第20話 まさかの水着回
クエスト報酬に加え報奨金まで得て、俺たちのパーティー
「という訳で、また討伐クエストをやろう」
俺がそう提案すると、あからさまに不満な顔をするお姉さんたち。報奨金でバカンスにでも行きたいらしい。
「ぶぅぶぅ、アキ君と南の海にでも遊びに行きたいぞぉ」
さっきからレイティアが絡んでくる。ナチュラルに俺の腕に抱きついているのだが。添い寝してからは、更に距離が近くなった気がする。
「ねえっ、やっぱりアキちゃんってレイティアちゃんと仲良いよね? 添い寝してたもんね。キスしたの? 寝たの? あやしい……」
アリアの嫉妬も更に激しくなってしまった。普段は優しいお姉さんなのに、こうなった時の彼女は凄く怖い。
「レイティアお姉ちゃんは離れようね。それ距離感バグってるから。アリアお姉さんは落ち着きましょう。何も無いですから」
いつものように二人から距離を取る。これ以上の密着は危険だ。
「それに仕方がないんですよ。報酬はたっぷりあったけど、借金を返済して家賃の滞納分を払ったら残りが少ないのだから」
そう、意外と借金が多かったのだ。
「俺がいなかったらこのパーティー本当に破綻してたかも……」
つい本音を漏らしてしまう。
「アキ君、頼りにしてるよ。家計は任せた」
「私はアキちゃんとなら生活苦も耐えられそうよぉ」
俺のつぶやきにも二人は呑気なもんだ。
ただ、シーラだけ分かってくれているようだが。
「アキ! このパーティーの生命線はあんたに懸かってるのよ。ホント頼むわよ。家賃滞納で追い出されるなんて嫌だからね」
そんなこんなで俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
◆ ◇ ◆
あの捜索クエストから俺たち
以前はヤバい女たちの巣窟と噂されていたのに、今では気さくに声を掛けられたりもする。冒険者仲間を救助した功績と言っても良いだろう。
「よお、A級昇格おめでとう」
「ジャイアントトロルを討伐したんだってな、凄いじゃねーか」
「俺たちに何か遭った時も捜索を頼むぜ」
ギルドに入ると冒険者仲間から次々と話しかけられた。同時に、レイティアたちの魅力的な肢体にも好奇の目を向けられてしまう。
(あの男、レイティアの生足やアリアの胸をジロジロみてる。あっ、あっちはシーラの薄い胸を見つめてるぞ。俺が守らないと)
彼らと会話しながらも、さり気なく彼女たちを隠すように間に入った。俺の仲間を他の男からエロい目で見られたくないのだ。
「何か良いクエストはないかな?」
掲示板でクエストを探していると、レイティアが俺の肩に顔を乗せてきた。
「ボクはアキ君と南の海でバカンスみたいなクエストが良いな」
「まだ言ってるよ。そんな都合の良いクエストなんか無いって」
「何だよぉ、せっかくボクの水着姿を見てもらおうと思ってたのにぃ」
レイティアの水着姿と聞いて、俺の中で妄想が膨らむ。セクシーダイナマイトな感じに。
(くっ! レイティアの水着姿だとっ! ぱつぱつムチムチで色々なところがはエチエチな感じで……。ああ、彼女とイケナイコトしている妄想ばかりが浮かんでしまう。いかんいかん、脳内でセクハラとかダメだろ)
「アキちゃぁーん、何を考えているのかなぁ?」
「ギクッ!」
俺の妄想を見透かしたかのように、アリアが笑顔で迫ってきた。笑顔なのに目が笑っていない。むしろ怖い。
「な、何も考えてないですよ。アリアお姉さん」
「ホントかなぁ? お姉さんねっ、アキちゃんが悪い子だと、お仕置きしたくなっちゃうかもぉ♡」
「おおお、お仕置きですか……。ははっ」
アリアだけは怒らせないようにしようと俺は誓った。
「何かお探しですか? ふふっ」
俺がレイティアとアリアに挟まれていると、何を誤解したのか受付嬢が笑顔で近寄ってきた。
「いえ、クエストを選んでいるだけですので」
「南の海で過ごせるクエストを希望なんだ」
「おいレイティア、そんなクエストは無いぞ」
口を挟んできたレイティアを止めていると、受付嬢がまさかの発言をする。
「ありますよ。南の海のクエスト」
「ええっ、あるの!?」
「はい、南の観光地であるアドミナの街で限定クエストが発生しています。豪華旅館に宿泊で美味しい海鮮料理付きです」
そんな都合の良いクエストがあるはずもない。何か裏がありそうなのだが。
「アドミナは美しいビーチで有名な観光地なのですが、最近クラーケンが住み着いて困っているのです。地元の冒険者では対処できる人がいないようでして。ここ王都の冒険者ギルドに要請がきたのですよ」
絶対にヤバいクエストの気がするのだが、受付嬢の話にレイティアたちは乗り気になってしまう。
「アキ君と南の海……イイねっ♡」
「うふふっ♡ 海を見ながらアキちゃんと♡」
「ま、まあ、たまにはバカンスも良いんじゃない」
浮かれるお姉さんたちに、さり気なく受付嬢が重要なことをボソッと告げる。
「ですが、このクラーケンは殆どの魔法を跳ね返し、巨大で軟体ですので物理攻撃も効かないそうで。あっ、
「お、おい、今なんか言ったろ? 魔法と物理が何とかって」
「だ、大丈夫です。皆様なら倒せますって。期待してますよ、新進気鋭のAランク冒険者、
こうして俺たちのアドミナ行きが決定した。
皆はバカンス気分なのだが、俺は触手的大事件が起こりそうな気がして心配なのだが。
◆ ◇ ◆
後日――――
準備を終えた俺たちは、アドミナ行きの馬車に揺られ南へと向かっていた。
王都リーズフィールドからは、馬車で半日と言ったところか。日没までには到着するだろう。
「ねえねえ、アキ君っ! 新しい水着を買ったんだよ。期待してくれても良いんだぞっ」
レイティアがグイっと寄りかかってきた。いつものことなのだがドキッとさせられる。
「あ、ああ、まあ期待しておくよ」
(ああああぁ! そっけない態度をとったけど滅茶苦茶期待している自分がいる。このところレイティアの態度がおかしくて誤解しちゃうだろ! 南の海で一つ屋根の下で寝たりしたら……)
まさか同室は無いのだろうが、妄想が捗ってしまう。
「ねえ、アキちゃん」
いつの間にか目の前にアリアがいて、綺麗な瞳が俺を見つめていた。
「えっ、アリアお姉さん?」
「私も新しい水着買ったのよ」
「そ、そうですか」
「もう逃がさないから。既成事実って必要だと思わない?」
アリアの魅惑的な瞳と甘く響く声から催淫効果のような魔力を感じる。気を緩めたら魅入られてしまいそうなくらいの。
「あ……あの、アリア――」
「ちょぉおおっと待ったぁああ! やめなさいよアリア!」
途中でシーラが割って入り事なきを得る。
「あ、危なかった。イケナイコトしそうになってしまった」
「あんた、アリアに食われないよう気を付けなさいって言ったでしょ!」
「分かってはいるのだが、あの心地良い声と揺れる乳に……」
「は!?」
胸の話でシーラがジト目になる。
「ま、まあ気をつけるよ」
「まあ良いけど。でも、アタシに手を出したらぶっ飛ばすわよ。気を付けなさいよね」
「分かってるって」
禁断症状全開のアリアに、グイグイ体を寄せてくるレイティア、ツンツンしながらも俺を気遣ってくれるシーラ。
三人の仲間に囲まれ、クラーケン討伐より先に今夜が危機的状況の俺だった。
――――――――――――――――
お姉さんたちと南の海でお泊り冒険に出掛けるアキ。クラーケンよりグイグイ来る彼女たちの方が危険な香りがしたりして。
そして、あの――――
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