溺愛系お姉ちゃんヒロインは寝かせてくれない! ハズレスキルでS級パーティーを追放された俺、美少女に拾われたらスキル覚醒しました。加護爆盛りで無双しながら甘々で幸せに暮らします。
第86話 側役を欲しがる竜王と依存体質の魔王
第86話 側役を欲しがる竜王と依存体質の魔王
今日も小鳥のさえずりと共に目が覚める。
チュンチュンチュン――
だが、朝チュン展開のようで朝チュンではない。狭いテントの中で、三人の嫁属性お姉さんたちからお仕置きされただけである。
「くぅううっ、き、キツい……。女子って皆こんな感じなのか? 好意を向けられるのは嬉しいけど、さすがに朝方までエッチな締め技くらったり、密着されたり、くすぐられるのはどうなんだ? 付き合ったことがないから分からないけど……」
世のカップルというのは皆同じなのだろうか。聞いた話では、デートしたり手をつないだり、そして愛を確かめ合い……。
だが、締め技をしたり足や尻で踏まれるというのは聞いたことが無い。
「うん、きっと世の男たちは皆、彼女から絞め技くらったり踏まれたりしてるんだな。付き合うって大変だぜ……」
ずっと誤解しないようにと自分に言い聞かせてきたが、ここまで来たら誤解じゃないと思っても良いのではないか。
だって締め技くらったり踏まれているのだから。
「や、やっぱり、皆は俺のことを……す、好き……。っ、ああああああっ! 甘酸っぱい! おおお、俺はどうしちゃったんだぁああ!」
スヤスヤと気持ち良さそうな寝顔の三人を見ながら頭を抱える。今までずっと非モテだったのに、いきなり三人の嫁候補ができてしまったのだから。
「おい、貴様ぁ! その皆の中に私が入っていないではないか! 夜も私には指一本触れずじまいであったからな! くぅううううっ!」
背中からジールの声が聞こえる。そういえば同じテントだった。
「はあぁ、やっぱり求婚はマジなのか? 一度に三人も」
「こらっ! 私を無視するでない!」
「しかし……好意は嬉しいけど、一歩間違うと【嫁属性の呪い】に……」
「ききき、貴様ぁああ! わざとだな!」
グイグイグイ!
ジールをスルーしていたら後ろから抱きついてきた。
「お、おい、やめろ。柔らかいのを押し付けられると変な気持ちになっちゃうだろ」
「ほ、ほう、私に抱き付かれてその気になるのだな。よ、よし、交尾だ」
「おい、女子が『交尾』とか言うんじゃない」
俺はジールの腕を解きテントを出た。アリアに見つかったら恐ろしいことになるからだ。
(くぅ、や、柔らかかった。男勝りで筋肉質で気が強いジールだけど、正直なところけっこう可愛いところもあるんだよな。だがしかし、俺には三人の嫁候補がいる。これ以上増やす訳にはいかないのだ)
後ろでガルガル唸っているジールを残し、俺は朝食の準備を始めた。
◆ ◇ ◆
「ちょっとアキっ! このお豆、腐ってるわよ!」
ネバネバと糸を引く豆を見たシーラが叫んでいる。確かに見た目も臭いも腐っているようにしか見えない。
「ちょっと新しい料理に挑戦してみたんだ。スキル【専業主夫】の料理に発酵食品が追加されてたからね。それは煮豆を発酵させた健康食品だよ。これなら健康志向の人も納得しそうだから『ナットウ』と名付けたぞ」
まだ疑心暗鬼の皆に食べ方を伝授する。
「ほら、刻んだネギを乗せ醤油かけて混ぜると」
「あっ、ホントだ。意外とイケるわね」
「だろ」
一口食べたシーラが目を見開く。最初は見た目と臭いで敬遠していたようだが、食べてみれば箸が進むようだ。
「はわぁぁ……っ、昨夜はよく寝たのじゃ。わらわが起きる前に朝食を準備しておくとは殊勝な心がけじゃな」
ビクッ!
クロがテントから出て来ると、シーラが俺の背中にしがみ付いた。
「ああ、アキ、大丈夫なの? クロは? 夜はお仕置きしたくて忘れてたけど」
シーラよ、お仕置きしたくて忘れるのはどうなんだ?
「大丈夫……だと思う。敵意は無いようだし」
「た、確かに魔力は消してるわね……」
目の前のクロは昨日とは違い大人しくしている。俺たちがゲリュオンのスパイだというのを忘れたかのように。
「うえっ、この豆は腐っておるぞ。人族は、このネバネバと糸引く豆を食うのかえ?」
クロがナットウを箸で掻き混ぜながら眉をひそめる。
「それは発酵食品ですよ。こうして醤油をかけて……」
「もぐもぐ……。ふむ、これは意外と……」
「ミソシルもどうぞ」
「ごくっ、こっちは体が温まるの」
大人しく朝食を食べているかと思ったクロだが、突然グイっと俺の方に体を寄せてきた。
「ほほほ、そなた気に入ったぞ。やはり、わらわの下僕にならぬか?」
「えっ、あの、それは……」
「なに、ゲリュオンのスパイなのは気にするでない。わらわは寛大であるからな」
「そうじゃなくて……」
寛大とか言いながら昨日はブッコロしそうな勢いだったのだが。
「ふむ、下僕が不満ならば
側役というのはそんな役だったかと疑問に思っている隙に、クロの話がどんどん進んでしまう。
「そうじゃそうじゃ、あのスキルを使うのじゃ。わらわを発情期に目覚めさせた技じゃ。数百年ぶりかの。あのような高揚感は。うむ、そなたは一生わらわと寝所を共にするのじゃ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
分ってはいるのだがもう止められない。案の定、レイティアとアリアの嫉妬が爆発した。
「こらぁ! アキ君はボクの婚約者なんだぞっ! 例え相手が誰であろうと渡さないよ!」
「そうよ、アキちゃんは私の婚約者なの! ふざけたこと言ってると殺すわよ!」
せっかく穏便に済みそうな雰囲気だったのが、一瞬でぶち壊された。一体誰のせいなのだ。
「あちゃぁ……台無しだぜ」
「こあぁ! アキぃ、止めなさいよ! ヤバいわよ!」
俺の背中にしがみ付いているシーラの腕に力が入る。
「わわわ、分かってるって! 首を絞めるなシーラ! クロさん、ここは穏便に」
「ほう、面白いの。婚約者が二人もおるのか。ならば良かろう二人が三人に増えようとも」
「良い訳ないから! 婚約者が何人も居てたまるか! って、ここに居たぁああ!」
自分で自分にツッコんでしまった。
「あ、アタシも婚約者なんだからね! 忘れるんじゃないわよ! ひ、ひぃぃっ!」
一瞬だけシーラが背中から現れ婚約者を主張するも、クロの顔を見て再び引っ込んだ。
「うむ、ついでに言っておこう。私は婚約者ではなく側室だがな。そこを忘れるでないぞ」
ジールが腕組みして一人で納得しているが、皆に聞こえていないのかスルーされた。
それより今はクロの対処だ。
「とにかく落ち着いてください」
俺はレイティアとアリアを守るように、クロと二人の間に入って引き離した。
「俺には大切な人が居ますから側役は無理です」
「良いではないか良いではないか。嫌よ嫌よも何とやらじゃ」
「わわあぁあっ! 服の中に手を入れるなぁ!」
「
(マズい! このままでは大変なことに)
「アキちゃん! アキちゃん! やだぁああああああぁ! アキちゃんを盗られるくらいなら、この女を殺して私も死ぬぅうううううう! アキちゃん♡ アキちゃん♡ アキちゃん♡」
アリアのヤンデレが暴走した。
「お、落ち着いて! アリアお姉さん!」
「うわぁああああぁん! アキちゃん! アキちゃん! アキちゃん!」
「ほ、ほら、ナデナデしますから」
「ぐひゅ♡ あっ♡ アキちゃんを感じるぅ♡ アキちゃん、私から離れたら
「やっぱり怖っ!」
アリアの目がマジだ。前から冗談が冗談じゃない気がしていたのだが。やはり新魔王はアリアな気がする。
そして、俺がアリアに捕まっている頃、クロも慌てた様子のアルテナに止められていた。
「クロ様、ままま、マズいですよ。これ以上トラブルを起こしたら」
「なんじゃアルテナよ。そなたも男をつくれば良かろう」
「お、おおお、男ぉ!」
アルテナの方は一目で男に免疫が無いのが分る。どうみても陰キャっぽい喪女なのだから。
「男は押して押して押しまくるのじゃ。女ならば力づくで欲しい男を手に入れよ」
「ちち、違います!」
終始オドオドしていたアルテナだが、何故か男を手に入れるところだけ反論する。
「い、いいですか、クロ様。恋愛は押すだけじゃダメなんです。時には引くことも、時には焦らすことも、駆け引きというのがあるのですよ。と……このBL小説に書いてあります」
BLについて熱く語っているアルテナの鼻息が荒い。ふんすっとばかりに。
「そ、そうなのかえ? わらわは最近の恋愛事情を知らぬゆえ。最近のナウなヤングはイケイケゴーゴーではないのじゃな。わらわもナウい流行りを取り入れチョベリグなアベックにならねばの」
アルテナの話でクロが納得したようだ。ちょっと死語が多い気がするが。
「助かったよ。アルテナ」
俺はドロデレ状態のアリアを落ち着かせると、小さいけど最大の功労者アルテナに礼を言う。
「い、いえ、わわ、私も平和主義者なので……なんちって」
「そうなんだ。気が合うな。俺もだよ」
やはりアルテナとは分かり合える気がする。
「ふひっ、ふひひっ……やっぱりこの男の家に住みつこうかな。決めた、私は働かない。だって勤勉な魔王は世界の敵だから。ずっと部屋の中で平和に暮らすんだ……ぶつぶつぶつ」
(うんうん、やはり魔族とも分かり合えるんだよな。良かった、アルテナが良い子で。よし、このまま調査を続けて皆で無事に帰還するぞ)
アルテナがぶつぶつ何か言っている気がするが、風の音がしてよく聞こえない。
まあ、何も問題無いだろう。俺は全てスルーした。
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