第3話 変身! プリティ☆デビル



「というわけで、さっそく王様をぶっ殺しにエール王国へ行くルナ!」



「行くのじゃー!」



「ちょーいちょいちょいちょい待てい!!」



「ちょいちょいうるさいのう」



 展開が急すぎて今までのんびりニートスローライフしてた俺にはついていけねえよ。



「もうちょっとその~詳しくですね、王様ぶっころ計画のお話ってやつを聞かせてくださいよルナちゃんパイセン~」



「しょうがないルナね~」



 意外と語尾の融通が利くなコイツ。



「ここだと周りの目があるからいったん魔王城ホテルに戻るのじゃ」



「社外秘ルナ」



「あ、うん」



 城よりもホテルがメイン扱いでいいんだ。



 ……。



 …………。



「それで? なんでいきなり王様ぶっ殺すとか物騒な話になってんだ?」



「説明する前にこれを二人に渡しておくルナ」



「なんじゃこれ。罪人の首輪か?」



「いや言い方言い方。どっちかっていうとチョーカーだろ。アクセだよ」



 こう見えてもファッションには詳しいのだ。なんてったって女児向けコーデバトルなアイドル活動ゲームをやり込んでるからな。



「こうやって首に付けるんだ」



 お、結構似合ってんじゃん俺。いやまあ鏡みても顔の良い知らん女が写ってんだけどさ。



「む、うまく付けられないのじゃ」



「貸してみ。ここを通してっと……よし、できたぜ」



「おおー。どうじゃ? 拙者にもチョーカー似合ってるか?」



「あーはいはい、可愛い可愛い」



「えへへ」



 俺の前には首輪を付けたニコニコの金髪幼女が。若干、というか普通に犯罪臭がするけど黙っておこう。



「うんうん、二人ともとっても似合ってるルナ! それはプリデビ☆チョーカーって言って、プリティーな美少女ヒーロー、“プリティ☆デビル”に変身できるアイテムルナ!」



「は? 美少女ヒーロー? プリティデビル?」



「プリデビ☆トランスフォーム! って言うと変身できるルナ。ちょっとやってみるルナ!」



「やるわけないだろ。なんだよプリデビ☆トランスフォームって……あっ」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「うわあああなんか身体が光り出した! あとなんだこのBGM! どっから流してんだよ!」



「全部チョーカーの機能ルナ」



「ニートのくせに眩しいのじゃ」



 それは関係ねえだろ。



 パアアアアアア……!



「……あれ、終わった? 俺、今どうなってんだ?」



「とってもキュートルナ!」



「ほれ、鏡じゃ」



 サタンから向けられた鏡には、クッソ丈の短いスカートとお腹丸出しのトップスを着た、なんというか、チアリーダーというか、レースクイーンみたいな恰好をした知らない女が写っていた。



「なんか股がめっちゃスースーするんだけど……こ、こんな格好で戦えるわけねえだろ……」



 んだよこれ、甲子園の応援にでも行くんか? 野球部の男子も試合どころじゃなくなるぞマジで。



「さあ、サタン様も変身してみるルナ!」



「せ、拙者は遠慮しておくのじゃ……」



「サタンちゃ~んそれはちょっと世間が許してはくれませんよ」



 俺だけこんな格好させられるなんて我慢ならねえ。一緒に地獄に落としてやるぜ。



「人によって変身後の服装は違うルナ。サタン様はこんな破廉恥な恰好じゃないかもしれないルナ」



「おい」



 破廉恥ってなんだよ。お前が開発したんだろこれ。



「そ、そこまで言うなら仕方ないの……プ、プリデビ☆トランスフォーム……」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「この無駄に凝った演出はどうにかならんかの」



 まあ変身バンクは省略しないのが正義だからな。



「この異常に眩しい光はなんなんだ?」



「光がないと色々見えちゃうの」



 ああ、変身中に1回全裸になるパターンなのね。セーラー〇ーンじゃん。



 パアアアアアア……!



「……む、拙者、今どうなっとるんじゃ?」



「サタン様とってもかわいいルナ!」



「フリッフリだなおい」



 ベースのチア服みたいなのは俺と一緒だけど、サタンの方は裾にゴスロリチックなレースが付いていて、なんというかお人形さんみたいだ。



「こ、こんな出で立ちで戦になんぞ行ける訳がなかろう……!」



「武士じゃん」



「それじゃあ早速、人間族の国へレッツゴールナ!」



「いやだからこんな格好で人前に出れるかい。先に変身解いてくれよ」



「変身の解き方は、色々試したけど良く分かりませんでしたルナ」



「なんでだよ! 使えねえまとめサイトみたいな言い方しやがって。ったく……」



 ガチャガチャ。



「なあ、このチョーカーなんか外れないんだけど」



「それは目的を達成するまで外れないルナ」



「は? 目的?」



「はぴねすエナジーを手に入れる為、国王をぶっ殺して国民を圧政から救うルナ!」



「……もしかして、それが達成するまで外せないのじゃ?」



「そうルナ」



 ……は?



「いやいやいや、ルナちゃんさ~、冗談はよしてくれ」



「もう設定しちゃったルナ。解除方法は良く分かりませんでしたルナ」



「なんで全部やりっぱなしで作ってんだよ!」



 いかがですか? じゃねえんだよアフターサポートしっかりしろよ!



「冗談ルナ。実は、プリデビ☆チョーカーの解除には大量のはぴねすエナジーが必要ルナ」



「それなら今までに貯蔵してきたはぴねすエナジーがあるじゃろ。あれを解放すれば」



「プリデビ☆チョーカーを作るのに全部使っちゃったルナ」



「オオオオイ!!」



「なにやっとんのじゃ貴様ァ!!」



「ご、ごめんなさいルナ~;;」



 今更かわい子ぶったって許せねえぞマジで。



「ったく、しょうがねえな~ルナちゃんは」



「お主、意外とちょろいな」



 うっせ。



「それじゃあ改めて、人間族の国、エール王国へ出発ルナ!」



 こうして俺たち2人と1匹は、変身衣装の解き方も分からないまま、デビルアイランドから人間族が住むワンデイ大陸へと旅立つのであった。

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