第21話 温泉旅館は同室で
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
旅館に入ると
アドミナに到着した俺たちは、ギルドが手配した温泉旅館に向かった。ここに三泊四日で宿泊する予定なのだ。
「わあっ、良い旅館じゃない。何かこう趣があるわね」
歴史を感じさせる老舗旅館に喜ぶシーラだ。ただ、旅館よりシーラの方が歳が行っていそうだが黙っておく。
例え見た目がロリでも、女性に年齢のことを言うのはマズいだろう。
「
当然、俺は
「あ、あの、男女別ではないのですか?」
「ギルドからは同室でと仰せつかっております」
「でも、若い男女が同室はマズいですよ」
「まあまあ、三人の妻をお連れだなんてお盛んですこと」
意味深な笑顔を浮かべた女将が続ける。
「このお部屋は家族風呂が付いております。源泉かけ流しの温泉で、お肌もツルツル、健康促進、性欲増進、少子化解消でございますわよ。ごゆっくりぃ~」
口に手を当てニヤニヤした
「お、おい、待て! 男女同室で家族風呂付とかおかしいだろ! これ完全に狙ってるだろ!」
俺が文句を言っても無慈悲に扉は閉められ、その部屋には欲求不満そうな
「よし、もう一部屋借りようか」
ガシッ!
部屋を出ようとした俺をアリアが止める。
「アキちゃん♡ せっかくだから一緒で良いわよ。ほら、もう一部屋借りたらお金かかっちゃうでしょ」
「し、しかし……」
「大丈夫っ♡ お姉さんに任せて♡ 優しくするからぁ♡」
完全にアリアの目が蕩けている。これは危険なやつだ。
ガシッ!
レイティアまで俺の肩を掴む。
「アキ君、そ、その、初めては緊張するけどボクに任せてくれたまえ」
「おい、何の初めてだ」
「う、ううっ♡ だ、ダメだ、緊張するぅ♡ 上手くできなかったらどうしよう」
完全にレイティアの目が泳いでいる。これは危険なやつだ。
げしっ! げしっ!
シーラが俺の脚を蹴り出した。
「アキ! あんた、アタシがいる限りエッチなことはさせないんだからね!」
「シーラは天使かぁああ!」
「な、何よ、その反応……。もうっ、しょうがないわね」
シーラだけはまともだ。もう彼女だけが救いかもしれない。しかし、魅惑的なアリアやレイティアに、いつまで我慢できるのやら。
(待て待て待て! ここで欲望に負けてエッチなことをしちゃったら、女性問題で後々パーティー崩壊の危機になるぞ。我慢だ俺! くっ、でも誘惑に負けそうで怖い……)
魅力的な仲間の色気にグラっときそうなのを耐えながら、俺は夕食の時間を待った。
◆ ◇ ◆
テーブルの上に並べられた料理は港町アドミナだけあって魚料理がメインだ。
大皿に乗ったのが魚の塩焼き。その横には煮つけだ。更には
「これは豪華だな。ちょうど魚料理もスキルに取り込みたかったから良かったよ」
料理を食べながら調理法を考えているが、挙動不審になっている二人は上の空のようだ。
「ぐへへぇ♡ アキちゃんとお風呂ぉ♡」
「どどど、どうしよう、混浴なんて聞いてないよぉ♡」
アリアとレイティアがおかしい。まあ、いつもおかしいのだが。
食事も終わり落ち着いたところで念願の温泉タイムになる。皆のテンションも爆上がりだ。
「温泉♡ 温泉♡ アキ君、先に入ってくれたまえ」
一番風呂を俺に譲るレイティアが怪しい。
「こういうのは女性が先だろ。レイティアが入りなよ」
「いいからいいから。ほらほら」
「お、おい……」
レイティアに押されて部屋の奥にある家族風呂に連れて行かれる。
「そうよぉ、アキちゃんが先で良いのよ。日頃頑張ってくれてるのだからぁ」
アリアまで俺を押す。
明らかに怪しい。
「わ、分かったから。先に入るよ。すぐ出るから、後からゆっくり浸かってくれ」
変だとは思いながらも、旅の疲れを癒すのを優先したくて浴室に入った。
カポォォォォーン!
(まさかレイティアとアリアがエッチな娘でも、男の入っている風呂に突撃したりはしないよな。そんなはしたないことは……)
その俺の予想は覆された。
ガラガラガラッ!
「アキ君っ! い、いい、一緒に入ろうか」
俺が服を脱いだタイミングでレイティアが入ってきた。しかも裸にタオルを巻いた姿で。
「お、おい、何やってんだ! エッチか!」
「え、エッチじゃないぞ! ふ、普通くらいかな……」
レイティアは普通と言うが、普通の女子は男風呂に突撃したりはしない。
「アキちゃぁ~ん♡ 私も一緒に入るわね♡」
レイティアだけでも大変なのに、更にアリアまで入ってきた。シーラが必死に止めようとしているが、その小さな体では彼女を止められないようだ。
「アキ、もうアタシじゃ無理だから! あんたが何とかしなさいよね!」
シーラが諦めて手を離してしまう。もう
(くっ! どうする俺! 身体能力が優れたレイティアと魅了や催淫してくるアリアを止めることは可能なのか?)
ふと俺は思い出した。最近のスキル進化に伴い、大幅にステータスが上昇していることに。
「そうだ! 加護が付きまくって強くなり、各種支援魔法も使える今の俺なら勝てるかもしれないぞ!」
スチャッ! ズザァァーツ!
二人と距離をとってから自分に支援魔法をかける体勢に入る。
「うぉおおおお! スキル【付与魔法・肉体強化】【付与魔法・攻撃力上昇】【付与魔法・素早さ上昇】」
シュワァァァァァァ!
俺の各パラメーターが急上昇する。
「よし! 今ならレイティアに勝てるぞ」
グイッ!
「きゃっ」
レイティアの腕を掴んで捻じり上げる。彼女は意外と簡単に無力化され、可愛い声を上げた。
「どうだレイティア。まだやる気か?」
「んぁ♡ や、やっぱり強引だよぉ♡」
「えっ?」
レイティアの体に巻いていたタオルがハラリと落ち、彼女のムチムチパツパツの肢体が露わになる。健康的で瑞々しく艶やかな肌だ。
俺は思わず横を向く。
「い、いかん、見ちゃダメだ」
「ああぁああぁん♡ アキ君のばかぁ♡」
真っ赤な顔になったレイティアが浴室を出て行った。普段はグイグイ来るのに、実は純情なのかもしれない。
俺は残ったアリアと向かい合う。
「アリア……」
「えっ、えっ? アキちゃんって実は強いのね」
驚いているアリアの腕を掴みに行く。魔法職の彼女ならレイティアより力が弱いはずだ。
「アリアお姉さん、こういうのは恋人同士になってからですよって――うわぁっ!」
ダァアアアアアアーン!
アリアに向かう途中で足が滑った。慌てて手を突くが、まさかの壁ドン体勢になってしまう。
ついでにアリアの体に巻いてあるタオルがハラリと落ち、グラマラスでマシュマロのような魅惑のボディが露わになる。
「あ、あの、アリアお姉さん、これは……」
「あふぁぁ♡ 積極的なアキちゃん好きぃ♡」
「大丈夫ですか?」
「もうダメかもぉ♡ お姉さん完全に堕とされちゃったよぉ♡」
アリアまでおかしくなってしまった。これもサキュバスの禁断症状だろうか。
「いやぁああああぁん♡ アキちゃんしゅきぃ~っ♡」
真っ赤な顔になったアリアが浴室を出て行った。普段は積極的なのに、実はシャイなのかもしれない
「ええええ…………。何だったんだ? おおお、落ち着け俺!」
湧き上がる興奮を抑え、俺は温泉に浸かった。この後、部屋で顔を合わせるのに気まず過ぎるだろと頭を抱えながら。
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