第3話 大きい胸と小さい胸

 目の前のセクシーお姉さん、アリアから可視化できそうなくらい強い魔力が放出されている。ただ、その魔力は攻撃的なものではなく、何と言うかこうエロティックなものなのだが。


「アキちゃぁん♡ 私たちのパーティー閃光姫ライトニングプリンセスに加入してくれるんですよね? 嬉しいわぁ。アキちゃんのような良い人が来てくれて」


 ぽてっとした魅惑的なくちびるに指を当てアリアが言う。その声自体が催淫効果でも有るかのように心地良い。


「あの、まだ入るって決めたわけじゃ……。そ、そうだ、ここは何処なんですか?」


「うふっ♡ もう、ダ・メ・ヨ♡ ここまで焦らしておいて、今更拒否するなんて許されると思う? ああぁん、お姉さんねっ、今アキ君に断られたらぁ、すっごいコトしちゃうかもぉ♡」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――


 アリアから放出されている魔力が更に強くなった。


「なな、何か凄い! 何かよく分からないけど凄い!」

「凄いコトしちゃう?」

「ししし、しませんかから!」

「くふっ♡ 私に性的捕捉ロックオンされて逃げられると思う?」


 さっきから不思議に思っていた理由が分かった。アリアの視線や声には特殊なスキルがあるようだ。そう、催淫効果のようなものが。


「そ、そうだ、思い出した。捕食姫プレデターには美人な淫魔サキュバスさんが居るって聞いたような? も、もしかして……」


「ピンポンピンポーン! そうでーす、私が淫魔サキュバスのアリア・ヴァナフレイズよぉ♡」


 ペロッ!


 色っぽいくちびるを赤い舌でペロッとしたアリアが俺を見つめる。


「ま、待ってください! いきなりそんな」

「だめでぇ~す♡ もう止まりませぇ~ん♡」

「まだ知り合ったばかりなのにぃいい!」

「ぐふふっ♡ これで私もやっと……」


 欲求不満そうな淫魔サキュバスお姉さんに襲われそうになったところで、部屋の外から慌ただしく走る足音が聞えてきた。


 スタタタタタタタタタタッ!


「ちょぉおおおっと待ったぁああああ!」

 ズダァアアアアーン!


 突然、小柄な金髪の女が現れ、アリアと掴み合いになる。何故か俺の寝ているベッドの上で揉み合い、眼前で激しく揺れるアリアの胸が跳ねまわり目の毒だ。


「ちょっ、待てっ! 俺の上で暴れるな!」


 そんな俺の声も聞こえていないのか、二人の女は止まる気配がない。


「ちょっと、アリア! あんた、遂に男をラチっちゃったの!? ああああぁ! これ以上トラブルを起こすと王都に居られなくなるって言ってんのに! もうっ、何やってくれてんのよ!」


「こ、これは違うのよ、シーラちゃん。私は食べようとしただけでぇ。ラチって来たのはレイティアちゃんだから」


「ラチったのは否定しねぇのかよ!」


 止めに入った女が頭を抱える。


(金髪で耳が長い……エルフか? まだ幼く見えるけど……)


 俺がエルフ少女を見つめていると目が合った。


「お、おい、あんた! アタシがこのエロ女を押さえているうちに逃げろ!」


「えっ、俺? 逃げろって言っても」


「早くしろ! ここの女どもは男に飢えてんだ! ノロノロしてたら食われるぞっ!」


「お、おう」

 ガタンッ!


 慌てて立ち上がろうとしたら足がもつれた。咄嗟とっさに何か掴もうとして、偶然にもエルフ少女の体を掴んでしまう。


 むぎゅ! もみっ、もみっ!


「あっ……」

「えっ……」


 そのエルフ少女は胸も小さかった。

 念のため確認としてもう一度揉む。


 もみっ!


「ぎゃぁああああああ! テメぇっ、なに揉んでんだぁああああ!」


 バコォオオーン!

「ぐえっ!」


 そして俺はベッドに逆戻りする。



 収拾がつかない事態になりそうなところで、高笑いと共に俺をさらった張本人が部屋に入ってきた。


「はっはっは、もう仲良くなっているのか。良かった良かった」


 白金プラチナ胸当ておっぱいアーマーが眩しいレイティア・グランサーガだ。


「我ら閃光姫ライトニングプリンセスの一員としてやって行く覚悟を決めてくれたのか。ボクは嬉しいぞ」


「ちょっと待ってくれ。俺はまだ――」


 俺が言いかけたところでエルフ少女が割り込んできた。


「ちょっと待って、レイティア! この男をメンバーにするなんて初耳なんだけど!」


「シーラ、このアキ君は閃光姫ライトニングプリンセスに必要な存在なんだ。説明なんか後で良いじゃないか」


「はあ!? アタシは反対なんですけど! だ、だって、この人……ち、小さい胸が好きみたいだし……」


「は?」


 突然おかしな性癖を付けられて俺は反応する。


「ちょっと待ってくれ。誰が小さな胸が好きだって?」

「あんた、アタシの胸を揉んだじゃない! しらばっくれるんじゃないわよ!」

「あれは不可抗力で……」

「嘘っ、アタシのこと狙ってるんでしょ……」

「えっと……」


 そこにアリアが参戦した。


「アキちゃんは大きな胸の方が好きよねぇ♡」

 むちっ! むちっ!


 パツパツにタイトな服を内側から押し上げるアリアの巨乳に、つい俺は目を奪われてしまう。


「た、確かに……大きい方が……」

「はぁ!? ムカつく!」


 エルフ少女が怒り出した。さっきは小さな胸を好まれて怒っていたはずなのに。


「アタシのこと遊びだったんだ」

「違うから」

「じゃあ、大きいのと小さいの、どっちが好きなのよ!」

「えっと、その、じゃあ小さい方で」

「やっぱ小さいのが好きだったんだ!」

「どうせいっつぅううんだ!」


 俺が小さい胸が好きだと決定してしまったところでレイティアが止めに入った。


「まあまあまあ、皆落ち着きたまえ。アキ君はボクの命の恩人なんだ。それに、レアスキルを持っている貴重な人材なのだよ」




 興奮していたエルフ少女と発情していた淫魔サキュバス女性が落ち着いたところで、テーブルを囲んで自己紹介となった。


 因みに怒りが収まらないエルフ少女は、レイティアに何やら耳打ちされて静かになる。スキル関連の話でもしたのだろう。



「とりあえずボクから自己紹介しよう。レイティア・グランサーガだ。もう知っていると思うが、19歳のお姉ちゃん剣士だぞっ! 因みにボクっ娘なのはキャラ付けなので気にしないでくれ」


 レイティア・グランサーガ


 長身でスタイル抜群の女剣士だ。艶やかな青髪が美しく凛々しい女騎士のような印象がある。

 ただ、胸当てから溢れ出そうな張りのある胸や、短いスカートから惜しげもなく出しまくっている生足が目の毒だ。


 この世界で最強種族である竜族の血を引いているらしい。冒険者界隈では、彼女に関わると恐ろしいコトになるとの噂を聞いたことがある。

 ボクっ娘なのはスルーしておこう。



「私はアリア・ヴァナフレイズよ。21歳ね。魔法職をやってるの。たまに発情するけど許して欲しいな。よろしくね、アキちゃん」


 アリア・ヴァナフレイズ


 柔らかそうなマシュマロボディの魔法使いだ。目にも鮮やかな薔薇色ローズピンクの髪をしたセクシー担当である。

 ウエストは細いのに胸も尻もプリッと出ているのは破壊力抜群だ。


 魔族である淫魔サキュバスの血を引いているらしい。冒険者界隈では、彼女に関わると恐ろしいコトになるとの噂を聞いたことがある。



「アタシはシーラ・エメローダスよ! ――15歳、魔法剣士ね。まだ許可してないけど、このパーティーに入りたいのならアタシに配慮しなさいよね」


 シーラ・エメローダス


 キラキラと煌く金髪のエルフ少女だ。全体的に小柄なロリ体形である。生意気そうな顔をしているが、よく見ると凄く可愛い。


 この世界で希少種族であるハイエルフのようだ。冒険者界隈では、彼女に関わると――――


 ふと俺は思い出した。子供の頃に聞いた御伽噺おとぎばなしで『天災級暴風雨テンペスト』と恐れられているエルフの名を。


「あっ、災害級エルフのシーラ・テンペスト・エメローダス!」


「そそそ、その名を言うなぁああああ!」

 ポカポカポカ!


 シーラが飛び掛かってきた。小さな体なので痛くは無いが。


「待てよ? さっき15歳って言ってた気がするけど、俺が物心ついた頃からテンペストの伝説は聞いたことがあるような?」


 俺の疑問にアリアが答えてくれる。


「シーラちゃんは115歳よ。いつも自己紹介の時に、百の桁だけ小声でするの。可愛いでしょ」

「アリアぁああ! なにバラしてるし!」

「ごめんごめん」


 問題児ばかりのパーティーメンバーに、俺の覚悟も揺らぎまくりだ。


「俺……どうなるんだ?」






 ――――――――――――――――


 ちょっと変わった仲間ヒロインに囲まれ、スキルを成長させたり絆を深めながら溺愛されちゃう物語になります。

 裏切り者の元パーティーメンバーの話も並行して展開しますのでご期待ください。


 カクヨムコンがスタートしました。

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