第5話 ボウギャ―クをぶっ倒せ!



「ボウギャーーーーク!!」



「な、なんだコイツ~!!」



 悲鳴が聞こえた大通りへ向かうと、そこには巨大なモンスターがいた。



「たしかに、モンスターっていうか……ロボットか?」



 レゴブロックで作った足の生えた木みたいな感じだ。いや足の生えた木ってなんだよ。普通にキモいなこいつ。



「アイツが、王と貴族たちで国民を支配し、管理するために作られた人工ゴーレム……ボウギャークです!」



「あれだけ巨大な人工物がどうやって動いておるのじゃ……?」



 確かに。魔力とかないもんなこの世界。背中にソーラーパネルとかついてんのか?



「ん~、それっぽいのは見当たらないな。じゃあ充電式……石炭とか?」



「何言っとるんじゃおぬし」



「いや、環境にやさしい動力源なのかなーと」



「環境よりも国民に優しくしてほしいルナ」



 それはそう。



「ボウギャークの動力源は“あんはぴエナジー”です。 国民を抑圧してあんはぴエナジーを増やし、それを動力として更に抑圧を強め、支配を推し進めているのです」



「最悪なPDCAサイクル!!」



 さすがにギルティだぜ。



「ギャーッハッハッハ! 国王サイザー様の寵愛を無下にした罪! この第8エリア責任者ピックルス! 様の部下、ビネーガが直々にお仕置きしてやる! いくのだボウギャーク!!」



「ボウギャーーーク!!」



「い、妹に手出しはさせないわ!!」



「おねーちゃん……ッ!!」



「ああっ! 善良な一般国民があきらか敵っぽいヤツとボウギャークの近くに!!」



「た、大変ルナ! どこかに彼女たちを助けられるヒーローはいないのかルナ!?」



 ちらっちらっ



「いや、そんなわざとらしい……」



「拙者たちに任せるのじゃ! プリデビ☆トランスフォーム!!」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「ヒーロー見参! なのじゃ!!」



 コイツマジかよ。



「さあほれホワイト、おぬしも変身するのじゃ」



「いやするわけねえだろ」



『なんだよプリデビ☆トランスフォームって……あっ』



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「えっ!? な、なに!? なんで!?」



「プリデビ☆チョーカーの録音機能で再生したルナ」



「ざっけんなオイイイイイイィ!!」



 というわけで強制的に変身されられてしまった……最悪すぎる……変身は出来ても解除は大変なんだぞ。



「おん? なんだお前ら……って、なんだその破廉恥な恰好は! 恥ずかしくないのか!」



「恥ずかしいに決まってんだろぶっ飛ばすぞ!!」



「拙者は別にもうなんともないのじゃ」



 どうやらこのビネーガとかいう男がボウギャークを操っているらしい。うーむ、ピストルでもあれば1発KOなんだが、そんな便利な物は持ってない。



「俺たちはその、プ、プリ……」



「拙者たちは美少女ヒーロープリティ☆デビル!! 国民に悪事を働く外道め! 拙者たちが成敗してくれるわ!!」



「そ、その通り! 成敗してやるぜ!」



 この金髪幼女、順応力が高すぎる。さすが魔族を束ねる王の器……。



「そこの女子供、今のうちに逃げるのじゃ」



「女子供て」



「あの、あなたたちは……?」



「拙者たちは清貧なる王国民の味方、プリティ☆デビルじゃ」



「さあ、妹さんと一緒に逃げ……妹?」



「うん! ありがとうプリティ☆デビル!」



「お、おう」



 小さい方の女の子、なんかケモノ耳っぽいものが付いてなかったか……?



「逃がすか! いけっ、ボウギャーク!!」



「ボウギャーーーク!!」



「ここは拙者に任せるのじゃ! “インフェルノウォール”!!」



「うわっなんか強そうな技!!」



 ……。



 …………。



「なんも起きないけど」



「あれ? 変じゃの……」



「ボ、ボウ?」



 なんかこう、炎で出来た壁とかが出現すんのかと思ってワクワクしてたのに何も起きなさすぎてボウギャーク共々ポカーンとしてしまった。



「サタン様。大変申し上げにくいルナなんですが……」



「む、なんじゃルナよ。言うてみい」



「サタン様は今はもうただの幼女なので、魔王時代に使っていた魔術はもう使えないルナ」



「……へ?」



「あー……サタン様、ドンマイ」



「…………うぅ」



 あ、やばい。この子ちょっと泣きそうになってる。



「ほ、ほら、代わりにプリ☆デビになったんだから、なんか必殺技とか使えるかもしれないぜ。なあルナ?」



「そ、そうルナ。戦ってるうちに何か使えるようになるかもしれないルナ」



 今は使えないんかい。



「……うむ。じゃあがんばってたたかうのじゃ」



「よしよし、じゃあお姉ちゃんといっしょに頑張ってボウギャーク倒そうね」



「いやおぬしは子供部屋ヒキニートじゃろ」



 一応相棒なんだから合わせろや。力とかノリとか。



「な、なんだ驚かせやがって……やってしまいなさいボウギャーク!!」



「ボウギャーク!!」



 ズズ……と巨大な足で踏みつぶそうとしてくるボウギャーク。少しくらい美少女に手心とかないんか?



「やべっ避けないとおおおっ!?」



 ボウギャークの攻撃を避けるために横へ走ったら、速すぎて建物に激突しそうになった。めちゃめちゃ身体能力がアップしてんじゃん!



「サタン!」



「うむ!」



 俺のありえないほど素早い動きを見て、サタンもなんとなく分かったらしい。



「なにやってんですかボウギャーク! さっさと押しつぶしなさい!!」



「ボ、ボウギャーク!」



 今度はサタンを狙い、踏みつぶそうと足を上げるボウギャーク。



「今がチャンスルナ!」



「いくぞサタン!」



「やるのじゃホワイト!」



 地面を強く蹴り、ものすごい飛脚力でボウギャークの上まで飛びあがる俺とサタン。



「な、なに!?」



「くらえ!」



「くらうのじゃ!」



 俺たちの協力必殺技……ッ!!



「プリデビ☆ドロップキック!!」

「プリデビ☆かかと落としー!!」



 ゴスッ!!!!



「ボ、ボウ、ギャー……ク」



 バランスを崩したボウギャークが仰向けに崩れ落ちる。なんかちょっと技名が合わなかったけど、まあいいや。



「今だルナ! ホワイト、“プリデビ☆はっぴねす”って唱えるルナ!」



「え、なに? プリデビ☆はっぴねす?」



 パアアアアアア……



「コウフーク……」



 コトン。



「……植木鉢?」



 ルナに言われた謎の呪文を唱えると、ボウギャークはまるで成仏するように消えていなくなり、そこには1本の植木鉢が残されていた。



「ま、まさかボウギャークがやられるなんて……クソッ! 次はボッコボコのギッタギタにしてやりますよ!!」



 ビュン!



「あっおい! あの野郎……どこいきやがった」



 ビネーガとかいうボウギャークを操っていたヤツは気付いたら姿を消していた。あと戦いによって壊れた周囲の建物も元通りに修復された。なんの力?



「いえーい! ボウギャークを倒したルナ!」



「やったのじゃ! 正義は必ず勝つ! のじゃ」



「テンション高いなおい」



 あ、いつの間にか変身が解けるようになってるじゃないか。ボウギャークを倒してはぴねすエナジーが増えたのだろうか。



「流石です魔王様! まさかあのボウギャークを倒してしまうなんて」



「はーっはっはっは! 拙者はこんな姿になっても最強じゃ!」



「そうルナ! ボウギャークなんて敵じゃないルナ!」



「あんま調子のってると痛い目見るぜ」



 まだ最初の雑魚敵を倒したようなもんだからな。チュートリアルだチュートリアル。



「それじゃあこの調子で……」



「王城に乗り込むのじゃ!」



「住む家と仕事を探すルナ」



 ……。



 …………。



「「えっ?」」

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