第104話 怒りのコンビネーションブロー
体が燃えるように熱い。まるで体の芯から力が溢れるように。
「ぐああああああっ! 俺は……負けない! 約束したんだ、ずっと一緒だって! 俺が守るって! 俺は、俺は誰も手放したりしない! 彼女たちを誰にも渡さないぞ!」
力が溢れてくる。爆発しそうなほどに。
「皆一緒に帰るんだ! そうだ、誰一人欠けることなく。レイティアとアリアとシーラと、ついでにジールも。ノワールとミミが待つ家に。そしてシロとクロとアルテナにもカツカレーを御馳走しないと!」
爆発的に魔力が上昇する俺に、ザベルマモンが戸惑った顔をする。
「えっ! あらっ! ど、どうなってますの!? 凄い魔力を感じますわよ。あ、貴方はいったい何者なんですの!?」
何者かだって? 俺はスキル専業主夫の
(何だこれは! 俺の中に
『わらわからの褒美じゃ。受け取るが良い――』
『これで我の因子も組み入れた。さて、どうなるか――』
ふいにクロとシロの言葉を思い出す。確かあの時、俺のスキル専業主夫に干渉するようなことを言っていたはず。
『これでわらわもアキの嫁じゃ。まあ、今夜は添い寝だけで許してやろう』
『ふふふっ、
夢だと思いたかったが、どうやら現実だったようだ。添い寝されたり抱きしめられた記憶が甦る。
(そうだ! 直接は戦えないが、助力すると言っていたのはコレか! 面白そうとか暇だからで嫁属性を植え付けるなぁああああ!)
ズキュゥゥゥゥーン!
俺は絶対浮気しないと宣言したいのに、体の中では勝手にスキルがレベルアップする。
『スキル【専業主夫】に嫁属性【黒竜王の加護】が追加されました。ステータス上昇。新たに魔法が追加されます』
【付与魔法・
【付与魔法・対神聖特効】
【限定魔法・竜王権限借用(黒)】
【超越魔法・
【毎日が新婚さん】
『スキル【専業主夫】に嫁属性【白竜王の加護】が追加されました。ステータス上昇。新たに魔法が追加されます』
【付与魔法・
【付与魔法・対魔族特効】
【限定魔法・竜王権限借用(白)】
【超越魔法・
【ラブラブにゃんにゃん】
ステータスが書き換えられ、アビリティとパラメーターが軒並み上昇する。もうオヤクソクだが、信じられないほど驚異的な数値に。
ついでにラブラブなスキルは無視しようとしたが、ちょっと可愛いので使ってみたい気もする。
「黒竜王と白竜王……やっぱり……。えっと……魔王に続き竜王まで……。最近やらかしまくってる気がするけど……でも、俺は大好きな
力が漲っている。特級魔法のデメリットを遥に上回るステータス上昇だ。疲れと傷みで体は悲鳴を上げているのに、俺の心は熱く燃え上がっている。
「
致命傷だった傷口を塞ぎ、力強く大地を踏みしめ胸を張る。ここからが俺のターンだ。
【付与魔法・対魔族特効】
魔族特効を付与し、俺の攻撃が全て魔族に特効攻撃となった。
「ザベルマモン! 今からお前を倒して言うこと聞かせてやるからな! 分かったか!」
「んひぃいいっ♡ すぅ、すてきぃ♡」
何だかザベルマモンの様子がおかしい。瞳がハートマークになっている気がする。たぶん気のせいだ。ここはスルーに限る。
「うほっ♡ わわ、わたくしの渾身の一撃を受けて倒れない男ですって! ここ、こんなの成婚するしかないですわよね♡」
シュパッ――――ズドォォォォーン!
「あっはぁああぁん♡」
まだ何か言っているザベルマモンに、容赦のない顔面パンチをくらわせる。もちろん
「ぶひゃぶぉ♡ 重く強い一撃ぃ♡」
今度は効いたようだ。ザベルマモンがぐらついた。
「まだまだぁああああ! これが俺の嫁を守る黄金のコンビネーションブローだぁああああ!」
ダンッ! ダダンッ! ズドンッ! ズドドドッ! ズバッ! ズダダダダッ!
「がはァ♡ ぶッ♡ おごォ♡ おほっ♡」
ズドドドドドン!
「おっ♡ おほッ♡ んひいいっ♡」
ズダダダダダダダ!
「ごばァ♡ ぐひゃ♡ んほぉおおおお♡」
俺のパンチがザベルマモンの防御を突き破る。覚醒前には驚異的な数値の物理魔法防御を突破できなかったのに、今は俺の対魔族特効防御無効貫通攻撃が通っている。
グチャ! ズドドドン! ビュバッ! ズバッ!
瞬時に再生する彼女の治癒能力を上回る勢いで連打を叩き込む。顔面に、腹に、
「ああぁん♡ こんな強い男は初めてですわぁぁん♡」
グワンッ!
ザベルマモンが空を切り裂く強烈な右フックを放った。俺はそれに合わせるようクロスカウンターを叩き込む。
「甘いっ!」
スパァァーン!
「ぶひょぉおおっ♡」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
まだまだ俺のターンだ!
「お前らが戦争をしたがると街で暮らしている魔族が迷惑するのが分からないのか! 確かに魔族を差別する奴は最低だ! でもな、お前たちが余計なことをして、アリアたち魔族がどれだけ迷惑してるか分かってるのかぁああああ! ノワールのような少女がどんな思いをしているのか分かってるのかぁああ! そんなに戦いたいのなら武闘大会でも開いて、そこで思う存分戦ってろ!!」
ズゴォオオオオーン!
「ぐっはぁああああぁーん♡♡」
確実に
もうザベルマモンの気力が限界なのか、されるがままで殴られ続けフラフラだ。
バタッ!
「あっ♡ ああぁん♡ こ、このわたくしをタコ殴りにする男が存在しただなんてぇ♡ か、完敗ですわぁあ♡」
膝をつき四つん這いになったザベルマモンだが、こんなものでは俺は止まらない。そう、俺は
「
今度は
これで彼女のデカい尻をお仕置きしてやる。
「俺の大切な嫁を他の男と結婚させるとか言ってたよな?」
「おおほっ、そ、それは……」
「俺が一番許せないのはな……大切な
「ええええっ! ご、誤解ですわぁ!」
何を血迷ったのか、俺は彼女のケツを高く上げさせた。衆人環視の中、皆にデカいケツを向けるように。
グイッ!
「くらえ、怒りのケツコンビネーションブローだっ!」
「えっ、ええっ! なな、何をしますの!?」
「問答無用!」
渾身の鞭打が『ビュンッ!』と風切り音をたてザベルマモンのケツに振り下ろされる。
ペチーン! ペチーン! ペチーン!
「あああぁーん♡ 許してくださいましぃー!」
「どうだ、反省したか!」
「ぎゃああああ! 痛いですわぁああ!」
「反省しないとケツが二つに割れるぞ!」
「元から二つですわぁあああぁん!」
ペチーン! ペチーン! ペチーン!
突拍子もない俺の行動に、後ろで大将軍の戦いを見守っていた魔王軍暗黒騎士の面々も唖然としている。
「えっ、ええっ! あの最強のザベルマモン様が?」
「ま、まさか、大将軍が敵の男にお尻ペンペンだとぉ!」
「デカい……ザベルマモン様のデカいケツを……」
「ああ、鬼の大将軍が屈辱の羞恥責めとは……」
「いつも威厳あるザベルマモン様が……何だかドキドキするぜ」
部下全員に見られながらのケツスパンキングに、ザベルマモンの羞恥心が崩壊した。
「うっぎゃぁああああ! 部下の前ではヤメテくださいましぃいいいい! 見られてますわ! 全部見られてますわぁ! 恥ずかしいですわぁ! こ、こんな屈辱ぅ♡ 部下に見られながら敵の男に尻をぶたれるだなんてぇ♡ うわぁああああぁん♡」
限界を超えた羞恥心と背徳感で、ザベルマモンは失神してしまう。
「あ、あれ?」
「おぉおおおおぉおぉぉ……」
ふとケツを叩きながら我に返った時は遅かった。俺がとんでもない『やらかし』をしたことに。
敵も味方も茫然とする中で、ケツを叩く良い音だけが響いていた。
ペチィィーン!
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