第21話 舞い戻った者たち

 道行く住人たちが怪訝そうにその一団を見る。

 中には怯えたように引き返す者もいる。

 平和なはずのペルダムの朝に現れたその集団は異様であった。


 種族も体格もまったく異なる3人の獣人が大通りを掃除している。

 水牛の半獣人ゴルドとリザードマンのギエロ、それに熊人のラグ。


「なぁ……もうあからさまに怯えられてるんだが」


 箒と塵取りを手にしている次兄ギエロが気まずそうに周囲を見回す。

 自分たちの周辺だけ人がいない。


「当たり前ですよ。最初からいきなり受け入れて貰おうだなんて甘いことを考えてはいけません。根気強く続けるんです、こういう活動は」

「そうだぞコノヤロー! 真面目にやれ! トカゲみてえなツラしやがって!!」


 竹箒を手に一緒に掃除をしているクリスティンとその後ろをいくつものゴミ袋を抱えて通る長兄ゴルド。


「いや確かにツラはトカゲだけどよ……ほれ、ラグ、それ持ち上げといてくれや」

「こ、こ、これでいいのか兄ぢゃん」


 末弟のラグが怪力を活かしてベンチを持ち上げるとギエロはその下の落ち葉を掃きとった。

 そんな2人を見てクリスがうんうんとうなずいている。


「続ける事が大事ですからね。続けていきましょうね」


 その言葉に手を振り上げてゴルドが反応した。


「わかりましたッ! 任せといてくだせえ! 死の前日まで続けます!!」

「そこまでやれとは言ってないです」


 乾いた声で言うクリスティンであった。


 ……そしてまたある日の事。


 武装して集合しているクリスティンとカエデと3兄弟。

 まるでこれから戦争でも始まるのではないかというような物々しさである。

 クリスティンが手にしているのは元々はゴルドの使っていた竜の牙を削った大剣なのだが無論彼は返してくれなどと言うはずがない。

 むしろそれを手にするクリスティンをうっとりと眺めている。


「今日は暴れイノシシの退治にいきますよ」


『はーい!!』


 3兄弟の返事が唱和した。


(なんだか私怨を感じる活動だな……)


 ふと、そう思ったカエデであった。


「暴れイノシシは皆の迷惑になりますからね。念入りに退治しましょう」


(やはり私怨を感じる)


 そう思わずにはいられないカエデである。


 ……そしてまた別の日。


 ツルハシ、スコップ、鍬、ハンマー等を手にしたクリスティンたちは荒れ地に集合していた。


「今日はこの辺りの開墾をしますよ。農地にしたらそれを格安で街の人に貸し出して有効活用してもらいましょう」


『はーい!!』


 3兄弟の返事が唱和した。

 ゴルドが鍬を振り上げて弟たちを鼓舞する。


「おうお前らしっかりやれよ!! この辺地平線まで畑にするぞ!!」

「そこまでやれとは言ってないです」


 遠い目をして言うクリスティンであった。


 ……そしてまた別の日。


 今日は街の近くの岩山に集合しているクリスティンたち。

 今日も皆ツルハシやスコップを持ってきている。


「今日はここで鉱脈を探しますよ。鉱物資源が出れば産業が生まれ人が増えて街が発展します。頑張りましょうね」

『はーい!!』


 3兄弟の返事が唱和した。

 ゴルドがつるはしを振り上げて弟たちを鼓舞する。


「おうお前らちゃんと掘れよ!! この岩山地図から消すぞ!!」

「そこまでやれとは言ってないです」


 もう悟ったような表情で言うクリスティンであった。


 後日、彼らは本当に銀の鉱脈を発見して街の発展に大きく貢献する事となる。


 そんなこんなで時は流れ……。

 3兄弟がペルダムにやってきてから3か月ほどが経過した。


 町の広場に住人たちが集まっている。

 和やかで賑やかな雰囲気だ。

 人々の輪の中心にいるのはザハ3兄弟。

 その背後には彼らを見守るクリスティンもいる。


 広場には大きな家が建てられている。

 3兄弟の献身が認められ、住人たちが街外れでテント生活を送る彼らの為に建ててくれたものであった。

 要所が大きく作られており巨躯の彼らでも生活に支障が出ないような構造になっている。


 都市長が感謝状を贈呈し、照れながらそれをゴルドが受け取った。

 人々が暖かい拍手を送る。


「ありがとうございます! ありがとうございます!! これも全てクリスティン様のお導きであります! クリスティン様のお陰です!!」


 ゴルドが叫ぶと今度はクリスに拍手が送られる。


「いやいや、私なんて別に何も……。照れちゃいますね」


 頬を赤らめ落ち着かない様子の彼女であった。


 ………………。


 こうして少しずつペルダムの住人たちに受け入れられていった3兄弟。

 そして、その後の彼らは……。


 3兄弟長兄、ゴルド・ザハ。

 彼は後に街への献身と貢献が皆に評価され初の半獣人の都市長に選ばれた。

 それでも生涯彼は個人の資産のようなものはほとんど持たず清貧を貫いた。

 住人の善意で貰った家に住み続け後に人間族の伴侶を得て幸せに暮らす。

 口癖は「クリスティン様は素晴らしい」

 ちなみに大通りの清掃は自ら口にした通り死の前日まで欠かしたことはなかったという。


 3兄弟次兄、ギエロ・ザハ。

 彼は後に町の近くの広い敷地で牧羊を始めて財を成した。

 牧場では社会からあぶれた獣人族を多く雇用し彼らから父と慕われる。

 生涯妻は持たずに牧場の経営は後に義理の息子に譲った。

 トカゲのマークの彼の牧場の羊毛は品質が良いと好評である。


 3兄弟末弟、ラグ・ザハ。

 彼は決まった職には就かずに生涯を街の人々や義兄たちの手伝いをしながら過ごした。

 他者に暴力を振るう事のなくなったラグはマスコットのように皆から慕われる。

 とてつもない大食らいの彼であったが差し入れが尽きることはなく飢えることはなかったらしい。


 大声を出して弟2人を常に引っ張っていくゴルド。

 ぼやきつつもそれにいつも付き合うギエロ。

 よくわからずに2人に付いていくラグ。


 ……3兄弟の仲は終生良好であったという。


 ────────────────────


 ザハ3兄弟をペルダムの街の人に受け入れてもらおう作戦は大体成功裡に終わった。

 だが、クリスティン自身は相変わらず定職に就けずにいる。


「こ、こんなに無職期間が長くなってしまうなんて……。ちょっと早まったでしょうか……聖堂騎士団を辞めてきたのは……」

「お前はここの所ずっとあの3兄弟に掛かりっきりだったんだからしょうがないだろ」


 自室で机に伏せてぐったりしているクリスティン。

 そんな彼女を尻目にカエデは大きく窓を開け放った。


 カァ、と鳴き声を上げたカラスが一羽室内に飛び込んでくる。


「え? カラス……?」

シノビ」ガラスのユキマサだ」


 腕にカラスを留まらせたカエデ。

 カラスの足には筒が付いていてその中にはやはり筒状に丸めた小さな紙が入っていた。

 カエデはユキマサにエサをやりながら紙を筒から取り出す。


「何があるかわからないから、王都の情報も仕入れておかないとな」


 カラスが運んできたのは王都の情報らしい。


(王都かぁ……)


 半年前まで自分が暮らしていた都に思いを馳せるクリスティン。

 一般的に流れているニュースとしては、クリスが故郷に帰った一月半後に国王フィニガンが崩御した。

 盛大な国葬が営まれ、その後でヒルダリアは女王の位に就いた。

 彼女は名実ともにバルディオン王国の支配者となったのである。


(まあ、私は一応皇太子派という事になっているんだろうし、そう考えればやっぱり帰郷したのは正解でしたかね)


 などと考えていたクリスティンの耳に不意に聞き覚えのある名が飛び込んできた。


「お前と一緒に王家の別荘にいたメイヤー元侍従長が女王に捕らえられたそうだ」

「……え!?」


 思わず立ち上がっていたクリスティン。

 彼女の背後で木製の椅子がガタン!と派手な音を立てて床に倒れる。

 その音に驚いてカエデは目を丸くした。


「うわっ!? なんだ!?」

「…………………」


 そして自分を凝視しているクリスと視線を合わせたカエデ。


「……どうしたんだ?」

「メイヤーさんが捕まったって、どうしてです……?」


 掠れた声で言うクリスティン。

 カエデは知らない事なので口には出せないが女王とメイヤーは皇太子ジェローム毒殺のいわば共犯である。

 あの一件は公式に病死で決着しているのだから口封じの必要もないはずだ。

 何故今になって女王が彼を捕らえる必要がある……?


「そこまではわからない。そういう事があったという情報が入ってきただけだ」


 手にした紙を見せるカエデであったが、どちらにせよ見慣れぬ異国の言語で書かれているのでクリスに読むことはできなかった。


「侍従長メイヤーといえば皇太子の参謀として色々やってた男だからな。女王と手下どもには相当恨みを買ってただろうし……権力を手に入れたから復讐されたんじゃないのか?」


 無言で椅子を直すと改めてそこに腰を下ろしたクリスティン。


 机に両肘を突いて口の前で手を合わせた彼女は前方の何もない空間を見つめて何事かを考えこんでいる。

 そんなクリスをやや不安そうにカエデが見ていた。


 ヴァイスハウプト・メイヤー……年齢は不詳の中年男。

 ずる賢く金儲けが好きで殺人以外であれば悪事に手を染めることも厭わない男。

 色々な意味でインパクトの強い人物であった。

 今でも彼の仕草や物言い、そして邪悪な高笑いを鮮明に覚えている、


 ……自分と彼の関係は? と問われれば果たしてそれはどのようなものであっただろうか。

 友人ではない。

 仲間かと言われたらそれも疑問がある。

 ただ、一時自分たちは同志であった。


 理性は忘れるべきだと告げている。

 もうここから自分にできる事などありはしないと。

 では……感情は?


(……んああああああ!!! まさか今更あのおじさんの事でこんなに悩まなくちゃいけないなんて!!!)


 ぐちゃぐちゃの乱れた感情のまま、その夜は遅くまでクリスティンは寝付けなかった。


 ────────────────────


 早朝。

 まだ日の昇りきらない時刻からごそごそと部屋で何かをしているクリスティン。

 鞄に荷物を詰めている彼女は旅装である。

 星の明かりを頼りに室内で作業を続ける彼女の横顔は真剣であった。


「……やっぱり行くんだな」


 驚いて顔を上げる。

 いつの間に部屋に入ったのか、ドアに寄りかかって腕を組んだカエデがいた。

 自分と同じく旅装……黒の仕事着である。


「カエデちゃん……」

「ちゃんはやめろ。……はぁ、こうなる気はしてたんだ。変な話を聞かせなければよかった」


 困り顔でため息をついているカエデにクリスが苦笑する。


「ごめんね。でも聞いておいてよかったです。何も知らないままでいたら絶対後悔することになっていたと思うので」

「言っておくが……」


 ジロリとカエデがツリ目でクリスを見る。


「元侍従長が捕まったのはもう10日も前だぞ。今更行ったって何もかも終わってる可能性も十分ある」


 脅すように言うカエデに無言でうなずいたクリスティン。

 黒衣の密偵は再度ため息をついた。


「パパ様とママ様に何か……せめて書置きは残せ。心配させるなというのはもう無理だろうが、それでもあの人たちの悲しむ顔はなるべく見たくない」

「わかりました。……ありがとう、カエデちゃん」


 微笑むクリスにそっぽを向くカエデ。


「……ちゃんはやめろ」


 ────────────────────


 こうして、クリスティンとカエデの2人は故郷ペルダムを後にして王都へ向けて旅立った。

 辻馬車を乗り継いで2日ほどで都へ到着する。


 まさかこんな形で戻ってくることになろうとは夢にも思っていなかった都。


 寒々とした灰色の雲の下の王都。

 自らの目的からかクリスティンにはその威容が自分を拒む冷たい要塞のように感じた。


「ここからはもう、情報を得るのに一族の伝手は使えない。やつらは今も変わらず女王と王家に仕えているからな。別のルートで探らないと」

「ええと、今更ですけどカエデちゃんは付いてきてよかったんですか……? 私、場合によっては相当危ない橋を渡ることになると思うんですけど……」


 ここで自分が何かする場合、大体それは女王にとっては好ましくない事になるだろうと思うクリスティン。

 それに付き合うという事はカエデにとっては女王に仕えている自分の一族と敵対する事になる。


 申し訳なさそうなクリスを見るカエデは呆れ顔である。


「今更そんな事を言ってるのか。私は女王に罷免されているんだ、義理立てする謂れはない」


 それに……とカエデは鋭い目をした。


「私は自分でお前を主にすると言ったんだ。その言葉はそんな軽いものじゃない。女王が相手なら降りますとか言うわけないだろ。お前がペルダムを発つ気だと気付いた時にもう覚悟なら終えてる」

「……カエデちゃん~!」


 感極まったクリスはガバッとカエデを抱きしめた。

 彼女の腕の中のカエデは顔を赤くして目を白黒させている。


「ちょっ! バカ! 暑苦しい、放せ!!」


 じたばたともがくカエデであった。

 しばらく抱きしめてからようやくカエデを解放するクリスティン。

 ……その時には彼女は、今までにないほど真剣な表情をしていた。


「それじゃあもう正直に言っちゃいますけど、私……メイヤーさんを助けるつもりです」

「そうだと思ったよ。……お前、自分でわかってるだろうな。かなり馬鹿な事を言ってるぞ」


 カエデは複雑な表情だ。

 そんな彼女にクリスティンはほろ苦く笑う。

 まったくカエデの言う通りだった。


 クリスティン・イクサ・マギウスは生まれて初めて状況に流されるのではなく自らの意思で悪事に手を染めると決めたのだ。


「善い人のまま何もできずに終わるよりかは……悪い人になったとしても助けに行きたいです。いえ……」


 クリスはぐぐっと拳を握って……。


「行くって決めました」

「やるなら成功させるぞ。玉砕なんかさせるつもりはないからな」


 2人はうなずき合って歩き出す。


「……とは言っても、当面お前はじっとしててもらう。お前、目立つからな。情報収集には1番向いてない」

「ええ~……」


 カエデの現実的な指摘にがっくり肩を落とすクリスティンであった。


 ────────────────────


 クリスティンとカエデが当面の拠点として腰を落ち着けたのは王都の一番外れのいわゆる貧民街スラムにある安宿であった。

 嵐が来たら崩れそうなくたびれ具合の宿である。

 板張りの廊下をクリスが歩くとミシミシと不安な音を響かせる。


「ここは都合がいい。使うのは私たちみたいなばっかりだ。宿の人間は利用者をような真似はしない。そういう暗黙の了解がある」

「なるほど……」


 部屋に入り、周囲の様子を確かめながら言うカエデに感心しているクリスティン。


「もっとも利用者はわからんからそっちは警戒しておく必要があるけどな」


 そう言うとカエデは窓を開け放って窓枠に片足を掛けた。


「情報収集と、後は当面の食糧とかを手に入れてくる。出歩くなよ。繰り返すけどお前は目立つんだからな」


 音もなく消えるカエデ。

 小柄で身が軽い所は少し前に一緒に旅をしていた赤い髪の男を思い出させる。


 1人になった部屋でクリスはベッドに腰を下ろしなんとなく天井を見上げる。


 ……なんだか少しだけなつかしい気がするのは、きっとリューと国を飛び出してすぐに利用した街道の安宿に雰囲気が似ているからだろう。

 結局ザハ族の襲撃があってそのまま戻らなかったが、あの不愛想な店主は元気にしているだろうか……とクリスは思った。


 ………………。


「おい……おい、クリスティン」


 呼ばれてクリスは目を覚ます。

 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 陽は陰り部屋は薄暗い。


「あ……おはよう、カエデちゃん」

「お前、思ったより神経が太いな。まあ、不安で眠れなくなってるよりはいいけどな」


 机の上に紙袋を並べているカエデ。


「とりあえず食事だ。ほら、イカを干したやつ」

「ありがとうございます」


 イカの干物を受け取ったクリスがそれを早速がじがじ齧る。


「食べながら聞いてくれ。色々調べてきた。まず……こっちにとっては有難くない話なんだが……」


 同じく干しイカを齧っているカエデの表情が渋いものになる。


「元侍従長だが、牢には入れられていなかった。どうも王宮に1室与えられてそこに閉じ込められてるらしい。牢ならまだ色々やりようがあるんだけどな。救出は難しくなってしまった」

「そうですか……」


 王宮に殴り込む自分の姿を想像してげっそりするクリスティンだ。

 覚悟は決めたがなるべく派手な事にはしたくない。


「女王は即位した後で直属の近衛兵団を組織してる。女王親衛隊クィーンガードって呼ばれてる連中だ。構成メンバーはほとんどが元第3大隊らしい。元侍従長を捕らえたのはそのクィーンガードだ」

「キリエッタ大隊長の……」


 第3大隊のメンバーなら数人面識はある。

 ……いずれも殺し合いをした相手としてだが。


「第3はキリエッタ大隊長が退団した後で代理を置いて再編待ちだったんだが、結局大多数が親衛隊に引き抜かれる形で解体したそうだ。残りは他の大隊にいったか、退団したか」

「第3は女王派でしたからね」


 話を聞きながらクリスが淹れたお茶のカップを受け取るカエデ。


「初めはこの話、第5に行ったらしいんだが大隊長は蹴ったそうだ。そのせいなのか前からなのか、第5大隊は女王と距離を置くようになってて関係は冷えてるらしいぞ」

「スレイダー大隊長って元から王妃様とそんな仲良くできそうなタイプじゃなかったですよね。なんか……地元のヤンキーがそのまま年取ったみたいな」


 割と好き放題言っているクリスティンである。

 地元のヤンキーがいまいちピンと来ていないっぽいカエデは表情に「?」を浮かべていたが。


「後、これは噂話なんだけど……」


 カエデの口調が珍しく自信なさげなトーンになる。

 話の真偽を彼女自体が疑わしく思っているような雰囲気だ。


「女王が、戦争の準備をしているらしい」

「……はい?」


 ポカンとするクリスティン。

「戦争」……それは彼女にとってあまりに縁遠い言葉であった。

 バルディオン王国はもう数百年に渡って他国との戦争を経験していない。

 おとぎ話の中の出来事のようなものだ。

 周辺国家との関係はどことも良好であるし、王国は大陸でも有数の精強さを謳われた聖堂騎士団を擁している。


「戦争って……どことです?」


 そう、相手がいないのだ。

 勝てそうだからといって関係良好だった国にいきなり攻め込むような真似をすれば周辺国家全体からバッシングを受けて王国は孤立することになる。

 王国がいくら豊かで強国だといっても周辺国家全てと断絶すれば国家の存続も危うい。


「わからない。準備を進めているという噂があるだけだ。それでなくても王妃は近頃あれこれおかしいらしい。前は厳しいが話の通じない人じゃなかったはずなんだが。最近は意見した奴をどんどん首にしてるそうだ。とうとう自分の父親の宰相まで王宮から追い出しちゃったらしいし」

「それはすごいですね……。権力を得て傲慢になってしまったって事なんでしょうか」


 納得がいかない様子で首をかしげているカエデ。


「なんか、前を知ってるからピンとこないんだよな。急にそんなに変わっちゃったっていうのが。元から最高ではなくたって権力者だったんだし、下の人間の動かし方はよくわかってる人だったはずなんだけど……」

「ライバルがいなくなっちゃったんで次のライバルを国外に探し求めてるんでしょうかね」


 ……狂戦士バーサーカーみたいな人物評をするクリスティンであった。


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