第18話 ポポタマトってなんだよ
「しっかし、あの露出狂はなんだったんだ?」
全裸壺マン事件から数日。ニュースでここ最近巷をにぎわせていた露出狂の男が管理局に自首し、捕まったとのニュースが流れた。
しかもこの男は既に1度捕まっており、管理局の牢に収容されていたところを脱走し、逃げている最中だったらしく、管理局のずさんな管理体制が問題になっていた。
「拙者はてっきり、またビネーガのやつが顔隠してやってるのだとばかり思うとったんじゃが」
「あ、それ俺も思ったわ。なんか全然捕まらねえから、貴族特権みたいなやつかと」
実際は管理局に捕らえられていたただの変態だった。いやそれも別によくはねえんだけど。
「管理局の目的は、はぴねすエナジーの増加を妨害して、あんはぴエナジーを増やし、庶民を生かさず殺さず、少しずつ魔族を弱体化させることルナ」
「俺たちの逆をやってるってことだな」
この第8エリアは、俺たちが来てからはぴねすエナジーの増加が著しく、ビネーガも以前より本気になってきているという。本気になった作戦が露出魔をけしかけることなのは、なんというか……
「そして、第8エリア管理局には、他のエリアとは違う、もう一つ重要な任務があるんだルナ」
「重要な任務?」
「フレイムを捕まえて国王サイザーのお嫁さんにすることルナ」
「……あー」
「そういやそうじゃったの」
ウェスタさんがめちゃめちゃ愚痴ってたやつね。あれ本気だったんだ。
「いやキショイな~国王」
「ビネーガに風呂覗かれたときにフレイムが居合わせなくてよかったな」
アイツ、巨乳にしか興味ないからな。普段はフードと大きめの服を着させて耳と尻尾を隠しているが、もしかしたら今まですれ違っててもフレイムのことは眼中になかったのかもしれない。
「最近、管理局のやつらは思うようにいかなくて焦って来てるルナ。なりふり構わず来るかもしれないから気を付けたほうがいいルナ」
__ __
「えーとなになに……イチゴとバナナ、それからポポタマト……ポポタマトってなんだ?」
「ポポタマトはねー、オレンジ色でー、でっかいやつ!」
「全然わからん」
喫茶ペチカのランチタイム前にいくつか食材が切れそうだということで、俺とフレイムはウェスタさんにお願いされて市場まで買い出しに来ていた。ちなみに変身は解いている。
いやさすがにね、あれを店の制服だから~って開き直って出歩けねえよ。
「それにしても、なんだか活気がないな……」
色々な店が立ち並び、市場としての大きさはそれなりっぽいのだが、店をやっている人もお客さんも、あまり元気が無いように見える。
いや俺もヒキニートだし、ここ数年近所のコンビニくらいしか行ってねえんだけど、こういう市場ってテレビとか見た感じ、もっと賑わってるイメージがあるんだよな。
「野菜、また値上がったのねえ」
「すまねえな。また管理局からの徴収が厳しくなっちまってよ」
「はあ、ピックルス様もビネーガ様も、ちっとも私たちの事を考えてくれないんだから……」
「シッ! 滅多なことは言うもいんじゃねえ。管理局の連中に聞かれてたら“牧場”行きになるぜ」
「牧場?」
マザーかグリーンかアルパカか。もしかしてあれか、引きこもりを強制的に牧場に連れてって働かせるっていう地獄のプロジェクト……
「牧場ねえ。毎日サイロでエサづくりは勘弁だぜ……」
どうやら上から高い税を取られて庶民エリアの人たちの生活が苦しくなってきているらしいな。これじゃあはぴねすエナジーが増えないのも仕方がない。
「あっましゅまろばやし、ポポタマトあったよ!」
「ん? どれどれ……どれ?」
「これ!」
ポポタマトはめちゃめちゃデカいオレンジのようなフルーツだった。なんだこれ、バスケットボールかよ。
「おばちゃーん、ポポタマトちょうだい! あとイチゴとバナナ!」
「はいよ、おや、ペチカさんのとこの妹ちゃんじゃないか。そっちは……」
「あ、どうも。喫茶ペチカでお世話になってるホワイトって言います。源氏名はサンデーです」
「おやそうなのかい。よろしくねホワイトさん。……源氏名?」
ニックネームみたいなもんかな。異世界キャバクラって言うな。
「喫茶店がんばってるみたいじゃないか。最近は夜も開けてるんだろう?」
「ええ、まあ」
「ペチカの料理は安くて美味しいから、わたし達も助かってるんだ。このご時世にあの値段でやっていくのは大変なはずなのに、ウェスタはみんなの笑顔が1番だからって……ほんと、良い子だねえ」
たしかに、ウチの料理は市場で売ってる食材の値段を考えてももっと高くして良い気がする。あれでは利益なんてほとんど出てないんじゃないだろうか。まあ、ウェスタさんらしいっちゃらしいな。
いや待てよ、あの萌え萌えサービス付きパフェは結構高かった気がするぞ……ただの商売上手じゃねえか。
「はい、これはオマケだよ。こんど喫茶店におじゃまするから、美味い料理、頼んだよ」
「うん! ありがとうおばちゃん!」
「ありがとうございました」
というわけで、オマケでポポタマトをもう一個貰ってしまった。いやしんどいってこれ。バスケットボールと違って中身詰まってるからクソ重いんだよ。
「ましゅまろばやし大丈夫ー? フレイム、いっこ持とうか?」
「いやさすがにフレイムには持たせられないよ。イチゴとバナナだけで十分だ」
そんなことしたら児童労働で街の人から白い目で見られてしまう。イエスロリータ、ノーワーク。
「でもフレイム、ましゅまろばやしより力持ちだよ」
「へ?」
「フレイムはせんぞがえりだから、力持ちなんだ」
「そ、そうなの?」
そういえばフレイムの耳と尻尾はオオカミ獣人系魔族に由来してるんだっけ。それって見た目だけじゃないのか……?
「じゃあこんど俺と腕相撲やるか」
「いいよ! ましゅまろばやしの細腕なんてちょちょいのちょいでバッキバキにしてあげる!」
それはやめてくれ。
「ふっふっふ……そんなに重いなら私がひとつ貰ってあげましょう」
「!? だ、誰だ!」
「私ですっ!」
いや誰だよ。
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