第133話 王都大決戦
俺は周囲を見回す。あのキザですかしたイケメンだけど、いざとなったら頼りになるナイスガイの姿を。
「って、そんな偶然が重なるわけないか。そう何度もオヤクソク展開はないよな」
しかし、そのオヤクソク展開をやってしまうのが、あの男、ジェフリーだ。
「はあぁーっはっはっは! 無慈悲に人々を蹂躙する巨大怪獣。残された希望の光さえ潰えそうな今宵の空。だけど俺たちは挫けないぜ! 勇者アキと仲間がいるからさ! S級冒険者ジェフリー参上! フォォーッ!」
「やっぱり出たぁああああ!」
期待を裏切らないナイスガイに、俺のテンションも上がった。
口上を述べながら現れるその姿は、もう安定感さえある。
「よっ、ジェフリー様カッコいい」
「ジェフリー様、素敵!」
「はいはい、素敵素敵」
御付きの女冒険者も一緒だ。もはや様式美かもしれない。
毎度のことだが、俺はその男、ジェフリーに皮肉交じりに言う。
「ジェフリー、カッコつけてないで手伝ってくれ!」
「了解だよ、勇者アキ!」
ジェフリー一行が仲間に加わり、これで九つの首を攻撃する九人が揃った。
「手短に説明するぞ。キングヒュドラを倒すのに、九本の首を同時攻撃する必要がある。物理魔法防御に優れる奴の
そう言いながら俺は、ジェフリーの横に控えている魔法使いのステイシーを見る。
ジェフリーもステイシーを見て確認した。
「できるか?
「当然です、ジェフリー様。私はウィンラスター公爵家専属の筆頭魔法使いです。身命を賭してご期待に応えてみせます」
「頑張るのは良いけど、死んではダメだよ」
役者は全て揃った。これで作戦は実行可能だ。
「皆、聞いてくれ! キングヒュドラを倒すには、九本の首にある
俺の話を聞いたクロが、当然の如く文句を言った。
「わらわは直接手をくだせぬな。そなたらのことは――」
「断ったら朝食どころか昼食も夕食も無しです。ずっと無しです」
「た、大変じゃ! まだ寝ているシロを起こさねば!」
脇目も振らずクロがシロを起こしに行った。意外とチョロい。
作戦の前提条件をクリアしたことで、やっと俺は付与魔法の体勢に入る。この場にいる全員に向けて。
「行くぞ! 目標、前方の超巨大モンスター、キングヒュドラ! じゃあバフをかけるぞ!」
【付与魔法・肉体強化極大】
【付与魔法・魔力強化極大】
【付与魔法・防御力強化極大】
【付与魔法・魔法防御力強化大】
【付与魔法・
【付与魔法・攻撃力上昇極大】
【付与魔法・素早さ上昇極大】
【付与魔法・クリティカル確定】
【付与魔法・防御無効貫通攻撃】
【付与魔法・全パラーメーター三段階上昇】
【付与魔法・
【付与魔法・
【付与魔法・対魔族特効】
シュパァァァァーッ!
全員のステータスが極限まで強化された。誰もがその超絶的バフに驚いている。
ズドドォォオオオオォーン! ドドォォォォーン! ドォオオオオオオーン! ズドドドドド!
時を同じくしてキングヒュドラの九本の首が全て出現した。もう奴は王都城壁のすぐ近くだ。
「で、デカい……」
「こんな巨大なのか」
「まるで山のようだぞ!」
騎士たちが夜空にそびえ立つ首を見上げている。
俺の支援魔法で恐怖は軽減されているはずだが、更に戦意高揚させるよう俺は叫ぶ。ガラじゃないのだがな。
「俺たちなら必ず成し遂げられるはずだ! この場に集まった者たちならば、たとえ相手が誰であっても負けはしない! 必ず敵を倒し、勝利の美酒に酔おうではないか!」
「「「おおおおぉぉおおーっ!」」」
歓声が巻き起こった。これで勝てる。
『マイロード、そろそろ防御が限界です。ご指示を』
正面で敵の首を牽制したり防御術式を展開している
よくぞここまで耐えてくれた。後でメンテしてやらねば。
「もう少しだけ、こちらの呪文詠唱が完了するまで耐えてくれ! 完了と共に離脱!」
『イエス、マイロード』
ドガァアアアアーン! ズガガァアアアアーン! バラバラバラ!
突然、キングヒュドラが長い尾で木々や岩を跳ね上げ、こちらに投げ付けてきた。まさかの物理攻撃だ。
ブレスを防がれて痺れを切らしたのか。
単純なように見えるが、巨大な尾から放たれる岩は、弾丸のような破壊力で俺たちに襲い掛かる。
それに、いち早くジェフリーが動いた。俺たちの前に入り剣を抜く。
ズガンッ! ドガッ! ズドンッ!
ガキィーン!
「騎士たちよ! 我らが盾となり術者を守るのだ! この作戦の成功は我らの双肩にかかっているぞ! フォォーッ!」
「「「おおおおおおーッ!!」」」
ジェフリーとロザリーを始めとした数十人の騎士が、呪文詠唱しようとしている者たちの盾となり、襲い掛かる木や岩の弾丸を剣で叩き落とす。
「偉大なる慈愛の女神よ、大いなる御心で神聖なる力を!
因みに紋章を掲げる役が
説明好きなのが
無口で毒舌なのが
全員ウィンラスター公爵お墨付きの手練れで、ジェフリーの護衛兼側役だそうだ。
「よし、これならやれるぞ! 俺の合図に合わせ攻撃するんだ! 魔法詠唱に入ってくれ!」
俺の合図で、皆が一斉に攻撃準備に入った。
「青竜姫レイティアが命じる、
「地獄の門を開け放ち亡者殲滅の炎は顕現せよ! 大地を融解させ万物を滅し生きとし生けるもの全ては無に帰す永遠の焔!
「闇より深き漆黒の、光より輝く日輪の、其は精霊王の奇跡! 天地を貫く一閃の雷よ、鉄槌となり敵を滅ぼせ!
皆が一斉に準備に入った。
「あ、アキしゃんに認められる為にも、や、やらないと。魔王アルテナの命により顕現せよ! 地獄の最下層ジュデッカに封印されし
アルテナも必死だ。
「仕方がない、アキの料理の為に少しだけ力を使うとするかの」
「我もやるしかなかろう。あの首を狙えば良いのだな」
クロとシロも渋々攻撃態勢に入った。
やる気が無さそうなのに、そのエネルギーは誰より大きい。
「
「
人型のままドラゴンブレスを吹こうとしているようだが、そもそも規格外の存在なので誰もツッコまない。
「天の玉帝に願い奉る! 破魔の流星、破軍の剣神、無敵の一撃は敵に直撃せよ!
カーラも呪文を詠唱する。思っていたより強力な魔法だ。
これに国家魔導士のアーネストは気色ばんだ。さっきまでの腰抜け具合とは大違いで。
「我らも負けてはおれぬ! 者どもよ、ワシに魔力を集めよ!」
「「「おおっ!」」」
宮廷魔法使いの力が一つになった。アーネストを支えるように魔力を集中する。
「聖なる光は至高の剣となれ! 其は神威となりて全ての魔を打ち払うべし!
九人の必殺技が最大出力で放たれようとしている。
突然変異したような超強力なボスモンスターを前にして、様々な種族や国の英雄が力を合わせようとしていた。
――――――――――――――――
期待通り現れるジェフリーと愉快な仲間たち。
おやくそくです。
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