溺愛系お姉ちゃんヒロインは寝かせてくれない! ハズレスキルでS級パーティーを追放された俺、美少女に拾われたらスキル覚醒しました。加護爆盛りで無双しながら甘々で幸せに暮らします。
第11話 サキュバスお姉さんのハートに命中
第11話 サキュバスお姉さんのハートに命中
一件目は街で評判の肉料理店だ。俺たちはクエスト報酬を軍資金として食べ歩きに繰り出していた。
「ここは肉料理が人気なんだ。前から入ってみたかったんだよ」
口元を緩ませたレイティアが言う。腹ペコヒロインのように。
借金や家賃が気になる俺は、一応聞かねばなるまい。
「ここはお高いのでは?」
「だから来たんだぞっ! アキ君のスキルが強化されるからね」
「ま、まあ、そうなんだけど」
ちょっとパクリっぽくて気が引けるが、俺も本格的な料理を学ばせてもらおう。
店のドアを開けると恰幅の良い店主が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
奥のテーブルに通され、四人で席に座る。俺の隣の席をレイティアとアリアが取り合ったのだが、結局埒が明かないのでシーラが座ってしまう結果になった。
「よし、好きなのをジャンジャン注文しようか。軍資金は昨日の報酬があるからな」
そんな金遣いが荒そうなレイティアを見て、俺はこのパーティーが破綻状態っだった理由を察した。
「おい、借金返済はどうなった?」
「まあまあ、今はパーッとやろうじゃないか、アキ君」
「これはまたクエストをこなさないとだな」
「アキ君が加入して、何か討伐クエストがガンガン行けそうな気がするんだよ」
レイティアの話にシーラが同意する。
「アタシたち、前は失敗続きだったけど、アキが入ってからは上手く行きそうな気がするのよ。前は何でか物を壊したりして大変だったけど」
シーラの言う物をぶっ壊す話は何となく理解できた。さすが洞窟内で大魔法をぶっ放そうとしていただけはある。
「そ、そうだな……。
俺の言葉に三人が頷く。
「なるほど、ボクはアキ君を加入させれば、毎日美味しい料理を食べられそうだと思ってスカウトしたんだ。でも、アキ君はパーティーの支援役としても素晴らしくて驚いたよ。それにバフ効果も凄いしね」
レイティアの目が輝いている。というか、料理目当てでスカウトしたのか。
「うふふっ、アキちゃんって頼りになるわね。やっぱり良いお婿さんになりそう♡」
アリアが優しい笑顔で微笑みかけてくれた。後半部分がちょっと怖いのだが。
「まっ、頑張りなさいよ。でも、アキのおかげで助かってるわね。アタシだって感謝してるんだから」
ツンツンしているように見えるシーラだが、その実優しくて律儀な性格なのは知っている。
「ありがとう。嬉しいよ、そんなに俺を必要としてくれているなんて」
話がまとまったところで給仕が注文を聞きに来た。俺たちは、おすすめの肉料理を頼んだ。
運ばれてきた料理を速攻で食べまくるレイティアたちを横目に、俺は素材や調理法を考える。
「この
スプーンですくって口に入れる。
「うん、肉の風味が柔らかく煮えた野菜に染み込み美味しい。ピリッと香るのは
次は肉料理だ。
「香ばしい匂いだ。あむっ、塩と胡椒で味付けしてあるが、これは
「ふふっ、アキ君は料理研究家みたいだなっ」
レシピを考えている俺に、レイティアが笑いかけた。
「おい、誰が言い出したんだよ?」
「おっと、そうだった。これもアキ君のスキルのためだ」
「まったく、うちのパーティーメンバーは困ったもんだな」
そう口走ったところで俺は驚いた。まだ知り合って数日なのに、もうパーティーに馴染んでいる自分に。
不思議な気持ちだ。王都に出てから一年間一緒だったあいつらには何の
「ふふっ」
俺が笑っていると、横のシーラがジト目になった。
「何ニヤニヤしてんのよ?」
「いや、人は長さや大きさじゃないんだと」
「やっぱり小さな胸が!」
「ち、違うから! 胸じゃなく人間関係の話だ」
シーラの貧乳推しはスルーしておこう。このまま彼女の胸を揉み続けると、本当に平なのが好きになりそうだ。
食事が終わり、二件目はスイーツの店に行こうとなったところでそれは起こった。
ファサッ!
アリアが立ち上がろうとした時、かぶっていた帽子が落ちたのだ。
「お、おい、そこの女! そのツノは……」
隣のテーブルの高齢男性がアリアのツノを見て顔を強張らせる。
「おい! あんた魔族か……。な、ななな、何だと! この店は魔族と一緒に飯を食わせるのか! おい、店主を呼べ! 薄汚い魔族となんか飯が食えるか!」
激高した男が店主を呼びクレームを付ける。
「ああぁあっ、気分が台無しだ! せっかくの料理が魔族のせいで不味くなるわい! 謝罪してもらおうか! もちろん代金は支払わんぞ!」
その男の暴言は止まらない。代金まで踏み倒そうとしているようだ。
「おい、あんた」
「行こっ、アキちゃん」
俺が文句を言おうとすると、アリアが肩を掴んだ。
「アリア……」
アリアの顔が悲しみで沈んでいる。今までも、このような誹謗中傷があったのだろうか。
(くっ、誰だって好きに種族を選んで生まれてきたわけじゃないんだ。生まれ持った属性で蔑まれるなんて有ってはならない! そうだ、俺もハズレスキルとバカにされてきたから分かる。これ以上アリアを傷付けるのは俺が許さないぞ!)
なおも罵声を吐いている男の前に俺は立った。
「おい、オッサン、その口を閉じろ! 彼女は俺の大切な仲間なんだ。彼女を侮辱するのは俺が許さないからな!」
きゅぅぅぅぅーん♡
俺の背中に張り付いているアリアから危険な音が鳴った気がする。だが、今はそれどころではない。
「な、なんだこのガキは! 年長者を敬わんかクソガキ! これだから最近の若いもんは!」
「敬えと言うのなら、尊敬できる言動や品格が必要だろ。大人物というのは余裕や
「ぐっ、ぐぬぬ……」
俺の話で男が怯んだ。図星なので何も言えないのだろう。
「そういえば、上流階級の人間はチップもはずむんだよ。まさか、誇り高い大人物様が食い逃げしたりはしないよな?」
「と、当然だ! ワシは魔族や貧民とは違う! おい、店主、チップもはずんでおくぞ。釣りは要らん」
その男が威張り散らしているうちに、俺たちは会計を済ませ店を出た。これ以上あんなのに関わりたくはない。
店を出てから少し経つというのに、俺の腕に触れているアリアの体が火照っているようだ。
振り向くのが怖い気もするが、彼女が心配なので声をかけてみた。
「アリアお姉さん、大丈夫ですか?」
「うへっ♡ うへへぇ♡」
「やっぱり怖っ!」
見てはいけないモノを見てしまった気がする。元々セクシーなアリアの顔が、完全に
「アキちゃ~ん♡ 嬉しいっ♡ お姉さん、もう我慢できないかもぉ♡」
「が、我慢してください。ここは公衆の面前ですよ」
「もうっ、アキちゃんのイジワルぅ♡」
ぎゅっ、ぎゅっ!
「お、おい、くっつき過ぎだぞ」
「良いじゃない。ちょっとくらい♡」
ジィィィィィィィィ――
何故か反対側からレイティアがジト目でグイグイ迫ってくる。
「ちょ、近い、顔が近い! レイティアお姉ちゃん?」
「ズルいぞ。ボクも構ってくれ」
「ちょっと待て、ヤバいって」
両側から女子にギュギュっと抱きつかれてしまい、俺の心拍数が急上昇する。
もう最後の良心であるシーラに助けを求めるしかないか。
「おい、シーラ、こいつらを何とかしてくれ」
「あんた、中々やるわね。見直したわ」
ペシペシペシ!
そう言って背中をペシペシする。
(おかしい……。俺は仲間を大切にしようとしているのに、どんどんヤバい状況になっている気がする。どうすんだこれ)
彼女たちに誠実に接しようとすればするほど、どんどんパーティ内の状況は混迷を極めている気がする。もちろん、俺たちはこのままスイーツを食いに行ったのだが。
――――――――――――――――
どんどんヤバさを増すお姉さんたち。スキル覚醒は近い!?
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