第119話 抱っこしてポンポン
今、俺は非常に困難な状況を迎えていた。
「ふーん、つまりぃ、私が居ない間にレイティアちゃんとラブラブになっちゃったんだぁ」
凄まじいヤンデレ的威圧感を放出するアリアに見つめられながら、俺はラブラブ感満載のレイティアに抱きつかれている。
「こ、これは北方領域クエストのご褒美というか……お仕置きというか……。そう、皆平等にイチャイチャする予定でして……」
順番という話でアリアが笑顔になる。
「そ、そうよね♡ アキちゃんは平等に愛してくれるのよね♡ うふふっ♡ 期待しちゃって良いのよね♡」
「はい……アリアお姉さんにも大サービスしますね」
お仕置きという名のイチャイチャご褒美は、三人の
愛されるのは嬉しいのだが、アリアのそれはガチに重く深く激しい気がする。
果たして俺の体は持つのだろうか――――
そんな俺たちのやり取りを見ながら、シーラはソワソワと落ち着きがない。さっきからチラチラと俺の顔を覗いては長い耳をピョコピョコしている。
「アキったら意外とやるわね。アタシが在宅中に隠れてイチャコラするなんて」
「シーラはお腹ポンポンだったよな。覚えてるから安心してくれ」
「ふ、ふーん。まっ、アタシはどうでも良いのだけどね。あんたがしたいって言うならイチャイチャしてあげるわよ♡」
実際は凄くイチャイチャしたそうな顔でソワソワするシーラなのだが、何故かツンデレっぽい態度だ。
少しだけ、からかってやりたくなる。
「そうか、ならシーラはご褒美無しで」
「こらぁ! たっぷりサービスしなさいよぉ!」
「どうでも良かったんじゃないのか?」
「イチャイチャしたいに決まってるでしょ!」
「どっちだよ?」
「どっちもよ!」
俺よりずっと年上なのに、実際は意地を張っているツンデレ義妹みたいなシーラが面白い。こんなシーラを見たら可愛がりたくなってしまうというものだ。
「もうっ、アキったら、もっとアタシを敬いなさい!」
「はいはい、ナデナデしてやるから機嫌直せよ」
ナデナデナデ――
「ふへぇ♡ こ、こらぁ! で、でも、抗えない♡ ああぁ♡ アキのナデナデが気持ち良すぎてムリぃ~♡」
「ほらほらほら、よしよしよしよし」
「ああぁ♡ こんなの毎日されてたらバカになっちゃう♡ もうらめぇ♡」
シーラが良い子になったので一件落着だ。
(それにしても、レイティアって……いつもグイグイ来るのに、意外と要求は可愛いんだよな)
てっきり本番的な何かを要求されると思っていたのに、実際にベッドでイチャイチャしてみたらキス止まりだ。
まあ、そのキスが飛び切り甘々で蕩けそうなのだが。
「ふふふっ」
俺の笑顔に気付いたのか、レイティアが口を尖らせた。
「なんだよアキ君、さっきからボクの顔を見てニヤニヤしちゃって」
「だって、レイティアの要求が恋する少女みたいで可愛くてな」
「ああーっ! ボクのことバカにしてるでしょ」
ムキになるレイティアを見たアリアも、威圧感を引っ込めて顔を綻ばせた。
「それよね。レイティアちゃんってオコチャマなのよね。体は大人なのにぃ」
「こ、こら、アリア! 誰がオコチャマだ」
「ほらぁ、可愛いんだからぁ」
「「「ははははは!」」」
真っ赤になったレイティアで、居間に笑い声が響く。
「も、もうっ! 良いだろ、夢だったんだから。好きな人と『あーん』で食べさせ合うのが」
拗ねた顔をしながら乙女な夢を語るレイティアは、やっぱり可愛い。
だが俺には次のご褒美を考えなければならないのだ。
「じゃあ、今夜はシーラの番ということで」
シーラの頭をナデナデしながら俺は言った。
もちろんアリアの反応は予測済みである。
「アキちゃん!」
「アリアお姉さんは、後日にじっくりたっぷりサービスしますから」
きゅぅぅぅぅーん♡
用意しておいた言葉をかけると、アリアの目が輝いた。
「ふへっ♡ ぐふふっ♡ アキちゃんたらぁ♡ 私とじっくりたっぷりしたいのね♡ そんな真剣に考えてくれてたら、私も本気で準備しないとぉ♡ いっぱい赤ちゃんつくろうね♡」
「お、おう……いつの間にかサービス内容が飛躍している気がするけど……」
やっぱりアリアは本気モードだ。でも、彼女が本気なら、俺も本気で答えないと。
真面目にアリアとの将来を考えるつもりだ。
「ふうっ、とりあえず危機は去ったぜ」
アリアのピンク色の圧を静めてホッと一息ついたのも束の間、今度は黒色と白色の圧が威力を増した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「こら、アキよ、わらわとの夜伽はどうなったのじゃ?」
「そうだ、我も子種をもらい受ける手はずであるぞ!」
クロとシロがジト目で俺を見ている。
この二人を忘れていた。彼女たちが昼寝している内にレイティアとイチャコラしているのがバレて、ご立腹竜王になっているのだ。
ここは食べ物で誤魔化すしかないだろう。
「そ、そうだ! 最近新しい料理を開発しましてね」
「「なにっ!」」
やっぱり料理で釣れた。
二人の目の色が変わり、グイグイと俺の方に迫ってくる。
「どんな料理なのじゃ?」
「我は空腹であるぞ」
俺は二人の興味を引くように説明を始める。
「新たに覚えた面料理ですよ。小麦粉を水で捏ねて打って伸ばしたものを茹で、それを様々なスープで食べる料理です。食べると『ラララー』と歌い出しそうに美味しい麺だから『ラーメン』と名付けました」
二人は俺の説明で完全にメシ顔になっている。
「スープは何種類か考えていましてね。先ず醤油ベースの醤油ラーメン、味噌を使った味噌ラーメン、塩ベースで贅沢に
色とりどりなラーメンを想像したのか、二人の顔が緩む。色気より食い気になっているようだ。
「おおおぉ、そなた、早く作るのじゃ! そのラーメンとかいう料理を!」
「もう待ちきれぬぞ! 早く食べたい! やはりアキについてきて正解であったな」
こうして世界の危機は去った。荒ぶる竜王の怒りは、ラーメンによって鎮まったのだ。
「ズルズル――これは美味じゃ! これはたまらぬ! この濃厚で香り高い味噌ラーメンがたまらぬわ!」
「チュルッ! こっちも美味いの! まろやかでコクがある豚骨スープは絶品である!」
最初の構想では四種類だったはずだが、二人がカレー味も作れとしつこく、結局カレーラーメンを加え五種類のラーメンを用意した。
当然ながら、大盛りで五杯全てを食べるクロとシロなのだが。
◆ ◇ ◆
そんな訳で、夕食も無事終わった今、俺とシーラは一緒のベッドに入っている。
たらふくラーメンを食べた竜王たちは、居間でぐっすり眠りに落ちてしまった。ついでにミミも
後のことはアルテナやノワールに任せてきた。
――――はずなのだが。
「おい、何で覗いてるんだよ……」
俺はベッドを覗き込むように顔を近づけているアリアとレイティアに声をかける。
さすがにこの状況は想定していない。
「何でって言われてもぉ」
「アキ君がボクたちの目の前で始めたんだろ」
よくよく考えたら、俺の部屋は皆の寝室を兼ねていた。当然ながら、ベッドでイチャイチャすれば他の二人に見られてしまう。
「し、しまったぁあ! 見られながらイチャコラするとか、どんなマニアックだよ!」
しかし他の嫁が居ない時を狙っても、そうそう時間が作れるはずもない。ここは強行突破しかないだろう。
男ならバカップル一直線だ。
「よし、やるぞシーラ!」
「えっ、ええっ!」
「もうやるしかない! 思い切りラブラブするぞ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 見られてる! 見られてるからぁ!」
俺はシーラに腕枕をし、彼女の頭を撫でながらお腹をポンポンする。
「あうっ♡ コラぁ! 見られながらなんて、恥ずかしいぃいいっ♡」
「ほら、好きだぞシーラ、ちゅ」
ナデナデポンポンしながらキスをすると、一気にシーラの体が弛緩しフニャフニャになった。
「んぐうっ♡ も、もう好きにしなさいよぉおお! こんなの気持ち良すぎて耐えられないしぃいいっ♡ アキのこと大好きすぎて何でも許しちゃうんだからぁああ♡」
途中まで近くでガン見していたアリアとレイティアだったが、途中からズゥゥーンっと肩を落として戻っていった。どうやら自分のベッドでふて寝したようだ。
「ほらほら、もっとサービスするからな、シーラ」
「ひぐぅううっ♡ あ、あんた……意外と容赦ないわね」
「もっともっとか、まったくシーラは欲しがりだな」
「こ、こらぁあああ! ああっ♡ もうしゅきぃ♡ アキだいしゅきぃ♡」
「俺も大好きだぞ」
「ああぁん♡ こんなのやってたらバカになっちゃうぅぅっ♡」
※注意:ナデナデポンポンしているだけです。
もう恥も外聞もなくイチャイチャしまくり、後から後から愛されている実感と幸せな気持ちが溢れてくる。
ズキュゥゥゥゥーン!
そこで、予想通りスキル覚醒だ。
『スキル【専業主夫】に嫁属性【エルフ族の加護Ⅳ】が追加されました。ステータス上昇。新たに魔法が追加されます』
【自動展開魔法・幸運の女神(エルフ族)】
【幸せの魔法・ずっとイチャコラ】
【幸せの魔法・添い寝上級者】
【羞恥プレイ】
ステータスが書き換えられ、アビリティとパラメーターは……上昇しなかったが、ドキドキな気持ちで胸がいっぱいになった。
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