第6話 衣食住を確保せよ!
「済まねえが今募集してるのは力仕事が多くてな。女子供に出来そうな職はねえんだ」
「そうですか……わかりました」
王国民を管理し苦しめる貴族連中と国王を倒すためにエール王国へやってきたが、仕事も住む家もない俺たちは、敵をどうにかする前にまずは衣食住を確保する所からスタートしなければいけなかった。
そういうわけで近くにあった第8エリアの職業案内所へやってきたのだが、(見た目だけは)幼い姉妹の俺たちに出来る仕事はあてがってもらえず。さて、どうしたもんかな。
「それじゃあ、別の所で探してみます」
「ばいばいなのじゃ」
「お嬢ちゃん可愛いねえ。おじちゃんの家の地下牢……じゃなかった、地下室が丁度開いてるから住」
「通報するぞおっさん」
……。
…………。
「やっぱこの見た目じゃ仕事なんてないよなー」
「でも拙者は住む処が見つかりそうだったのじゃ」
「あれはそういうんじゃねえのよ」
多分一生家から出られんぞ。
「あ、あの……」
「そもそも俺、仕事とかしたことないし、てか働きたくない。働きたくない!」
「なんで2回言ったんじゃ」
「その……」
「じゃあサタンは働いたことあるのかよ。魔王は職業じゃないぞ」
「魔王城のお掃除とかたまにしておるし」
「うちの店……」
「それはただの家事ですー」
「おぬしなんか家事手伝いもしないで引きこもっておったじゃろ」
「あの!! プリティ☆デビルさん!!」
「うわっ! な、なんでしょう!?」
「なんでしょうってなんじゃ(笑)」
「お前ちょっと黙っとけ……!」
いきなり話しかけられて変な口調になってしまった。異世界でもコミュ障発揮ですわ。
「あの……」
「あっすいません、えっと、君は……」
「さっきの女子供じゃの」
「女子供やめい」
話しかけてきた女性は、あの木の化け物みたいなボウギャークから助けた女の子たちの姉のほうだった。
「先ほどは助けていただきありがとうございました」
「怪我とかしてない?」
「はい、妹共々無事に逃げることができました」
「それはよかったのじゃ」
ちなみにルナはぬいぐるみのフリをしてサタンが抱っこしてる。いやお前喋ってる所この人に見られてるぞ。
「その、お二人は住む所を探しているのですか?」
「ええまあ、実は地方からエール王国に来たばかりで、働き口と住む場所を探しててさ」
「お金もあまり無いから、宿にも泊まれないのじゃ」
実はデビルアイランドの収入で魔王城に結構資金があったりするのだが、この国に入るときに悟られないよう、ほとんど持ってきてないのだ。せめて仕事が決まるまでの間、宿に泊まれるくらいの金はあったほうがよかったな。
「あの、よかったら私の店に泊まりませんか?」
「なんと! 本当に良いのか?」
「はい。助けていただいた恩を返させてください」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……お世話になります」
「急に敬語使ってどうしたのじゃ」
「うっせ」
「うふふ」
__ __
「喫茶、ペチカ……」
お姉さんの案内でやってきたのは、第8エリアの端にある小さな喫茶店だった。
「元々は両親がやっていた宿屋を兼ねた食堂だったんです。二人が亡くなり、今は妹と二人で細々と喫茶店をやっています」
たったった……
「おねーちゃんおかえり! お客さん? ……あっ!」
奥からフードを被った少女がやってきた。あの時の妹ちゃんだ。
「申し遅れました。私の名前はウェスタ。こっちが妹のフレイムです」
「フレイムです! さっきは助けてくれてありがとう!」
ガバッと頭を下げてお礼を言うフレイム。可愛いなあ。それに引き換えウチの幼女は……
「ん、なんじゃ?」
「なんでもない。俺の名前はマシュマロ林ホワイト。ホワイトって呼んでくれ」
「拙者はサタンじゃ! しばらくやっかいになるのじゃ!」
「へー! 魔王サタンとおんなじ名前だね!」
「そ、そうなのじゃ! 偶然じゃなぐうぜん!」
ご本人登場なんですけどね。
「ん、フレイムちゃん、その耳……」
頭を上げた拍子にフードが脱げてしまったフレイムの頭には明らかに人間のものではない“モフモフの耳”が付いていた。
「あう……」
「実はこの子、ライカンスロープの先祖返りでして」
「ライカンスロープ?」
「オオカミ獣人系の魔族じゃな」
「わたし達の祖父の祖父、そのまた祖父がライカンスロープだったのです。その特徴が今になってこの子に現れまして……」
「魔族と人間族の縁組が禁止されていなかった頃の家系じゃったか」
「祖祖祖ー祖・曾祖父」
「ホワイト?」
「すいません」
現在では魔族と人間が結婚して子供を作ることは禁止されているらしい。
魔族が生きるために必要なはぴねすエナジーは人間族でないと作り出せず、魔族との混血だと、作り出せるエナジー量がかなり減ってしまうとのことだ。
「しっぽもあるよ」
羽織っているローブをめくってモフモフのしっぽを見せてくれるフレイムちゃん。ふーん、良いじゃん。
「なるほど、それで魔族だと思われないように普段は隠してるってわけか」
「いえ、いつも隠している、というわけではありません。お店のお手伝いとかもやってもらっていますし」
「そうなのか。てっきり魔族嫌いの連中から隠しているのかと思うとったんじゃが」
「まあ、そうといえばそうなのですが……」
おや、なにか訳アリのようだ。
「……実は私、国王のお嫁さん候補の1人に選ばれて、少し前まで王城で暮らしていたんです。でも色々あって追放されちゃいまして」
「えっマジっすか!?」
「なんと!」
つ、追放もの……!?
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