第2話 デビルアイランドで遊ぼう!



「……」



 スッ、ペタペタ……



「な、無い……」



 お、俺の、ミラクルステッキが……無い……ッ!!



「なーに股間まさぐっとるんじゃ変態かおぬし」



「だってよぉ! 俺の相棒が」



「拙者だって失っとるんじゃ甘えるなボケェ!」



 いや情緒不安定かよ。お互い。



「どうしてくれんだよマジで。手術でダークヒーローになって、王国の薄幸庶民ガールを助けまくってモテモテになるって覚悟決めかけてた所だったのによお……」



「しょっぱい覚悟じゃのう」



「ロリガキは黙ってろ」



「なんじゃと!」



 うわ、コイツさっきまで大魔王☆筋肉モリモリマッチョマンの変態サタンだったのに今はただのロリ萌え幼女先輩じゃん。



「俺と一緒にアイドル活動! やるか?」



「はあ、おぬしの言ってることはほぼほぼ意味が分からんのじゃ。正確に言うと99.5%くらい」



「工業用のアルコール濃度かよ。せめて70%くらいにしてくれ」



 お兄ちゃん泣いちゃうよ。いや今はお姉ちゃんだった。泣きそう。



「くっそ~あのインチキウサギめ……なにが大天才だよ大爆発してるじゃねーか」



「それはおぬしが大人しくケミカルDを飲まんからじゃ」



「あんな危険なもん飲めるかい」



 そういやあのルナとかいうウサギ野郎の姿が見えないな。どさくさに紛れて逃げたか?



「二人とも無事ルナ!?」



「……ん?」



「まあ、無事は無事じゃが……誰じゃ?」



「こっち! こっちルナ!」



 足元からピーピー甲高い声が聞こえる。なんだ?



「実験失敗しちゃってごめんなさいルナ。でも二人ともとってもキュートになったルナ!」



「……え、誰お前」



 声の聞こえた方へ視線を向けると、そこには白衣を着た小さなのウサギのぬいぐるみがいた。なぜか首にガスマスクをかけている。なんだこれ、治安の悪いシルバ〇アファミリーか?



「……その姿、おぬしまさかルナか?」



「えっ!?」



 このちっこいぬいぐるみが!?



「さすがサタン様、よく気付いてくれたルナ! ルナはルナルナ!」



「お前その語尾やめとけって」



 ルナを2回言っちゃダメだって。異世界ならセーフか? アウトでしょ。



「ルナだって好きで言ってるんじゃないルナ。あの爆発の影響で見た目も喋り方もこんなんになっちゃったルナ」



「ルナも可愛くなったのじゃ」



 萌え萌え成分でも入ってたんかあの薬。



 __ __



「ハア……それで、これからどーすんの?」



「まさかこんな姿になるとはのう」



 ルナが『元に戻す方法を考えるルナ!』とか言って研究室に引きこもってしまったので、俺と魔王はその結果待ちということで、暇を持て余していた。



「まあせっかくじゃし、デビルアイランドの中を案内してやろうかの」



「おっ気が利くじゃん」



 ここで悩んでても仕方ないし、テーマパーク化してる魔族の島とかちょっと面白そうだしな。



「というわけで、俺は元魔王のロリロリ幼女先輩にデビルアイランドを案内してもらうことにした」



「おぬしは誰に説明しとるんじゃ。あとそのロリロリ幼女っていうのやめんか」



「じゃあサタンちゃんね」



「うむ」



 良いんかい。



 ……。



 …………。



 テンテケテンテン♪テンテンテケテケ♪



「なあ、このBGM大丈夫か?」



「うん? 何がじゃ?」



 デビルアイランドを案内してもらうため、とりあえず入り口ゲートまでやってきたんだけど……。



「すげー聞き覚えあるんだよなあこの曲」



「トライトーンという、音楽が好きな魔族に作ってもらったのじゃ」



「じゃあオリジナルかあ」



 うん、あまり深く考えないようにしよう。



「さあ付いてくるのじゃマシュマロ林……いやホワイトよ! 拙者のイチオシアトラクションに案内するぞ!」



「へいへい」



 そのテンションはもう完全に家族で遊園地に来たワクワクキッズやん。



 アトラクションその①:デスベアーさんのヒューマンハント



「アアアアア!! 久々ノウマソウナニンゲンンンン!!!!」



「うわああああああ!!!!」



「拙者は魔王サタンじゃ!! サタンなのじゃー!!」



「初手からやべえやつじゃねえかー!!」



 全然アトラクションなんかじゃねえだろ!! こんなん死亡事故不可避だって!!



「あ、あれは迫真の演技なのじゃ! ベアーさんの好物はハチミツなのじゃ!」



「じゃあサタンちょっと捕まってみてよ」



「それは遠慮しておくのじゃ」



 アトラクションその②:スプラッター・マウンテン



「ヒャーハハハー!!」



 ヴィイイイイイン!!!!



「うわああああああ!!」



「アイツは木こりのジェイソーくんなのじゃ! この山で30分間ジェイソーくんから逃げきれたらお食事半額券がもらえるのじゃ!」



「割りにあわねええええ!!」



 アトラクションその③:イッツ・ア・ゴブリンワールド



「オンナダ」



「オンナ、キタ」



「ヨウジョダ」



「ヨウジョ、キタ」



「ゴブリンは男しか生まれないから種族問わず女に飢えてるのじゃ。色々気を付けるのじゃ」



「世界一体験したくないワールドじゃねえか」



 ……。



 …………。



「はあ、なんかドッと疲れた」



 休憩がてらベンチに座って、屋台で売ってた謎のミートパイを食べる。なんの肉だろう。いや、深く考えるのはやめよう。



「モグ……あ、結構美味いわこれ」



 あれからもいくつかアトラクションを回ったが、なんというか、全体的にホラー寄りだった。



「なあ、本当に今まで人間族で大盛況だったんか? ここ」



「王国では味わえないスリリングな体験ができると好評だったのじゃ」



 この世界の人間、娯楽に飢えすぎだろ。



「それにしても、誰も拙者の正体に気づいてくれなかったのじゃ……」



「いやまあ、その見た目じゃあなあ。しょうがねえよ」



 多分、人間族の姉妹が二人で遊びに来てくれた~くらいにしか思われてないだろう。



 たったったった……



「サタン様~! マシュマロ林~!」



「あ、ルナじゃ」



「おいルナルナ野郎マシュマロ林って呼ぶのやめろや」



「二人を元に戻す方法が分かったような気がするルナ!」



「なに!? それは誠か!!」



「なんか曖昧だなおい」



 やれやれ、これでこの萌え萌え美少女ボディともお別れか……短い間だったけど、中々悪くなかったぜ。



「それで、俺たちを元に戻す方法ってのはなんなんだ?」



「人間族の王様をぶっ殺すルナ!!」



「は?」



「なるほどのう」



 それはもうリアルスプラッターやんけ。

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