の言葉では言い表せないぐらいには可愛い。
「どうで…しょうか。湊くん。」
少しだけ恥ずかしがりながらも頬を赤らめ聞いてくる八雲さん。
彼女の行動が既に俺をノックアウトさせそうだ…。
「めっちゃ…めちゃくちゃ可愛いよ八雲さん!すっげえ似合ってる!」
「そ、そんな直球に言われると恥ずかしいですね…。でも…嬉しいです…!」
「ちょっとお〜?私もいるんだけど〜?」
八雲さんに集中して忘れていたが声がしてきたのでクロエの方へと振り返る。
「じゃっじゃあ〜ん!どうどう?惚れちゃった?」
ベージュのロングコートを羽織り黒色のジーパンがスラッとした綺麗な足を強調しているためクロエの見事なスタイルをハッキリとさせている。
それにツインテールにしていた髪を下ろし、ふんわりとなびかせているもんだから…めずらしくこちらも清楚に見える。
って…なんか既視感があるな。さっき見たような…。
「…おい。なんか俺と似てない?」
紫央もそれに気づいたのか自分とクロエの服装を交互に見ていた。
「…エー…ナンノコトカナー…。」
「バレバレだぞ。隠す気ないだろお前…。」
「だってえ!クロエ、紫央くんとペアルックしたいのに紫央くんやってくんないじゃあん!」
「あっさり自白したな…。」
「まあ理由はどうであれ似合ってるよ。良いじゃん。」
「紫央くぅん…!大好きー!」
ちゃんと褒めてあげた紫央にクロエが抱きつく。
「おい。いちゃつくならよそでやれよ。」
「すごい…クロエさん似合ってますよ!」
「すっごい大人って感じだね。憧れる。」
翠と八雲にも好評でクロエのファッションセンスの高さがうかがえる。
「おい…あそこの子達めちゃくちゃ可愛くね…?」
「ほんとだ…やっべクソ可愛い。」
いつの間にか試着室の周りにギャラリーが集まり始めてしまい、かなりの視線を感じる。
八雲さんとクロエは絶世の美少女だから集まってしまうのも無理はない。
「八雲さん、みんなもそろそろ場所移そう。」
「だな。二人ともその服買うか?」
「どうです?湊くん。」
「うん!めちゃくちゃ似合ってるから良いと思うよ。」
「えへへ…じゃあ買います。」
「私、おねえちゃんとレジ行ってくるね!」
八雲さんと翠はレジへと向かった。
「クロエ。」
「どうしたの?」
「ほら。」
クロエの持っていたカゴを受け取る紫央。
「俺買ってくるからお前は湊と外で待ってろ。みんなでゾロゾロ行っても邪魔になっから。」
「紫央きゅん…!ありがと!」
「今払ってやるだけだからな。ちゃんと返せよ。」
「えー、ケチ。」
「半分は出してやるよ。まあ似合ってたし。」
「きゃー!紫央くんやっさしー!」
「湊、そいつ連れて外行ってて。」
クロエを適当にあしらって紫央もレジへと向かって行った。
とりあえず俺たちは紫央に言われた通り外で待つことにするが…。
「…なあ。紫央ってイケメンだな。」
「お?ようやく湊も気づいちゃった?」
「いや、なんかさあ…さっきの買い物のくだりもしかり、ああ言うことをさらっとできちゃうやつってすげえなあって。」
「まあねえ。でも湊もすごいと思うよ?家事も出来ちゃうし優しいし。何よりクロエにもこうしてフツーに接してくれるしね。」
「それはお前が紫央をストーカーしてるからだろが。」
「うーん…分かってるんだけどやめられないんだよねぇ…。あ、三人ともきたよ!それじゃあ次の店行こっか!」
「あ、これまだやんの?」
「もちろんやるけど?」
クロエのキラキラと輝く顔がこちらを見る。
まあ…八雲さんも楽しそうだしいっか。
こうして、歩きながらこれからは親友を見習おうと思ったのであった。
☆☆あとがき☆☆
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