第27話 炸裂する火力
俺は翼から放たれるエネルギーを全開にすると、一気に上空へ飛び立った。
霧を形成している細かな光が、水滴のように次々と俺の頬を打つ。だが、そんなもの全く問題ない――この、神器の凄まじい力の前では。
あっという間に、龍どもの遥か頭上――20メートルは上へと占位し、俺は下界を見渡す。
艦に迫る龍の頭はどんどん増えつつある。3匹どころじゃなく、既に10匹以上はいるだろうか。
こいつら相手に、俺のフルパワーはどこまでもつか。
「七種、下がってろ!」
俺が眼下の七種に叫ぶと、ヤツは全てを悟ったかの如くひらりと身をかわし、素早く龍どもの前から一時後退していく。こういう時の頭の回転の速さだけはありがたい。
「神器解放――
俺は絶叫しながら、龍の口腔を狙い次々に翼からミサイルを撃ち込む。
それだけじゃない。一息に海面スレスレまで降下しつつ無数の火線を片っ端から撃ち込み、再度くるりと身体を反転させて上昇しつつ龍どもに炎をぶち込んでいく。
それも一度だけじゃない――俺の限界が来るまで、何度も空と海を稲妻のようにジグザグに往復し、上昇と下降を繰り返す。
星のように小さな光でも、燃え広がると原野さえ焼き尽くす――この技名はそんな意味を持つが、まさにそれを具体的に絵にしたかの如く、俺の翼から放たれた火は今、あっという間に大海原を、龍を、焼き尽くそうとしていた。
熱さと痛みによる悲鳴か。龍の咆哮が幾つも折り重なり、霧の中を満たしていく。
炎と波飛沫をつんざくように聞こえたものは、七種の歓声。
「うわー、やっぱりスッゴイ、巴君!!
こっちも負けてられ……えっ?」
既に海面に突っ伏した龍。その上で飛び跳ねる七種
――だがそのすぐ背後から、また別の龍が牙を剥き、ヤツへと襲いかかった。
一瞬対応が遅れ、七種はぽかんとその牙を見つめる。
全く。これだから、戦闘中にまではしゃぐのは――
しかし七種がまんまと牙に喰らい殺される寸前
龍の横っ面を張り飛ばしたのは、兄貴たる懐機の鉄拳だった。
岩でも叩き潰したかのような鈍い破砕音が、勢いよくドゴォと響く。
そのまま水面に叩きつけられる龍の頭。さらに懐機はその龍の図体を思い切り、バックドロップの要領で持ち上げた。
「神器解放――
B・2・B(ベリー・トゥー・ベリー)!!」
――改めて説明するが、この兄貴の神器は両手に装着したナックル。つまり自分の拳そのものだ。
俺がロケラン&フライトユニットで遠距離攻撃、七種が巨大鎌の火力で押す間に、懐機が超パワーの鉄拳を叩き込む。それがいつもの俺たちの戦い方だ。
俺と七種がある程度技巧的に攻めることが多い一方で、懐機はそのゴリラパワーの近接攻撃で魔獣を力まかせにぶっ潰すことが殆どだ。一応ナックルから刃が飛び出したりもするが、あくまで補助的なもの。
浅黒い肌に結構精悍さが目立つイケメンなのに、いざという時はその両腕の筋肉が俺の胴体ぐらい膨張して上半身の服が弾け飛び、マッスルパワーで魔獣を殲滅する。
今も当然、ヤツは上半身素っ裸であった。
たった今懐機が放った技――B2Bも、俺たちはもう慣れっこ。
魔獣の真正面から組みつき、勢いをつけて神器パワーに任せて後方にぶん投げる。ビルや道路にぶん投げれば、魔獣にはとんでもないダメージとなる。かわりにビルも道路も酷いことになるが。
当然今も、ぶん投げられた龍は他の龍に激突し、2匹揃って唸りをあげながら海に沈んでいった。
「やった、やったぁ!
お兄ちゃん、今日もスッゴーイ!!」
無邪気に飛び跳ねる七種の横へ、当たり前のように着地する懐機。
やや白目の面積が広いその眼は、すぐに別の敵を察知し素早く動いた。
「気をつけろ、七種。
まだまだ迫ってくる――あの龍どもは!」
その言葉どおり――
白い霧の中から、まだまだ次から次へと、龍は際限なく護衛艦に迫っていた。もはや一匹二匹という数ではなく、群れとか軍団と形容しても過言じゃない。
島は勿論、他の艦がどうなったかもほぼ分からず、俺たちは戦闘を継続するしかなかった。
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