閑話その② 鬼島令が吸血鬼になった頃の話

 二週間です。一日が十四回も過ぎ去るという途方もない時間。

 高校生活二年目初日。一学期の始業式で別れてからずっと音信不通で行方不明だった幼馴染は……女連れで帰ってきました。


 それもおっぱいのでけぇ絶世の美女を。


 そしてのほほんとした顔で「紹介する。吸血鬼のライラだ」なんて電波発言。

 そりゃあもうブチ切れましたとも。無言でその場を立ち去ってやりました。


 ……けどアイツは、私を追っては来ませんでした。


 新しく仲良くなった女にご執心で、心配していた幼馴染のことなんて二の次でした。


 ──それからです。ずっと続けてきた、変わらなかった関係が狂いに狂いはじめたのは。


 行方不明前は遅刻ギリギリでも毎日学校には登校してはいたのに、吸血鬼になってからのアイツはそれすら疎かになりました。

 なんでも偽善活動だった人助けがグレードアップして化け物退治に変わり、学校に通う暇がないとかなんとか。

 でもアイツの顔はイキイキとしていて、凄く楽しそうで。


 だから止めることもできなくて。


 そうして私とアイツとの距離は少しずつ離れていきました。


 ……それが癪だった私は、行動しました。

 眼鏡をやめてコンタクトにし、行ったこともないゴージャスでマーベラスな美容院に行って髪を切り、ついでに勇気出して茶髪に染めてやりました。それからはもうプライドをかなぐり捨ててファッション雑誌を買い漁って猛勉強し、慣れない化粧も始めてオシャレにも気を使い、今まで喋ったこともない学校の陽キャでパリピなグループとも交友を広げ……私は遂にギャル化を果たしました。勿論それだけにとどまらず勉強にもより力を入れ、学年九位へと躍り出ました。


 ええそうです。


 ただの『普通』の幼馴染から、オタクに優しいギャルでインテリな幼馴染属性へと進化したのです。

 これも全部、オタクなアイツの目に少しでも止まってほしくて。


 でも…………一度離れた距離が縮まることはありませんでした。

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