第19話 プリデビ VS ポポタマト




「見つけましたよぉフレイムさん!」



 そう叫びながら市場の奥からやって来る男……あ、変に芝居がかってるから周りの人に避けられてる。



「国王サイザー様があなたをご所望です。さあ私と一緒に王城へ」



「やだ!」



「え、あれビネーガ様?」



「あんな小さい子に……もしかしてビネーガ様って……」



「うわキッショ」



 …………。



「ビネーガ、さすがに幼女誘拐発言は管理局の人間でもアウトだろ」



「いや私じゃなくてサイザー様だから! 私は巨乳の女性しか愛せないから! てかホワイト! 知ってるだろ貴様!」



「巨乳の女性しか愛せないって……」



「女性の敵だわ」



「うわキッショ」



「ぐ、ぐぬぬ……こうなったら仕方がない、この市場もろとも破壊してくれる!」



「いやそうはならんでしょ」



 さすがに短絡的すぎだろ。



「いでよ! ボウギャーク!」



「うわっ!?」



 ビネーガが懐から取り出した謎の小瓶をこっちにぶん投げてきたので、とっさに持ってたポポタマトでガードしてしまった。



 バアアアアアアン!!



「ボウギャーーーク!!」



「あーっポポタマトがボウギャークに!?」



「ポポタマトがもっとでっかくなっちゃった!」



 これでしばらく材料切れにはならないね。ってそんなわけあるかい!



「ハーッハッハッハ! さあボウギャーク! 市場を破壊してはぴねすエナジーを奪うのです!」



「ああっ! ワシが一生懸命育てた……農家から、買い取った業者から、卸し市場で競り落としたポポタマトが……!!」



 めちゃめちゃ第三者挟んでるじゃねえか。流通って大変だな。



「クソッ! しかしそんなことはこの俺が許さないぜ! 『プリデビ☆トランスフォーム』!!」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「ホ、ホワイトさん!?」



 パアアアアア……!!



「ジメジメ人生に一筋の光! 毎日が日曜日! デビル☆サンデー!」



 __ __



 いきなり出現したボウギャークに、市場にいた人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げている。



「やはり現れましたねプリティ☆デビル!」



「やはりもなにもさっきから目の前にいたじゃねーか」



「……やはり現れましたねプリティ☆デビル!!」



 え、なに、これお約束? 俺が空気読めてないんか?



「出たなボウギャーク! 市場の幸福はこのサンデーが守って見せる!」



「ハーッハッハ! しかし今日は相方が不在のようだ……一人でフレイムさんを守りながら戦うのは厳しいんじゃないかね?」



「めちゃめちゃ説明してくれるじゃねえか」



 とはいえ実際問題、ボウギャークと戦っている間にビネーガにフレイムを連れ去られてしまうかもしれないし、フレイムを放置はできない。



「フレイム、大丈夫だよ! ビネーガなんてワンパンで倒せるよ!」



「いやさすがに無理だろ。よしフレイム、俺と合体だ!」



「合体!? やる!!」



「よーしいくぜ! プリデビ☆ユニオン!!」



 というわけで、フレイムを肩車して戦うことにした。



「振り落とされるなよフレイム!」



「おっけー! さあいくのだサンデー号!」



「いや馬じゃないから」



「ボウギャーク!!」



 ゴロゴロゴロゴロ……!!



「おっと」



 転がる巨大ポポタマト、もといボウギャークの攻撃を避ける。

いかんいかん、ふざけてる場合じゃなかった。



「小賢しいマネを……しかし、いつまでそんな重荷を背負って戦えるかな?」



「フレイムおもくないもん!」



「そうだな、まるで天使の羽みたいで逆に飛べそうまであるぜ」



「ふんっ! さあやってしまいなさいボウギャーク!」



「ボウギャーク!!」



 ブッシャアアアア!!



「うわっなんだこれ! ああああ目が染みるうううう!!」



「ポポタマトの果汁は目に入るとすっごい染みるんだよ」



 ボウギャークの野郎、転がるのを止めたと思ったら口から謎の汁を飛ばして来やがった。痛くて目が開けられないじゃねえか。



 ゴロゴロゴロゴロ……!!



「サンデー! 右に避けて!」



「おうっ!?」



「次は左っ!」



「くっ!」



「次うえ!」



「上!?」



「はい今っ! 跳んでっ!」



「おっ……りゃ!!」



「ボ、ボウギャーク!?」



「むう! なんで避けられるのだ!」



 優秀な操縦者がいるもんでね。



「ふう、やっと染みなくなってきた。変身衣装用に防護メガネでも作ってもらおうかな」



「フレイムもほしい!」



「一緒にプリデビやるか?」



「ポポタマト切るときに付けるの」



「そうですか……」



 玉ねぎ切るときにゴーグル付けるやつみたいだな。あれ鼻も塞がないと効果ないけど。



「しかし、このままじゃボウギャークの攻撃を避けるだけでこっちから攻めていけないな……」



「じゃあやっぱフレイムがビネーガ倒すね」



「だからそれは無理だっ……っておい!」



 ひょいっと肩から降りてビネーガに向かっていくフレイム。な、何やってんだおめえっ……!



「おや、諦めて自ら私の元へ来ていただけるとは……フレイムさんは貧乳のクセに聞き分けの良い子供ですねえ」



「いや貧乳関係ねえだろっ……と!」



「ボウギャーク!」



 だめだ、ボウギャークが邪魔でフレイムの元へ行くことができない……くそっ!



「まああなたは王妃候補ですからね、手荒な真似は」



「フレイムぱーんち!」



 バギィ!!!!!!



「ホブラバァッ!?」



「ボウギャッ!?」



「……えっ?」



 あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! フレイムの右フックを食らったビネーガが吹っ飛んでボウギャークにめり込んでいった。



「…………」



「サンデー! ビネーガやっつけたよー! 今のうちにボウギャークをたおして!」



「あ、はい……ボウギャーク! さあ俺とタイマンで勝負だ!」



「ボ、ボウギャーク……」



 激戦!!

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