異世界ヒーロープリティ☆デビル~魔族と組んで腐った王政から民を救います!~

ふぃる汰@単行本発売中

異世界召還・第8エリア解放編

第1話 女の子になっちゃった!?



「いけ、そこだー!」



 ここは平和な国、日本。



「ああっ……! 敵の攻撃が!」



 待ちに待った、日曜日。まあ俺は毎日が日曜日みたいなもんだけど。



「くそっ! 卑怯な手を使いやがって!」



 早起きをして、大好きなテレビアニメを視る。至福の時間ってやつだ。



「いいぞー! 負けるな! 頑張れ!」



 なんのアニメかって? 日曜の朝、ニチアサに視るアニメなんて決まってるだろ? それは……



「がんばえ~! ぷ〇きゅあ~!!」



 (オマエが頑張るのじゃクソニート!!)



 パアアアアアアアア……!!



「えっ?」



 なんかモニターが急に光り出した。あれ? 俺のニチアサは?



「う、うわあー! 吸い込まれる! テレビから謎の吸引力が!」



 (オマエも働くのじゃ!!)



「うわっちょっもう体半分入っちゃってるって! い、嫌だあ! 俺は働かない! 働いたら負けなんだああ!!」



 パアアアアアア……



 こうして俺は、唐突にテレビに吸い込まれて異世界に飛ばされたのだった。やっぱダメだな、ダイソ〇製のテレビは。



 ……。



 …………。



「はっ!」



 目が覚めると知らない天井だった。



「え、なんか身体が動かないんだけど。あれ?」



 かろうじて動く頭を傾けて、周りを見渡す。……なんか手足を台の上に固定されてるっぽい。なにこれ、ガリバー?



「ふん、やっと目を覚ましおったか」



「あ、あんたはテレビから聞こえた声の……って、ええー!? でっか!! 顔こっわ!! ツノ生えてる!!」



 なんかゲームのラスボスみたいなやつがこっちを覗き込んでいた。もしかして俺、ここで死ぬんか?



「オマエ、自分のことは覚えておるかの? ちょっと自己紹介してみるのじゃ」



「俺? 俺の名前はマシュマロ林ホワイト! 21才! 拳も唸る男の中の漢! ネオニートだぜ!」



「あー覚えておるようじゃな。てかなんじゃマシュマロ林って。ふざけた名前じゃの」



 しょうがねえだろ苗字は。全国のマシュマロ林さんに謝れ。



「それで、俺はなんでこんなことになってんだ?」



「拙者は魔王サタン! ここ“デビルアイランド”の主である!」



「人の話聞けよ! ……え、なに? 魔王? デビル?」



 なんとなく、転生して異世界に来ちゃったかな~、コイツ見た目的に悪魔側かな~とか思ってたけど、マジで王国貴族とか勇者とかじゃなくて魔王サイドなの? なんで?



「オマエはこの魔王サタンが召還したのじゃ!」



「ええ……? 何故に?」



 勇者が攻めてきたときの囮にでもする気か?



「それはじゃな……ルナ! ルナ博士はいるか!」



「ははっ。魔王様。ルナはこちらに」



「えっなに? ウサギ? なんで白衣着てんの?」



 白衣を着たウサギの着ぐるみみたいなヤツが現れた。首からガスマスク下げてる……何故に?



「こやつはルナ。デビルアイランドの技術開発責任者にして、大天才のジーニアスなのじゃ」



「いやそれ同じ意味じゃ……」



「マシュマロ林、アナタは今から改造手術によって、最強のダークヒーローに生まれ変わるのです」



「手術!? ダ、ダークヒーロー!?」



 麻酔は!? 全身麻酔はないんですか!?



「お、おい魔王サタンとかいったな、どういうことか説明してくれよ!」



「よかろう、お主には聞く権利がある。手術の前に全てを話すのじゃ」



 手術は確定なのかよ。



「ここは、終末世界ウィーケンド。お主からしたら、異世界っていうやつじゃの」



「異世界、ウィーケンド……」



 終末ってか週末じゃねえか。



「この世界にあるのは、大きな大陸と小さな島が1つずつ。人間族が住むワンデイ大陸と、魔族が住むデビルアイランドじゃ」



「なるほどな、それで人間族と魔族は血で血を洗う争いを繰り広げて……」



「いや、別に戦争とかはしておらんぞ。お互い船とかで行き来できるしの。そのうち水中トンネルも建設する予定じゃ」



「仲良いのかよ!!」



 えっ!? そんなことある!? 血沸き肉躍る人魔戦争は!?



「それが、今はそうでもなくての……最近はあんまり会ってすらもいないのじゃ」



 別れる寸前のカップルかよ。



「それで、俺がダークヒーローになるって話はどっからきたんだ?」



 まあ仲良いに越したことはないけど、お互いに干渉してないなら別によくないか?



「拙者たち魔族の栄養源は、人間族が幸せを感じたときに出る“はぴねすエナジー”なのじゃ」



「はぴねすエナジー……?」



 魔王サタンの話では、この世界の魔族は人間族、つまり人が幸福を感じたときに出す、はぴねすエナジーというものを吸収して生きているという。

ちなみに魔族がはぴねすエナジーを吸収したとしても、人間が不幸になったり、なにか影響が出ることはないらしい。



「そして拙者たちは考えた。デビルアイランドをテーマパーク化して、人間族に遊びに来てもらって、はぴねすエナジーを増やしてもらおうとな!」



「ディスティニーランドのキャストかアンタは」



 それかモンスターズ〇ンク。



「ドラゴンに乗って島を一周したり、イッツアゴブリンワールドなんかが人気アトラクションじゃな。魔王城をホテルに改築してあるからお泊りもできるぞ!」



 なんだよそれ。めっちゃ楽しそうじゃん。



「少し前までは、観光に来た人間族で賑わっておってな。みな楽しんでくれて、はぴねすエナジーも大量で、お互いWIN-WINって感じだったんじゃが」



「最近は違うのか?」



「大陸には、エール王国という大国があっての。そこの国王が変わったのじゃ。そしたら、その国の人間たちがバッタリと来なくなってしまっての。今となっては、国外の小さな集落や、村の人間たちがたまに来るくらいじゃ」



 はぴねすエナジーを吸収するのに物理的な距離は影響しないので、王国内で国民が幸せでいるならそれでOKです。という感じではあるらしい。



「デビルアイランドに来てくれなくても、国民達が日々を謳歌してくれていれば、拙者たちは干渉せずともよいのじゃが……」



「そう言うってことは、もしかしてはぴねすエナジーが減ってきてるのか?」



「その通りじゃ。そして拙者は、エール王国に住んでいる魔族たちと連絡を取り合い、王国の現状を知ったのじゃ」



「お、王国はどうなっていたんだ……?」



「続きは手術後で」



「うおおおい待ってくれよ!! めっちゃ気になるじゃん最後まで話してくれよ! 手術! 手術ちゃんと受けるから!」



「まったくしょうがないの~」



 俺はすべてが知りたくなったのだ。改造手術で記憶を失い、無差別破壊する悲しきモンスターになる前に。いやどうなるか知らんけど。



「新しく国王になったやつがちょっと良くないらしくての。国民に圧政を強いて、一部の貴族連中だけが良い暮らしをしておるらしい。しかも魔族嫌いとかで、デビルアイランドへの行き来を禁止しておるのじゃ」



 国内に住んでいた魔族たちも追い出されないよう、隠れるようにひっそりと暮らしているらしい。



「そんなことをすれば、はぴねすエナジーが減ってしまうのも当たり前だな」



「魔族嫌いの国王のことじゃ、そうやって間接的に魔族を弱らせているのかもしれん」



 なるほどな……。国王、見たことないけどいけ好かない野郎ってことは間違いねえな。彼女とかいなそう。俺もいないけど。



「というわけでマシュマロ林ホワイトよ! ダークヒーローになって国民を圧政から救い出すのじゃ!」



「フルネームやめろや! って、あーなるほどそういうふうにつながるのね! いやーどうでしょうねぇ俺なんかが行ったところで」



「ルナ! ルナ博士! こやつに処置を」



「ははっ魔王様。準備は出来ております」



「嫌だー! 平和なニチアサジャパンに帰してくれー!」



「大天才ジーニアスのルナが開発したこのケミカルDを飲むのだけじゃ! それでお主は勧善懲悪のダークヒーローじゃ」



「それダークヒーローじゃねえよ! てかケミカルDってなんのD? デビル? ダーク?」



「デストロイですね」



「うわあああやめろおおおお!!!!」



「オイこら暴れるなっこのっ」



 ポーンッ



「あっ」



「まずい! ケミカルDがなんか精密そうな機械に!」



「伏せるのじゃー!!」



「えっ!? 伏せって、ちょっ無理、待っ」



 ドッカアアアアアアアアアン!!!!



 ……。



 …………。



 ああ……俺、死んだんかな……こんなわけわからん世界で……せめて今シーズンのニチアサを完結まで見たかった……



「……ん、死んでない?」



 爆発によって、縛られていた台から落ちたらしい。手足も自由に動かせる。



「よっしゃラッキー! 天は俺に味方した! 今のうちに逃げ……ん?」



 なんか、声の調子がおかしい。声変わりする前に戻ったみたいだ。



「いや、声変わりどころか、なんか普通の女の子みたいな……」



 ぷにっ



「あれ?」



 なんだか身体がぷにぷにしている気がする。鍛えてないとはいえ、もうちょっと筋肉質だった気がするんだが。



「手もなんだか小っちゃくなった気がするし……視界も低くなった、かも」



 ど、どういうことだ……?



「ふぃ~、ひどい目にあったわい」



「ま、魔王サタン! いや違うか、誰だアンタ?」



 魔王の声はもっと渋くてハードボイルドな感じだ。こんな萌え萌え☆きゃぴきゃぴボイスじゃない。



「いや、何を隠そう拙者こそが魔王サタンじゃが……って、オマエもしかしてマシュマロ林か!? わーっはっはっは! なんじゃその姿は! オマエ、女になっとるじゃないか!」



「魔王サタン!? アッハッハッハ!! お前なんだよそのロリロリ幼女な見た目は!?」



「……え?」



「……は?」



 もしかして俺たち、女の子になっちゃった……!?

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