第60話 二人っきりの温泉と恋人のキス
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ――
心臓の音がうるさい。レイティアに聞かれてしまうのではと心配するくらいに。
「レイティア、そ、その、見えそうだから……」
ガバッ!
レイティアが一気に距離を詰めてきた。
俺はタオルを直すように言おうとしただけなのに。
「あ、あの……」
「アキ君っ、そ、そそ、その……」
「レイティア?」
「す、す、すぅ……すき、スキヤキ……じゃなくてぇ! あああぁ! ボクはダメだぁ!」
レイティアが挙動不審なのはいつも通りだが、今は俺も挙動不審だ。もう、この両手で思い切りレイティアを抱きしめたい。
「レイティア、あの――」
「そうだ、思い出したぞっ!」
「えっ?」
「アリアには愛の告白しながら見つめ合ってキスしたんだよね!?」
「ギクッ!」
ここでそれを持ち出すのか。
「だからあれは――」
「アキ君っ! ボクにも同じのしてもらうよっ」
「えええっ!」
「だ、だって、アリアだけズルい♡」
(マズいマズいマズいマズいマズい! ここで告白しながらキスなんかしたら、俺がレイティアを好きなのがバレてしまう。もう動揺を隠せないぞ。どうしたら良いんだぁ!)
「ほ、ほらぁ♡ アキ君っ」
「で、でも……」
「ボクも欲しい……。アキ君がくれたら頑張れる気がするから」
(レイティア……そ、そうだよな。あんな酷いことを言われて落ち込んでいるんだ。俺が支えないと。たとえレイティアの好きが俺の好きと違ったとしても……)
「分かった。俺に任せてくれ」
「ふぁああぁ♡ アキ君♡」
「い、行くぞ」
「う、うんっ」
プルプルプルプルプル――
ギュッと目を閉じたレイティアが震えている。
(いつもはぶっきらぼうで距離感がバグってるけど、本当は誰よりも純情な女の子なんだよな。そんなレイティアを、俺は……)
「レイティア……いつも元気で一生懸命で、辛くても笑顔で頑張るレイティア……。でも、辛かったら俺を頼ってくれ。俺はレイティアの支えになりたい。俺は……レイティアが大好きだ」
「ふぇぇぇぇ~っ♡ あ、ああ、アキ君っ?」
レイティアが目をパチクリさせながらアワアワしている。
「ぼぼぼ、ボクもアキ君が好き! 大好きだぁ! アキ君はいつもボクを支えてくれてるよ。いつもボクを助けてくれる。いつもありがとう。アキ君っ、大好き♡」
ギュッ!
レイティアが抱きつき二人の距離がゼロになった。
「レイティア……」
「アキ君っ♡」
自然と二人の顔が近付き、くちびるとくちびるが触れ合う。
「んっ♡ ちゅっ♡ んぁ♡ アキ君……」
「ん……レイティア……」
ズキュゥゥゥゥーン!
『スキル【専業主夫】に嫁属性【竜族の加護Ⅲ】が追加されました。ステータス上昇。新たに魔法が追加されます』
【付与魔法・攻撃力上昇極大】
【付与魔法・素早さ上昇極大】
【付与魔法・クリティカル確定】
【付与魔法・防御無効貫通攻撃】
【特級魔法・竜族の叡智・
【
レイティアとキスをしたまま覚醒した。ここで三段階覚醒だ。またしても信じられないような力が発現する。
ステータスが書き換えられ、アビリティとパラメーターが恐ろしいくらいに上昇しているが、今はそれどころではない。
「あっ♡ 恥ずかしいっ♡ ううっ♡」
レイティアの顔が真っ赤だ。
「あ、あの、レイティア……」
「うううぅ♡ 恥ずかしくてアキ君の顔が見れないよぉ」
「いつもグイグイ来てるだろ」
「はわわぁ♡ もうダメぇ♡」
急に我に返ったのか、レイティアがオロオロし始めた。
「お、お風呂場で抱き合ってキスとか、ああ、アキ君のえっちぃいいいいっ♡ きょ、今日はここまでぇ! 終わりっ!」
「ええええ……」
「おお、お外走ってくる。火照った頭とムラムラした体を冷まさないと」
ズダダダダダダダダ!
レイティアは走って出て行ってしまった。エッチなようでいて肝心なところで純情なのだろう。
ただ、走って欲求不満が解消されるかは不明だ。
「は、はははっ……これは、助かったのか? あのまま続けてたら、きっと俺は最後までレイティアを欲しがっていたかもしれない」
一人残された俺は、温泉につかりながら空を見つめる。
「俺は……どうすれば良いんだ。パーティーメンバーなのに、俺はレイティアを……。レイティアだけじゃない。アリアもシーラも……。あああ、ドロドロなパーティー内恋愛事件に発展しそうだぁああああ!」
この後どういう顔してレイティアに会えば良いのか頭を抱えながら、俺は温泉に浸かるのだった。
◆ ◇ ◆
部屋に戻ると、すでに皆が揃って寝る準備をしているところだった。寝ると言っても、誰が俺と添い寝するかという見えない攻防が行われているようなのだが。
「はうっ♡ アキ君っ♡」
俺の顔を見たレイティアが分り易い反応をした。それでは俺と何かあったとバレバレだ。
「何か怪しいわね」
シーラが反応する。
「怪しくないから。なっ、レイティア?」
「はぁああぁ~ん♡ 恥ずかしいよぉ♡」
「おい、その反応は……」
さり気なくレイティアに声をかけてみたが、完全に逆効果だった。余計に怪しくなってしまう。
「アキちゃん? やっぱりレイティアちゃんと……」
アリアの威圧感とヤンデレ感が増す。
「や、やってませんから。キスだけです」
「ふーん、キスだけなんだぁ?」
「は、はい……」
「じゃあじゃあ、今夜は私と添い寝してくれるよね?」
アリアの目が怖い。微笑みを浮かべているのに、やっぱりヤンデレ感が凄いのだ。
「わ、分かりました――」
「ダメッ!」
ギュッ!
レイティアが抱きついてきた。
「アキ君はボクと添い寝するの……」
「えっと、レイティア?」
「もうずっと添い寝なの! 毎日添い寝してもらうから」
「ええええっ!」
ギュッ!
やっぱりアリアも抱きついてきた。
「アキちゃんっ♡ 私と添い寝でしょ? 断ったらお仕置きね♡」
「ちょ、ちょっと待って」
「待てないでーす♡ 毎日添い寝でーす♡」
「こ、これ、どうすんだ!?」
俺は二人に挟まれたままベッドに引きずり込まれた。完全にサンドイッチ状態だ。
「ほらぁ、アキちゃん♡ キスぅ♡ ちゅっ♡」
「んっ…………」
「アキ君っ! アリアばかりズルいぞ。ボクにも♡ んっ♡」
「うぐぅ…………」
「アキちゃん♡ もっとキス欲しいなっ♡ ちゅ♡」
「ちょ…………」
「アキ君っ! ボクもキスだよっ♡ ちゅっ♡」
「待て待て待てぇええぇい! これエンドレスか?」
両側から交互にキスの要求だ。ガバッと強引に顔の向きを変えさせられ終わりが無い。
「シーラ、この二人を何とかしてくれ!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ――」
シーラの方を向くと、彼女は殺気を込めた顔で俺を睨んでいた。
「ひいっ! 消される!?」
「こらぁアキっ! いい加減にしないと怒るわよ!」
シーラの怒りを受けながら、天国で地獄のようなキスの嵐は続く。
――――――――――――――――
距離感がバグってるお姉ちゃんとヤンデレっぽいお姉さんを何度も刺激してきたからしょうがない。黙ってイチャイチャされるしかないですよね。
でも、シーラがキレそうな気が……。
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