第17話 露出おじさん登場




「二人ともやったルナ! はぴねすエナジーが溜まって遂に必殺技が使えるようになったルナ!」



「おっマジか!」



「やったのじゃ!」



 喫茶ペチカでバータイムを始めたからだろうか、ここ数日でかなりはぴねすエナジーが増加したみたいだ。

ウェスタさんの巨乳を眺めながら飲む酒は美味いか? オッサンども。



「というわけで、早速プリデビ☆チョーカーをアップデートしたルナ! これでまたボウギャークが襲ってきても必殺技で返り討ちルナ!」



「そんなこと言ってると本当にやって来るぞあいつら」



「ちなみにどんな技が使えるんじゃ?」



 そうだ、重要なのはそこだ。名乗り口上のときみたいに変なのじゃないといいんだが。



「えーと、デビル☆サンデーの必殺技が『サンデーの、のーじょぶ☆制裁ストライク』ルナ」



「おい」



 え、なに? 俺が制裁受けるの? ノージョブだから?



「それからデビル☆サタデーの必殺技が『サタデーの、ろーりんぐ☆更生ビーム』ルナ」



「ろーりんぐ? 転がるのじゃ?」



「多分違う意味だな」



 一部の方々には効果バツグンかもしれないな。あと最初のサンデーの、とかサタデーの、ってのはなんなんだよ。深夜のラジオ番組かなにか?



「この必殺技でバンバン敵を倒していくルナ!!」



「おー! なのじゃ!」



「そうだな。まあでもとりあえず今のところは……」



「今のところは?」



「接客がんばるか」



「そうじゃな」



 __ __



「ありがとうございました~!」



「またきてね~ルナ!」



「ごちそうさまでした」



「ねえおかーさん、わたしもルナちゃんみたいなぬいぐるみ欲しい~」



「はいはい、お父さんが非正規労働者から正規になれたら買ってくれるわよ」



「じゃあ無理じゃん」



「えっ……」



 世知辛え会話だなおい。お父さん、気を落とすなよ。



「注文お願いしまーす」



「今行くのじゃ!」



「フレイムちゃんはお料理に魔法かけたりしないの~?」



「フレイムはね~まだだめなの」



「え~そうなんだ。フレイムちゃんの呪文も見たかったな~」



「お料理がおいしくなる魔法の呪文はね、心の奥の大事なモノを削りながら使うものだってサンデーおねえちゃんが言ってたから。フレイムはまだ使えないんだって」



「そうなんだ……みんな大変なんだね」



 はぴねすエナジーじゃあ俺の心の穴は埋まらねえんだ……



 カランコロン。



「あ、いらっしゃいま」



「ふぅ……ふぅ……」



 …………。



 頭に壺を被り、ロングコートで全身をわざとらしく隠した、謎の来客者がいらっしゃった。



「……ルナ、フレイムに目隠しを」



「分かったルナ」



「え、なあにルナちゃん」



「フレイムにはちょっとまだ早いルナ」



「お、おい、アイツって、最近この辺りのレストランに出るっていう」



「露出……狂?」



 ざわ……ざわ……



 店内の客が入り口の壺野郎に注目し、そのタイミングで壺野郎がロングコートに手をかける。



「ま、まずい! みんな見るな!!」



 バッ!!!!



「受け取ってくれオレのチップサービスゥゥゥ!!」



「キャ~!!」



「へ、変態だ~!!」



「ママ~あれなに~?」



「見ちゃいけません!!」



 喫茶ペチカ、ランチタイムで賑わう店内が一瞬で阿鼻叫喚の嵐と化してしまった。

巷で噂の露出野郎、まさかマジで現れるとはな……このままじゃ、店内にあふれていたはぴねすエナジーが霧散しちまう。



「……みなさん落ち着いて! しばらく目を閉じていてください!」



「サ、サンデーちゃん」



「わた……いや、俺が対処します」



 コツ、コツ……と露出狂に近づく。



「オレのエクスカリバーを見てくれよお! どうだい~? ハッピーになったろう?」



 完全にバッドな気分だぜ。何が悲しくて男のモノなんぞ見せつけられなきゃいかんのだ。



「お客様、そのお、大変申し上げにくいのですが……」



「む? なんだいスレンダーガール?」



「そちらの粗末な短剣はさっさと鞘に納めていただいて……って、もう納まってますね。失礼(笑)」



「なっ、なん、なん……」



「そんなちっせえもん見せてんじゃねーよ。さっさと出ていけ短小野郎」



「短ッ!? ゴ、ギ、ガ……」



「くらえっ! サタデーの、ろーりんぐ☆更生ビーム!!」



 ビビビビビッ!!



「ビャアアアアア激痛ウウウウウウ!!!!」



「おー本当にビームが出たのじゃっ!」



「いやオマエなにやってんの!?」



 サタデーがいきなり露出狂の下半身めがけて謎のビームをぶっ放した。



「ボウギャークが出る前に必殺技を試そうと思うてな。中々に高出力なビームじゃのう」



「いくら変質者とはいえ殺しちまったら俺らが逆に捕まるだろうが!」



「あっはっは! すまんすまん」



 すると、股間を押さえてうずくまっていた露出狂が急に立ち上がる。



「お、俺はなぜ今までこんなことを……」



「あれ?」



「て、店内の皆様申し訳ございません! このようななんの価値もない不快なモノをお見せしてしまい! 愚息共々なんとお詫び申し上げたら良いか……っ!」



「いや、もういいから、さっさと自首してくれ」



「はい! 自首してきます! あ、よかったらこの壺どうぞ」



 すぽっ



「え? あ、どうも……」



「それでは皆さん! 良いランチタイムを!」



 そう言って露出狂は店から出て、近くの警備隊まで走っていった。



「更生ビーム、マジで更生させてんじゃん」



 ちょっと怖えぞおい。俺の必殺技は普通に使って大丈夫か……?



「ふむ……この壺、なかなかの名品じゃの」



「そうなんだ」



「お肉の塩漬け作るのに使おうかしら」



「露出狂が被ってた壺で作った料理はちょっと……」



 壺は骨董屋に売り払うことにした。



 ……。



 …………。


 第8エリア管理局、ビネーガ自室。



「クソッ、はぴねすエナジーの多い店を妨害するために牢屋から放った変態が何故か自ら戻って来てしまった……またプリティ☆デビルの仕業か!」



 露出狂でテンション下げ下げ作戦が失敗してしまい、思うようにあんはぴエナジーを集めることができなかった。これではまたピックルス様にどやされてしまう。



「だがまあよい、ようやくサイザー様ご執心の小娘が見つかったわ。まさかこんな寂れた喫茶店で働いているとはな……」



 フレイムに魔の手が迫る……ッ!

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