第28話 推しのお仕事

「次のゲストは、夢喰ナイトメアさんです。よろしくお願いします」

『どりーみー、さまよえるメリーたち。メアに悪夢を捧げる準備はできていて?』

「はいっ、挨拶ありがとうございます! いやぁー、ナイトメアさん。コラボカフェの応援リレー、間に合いましたねぇ~。体調不良で活動休止と伺っていたのですが、まさか直前で復活! ドタキャンならぬドタシュツですよ!」


『運営さんに迷惑をかけてごめんなさい。けれど、メリーたちの応援が響いたわ。メアの不在、それ以上の悪夢は見つからないって。』

「ははぁ~、リスナーに恵まれましたね。さて、Vtuber Café略してVカフェのコンセプトは――推しのVtuberを身近に。コラボ商品や限定アイテムを数多く取り揃え、イベント参加優先権などが手に入る特典満載なカフェとなっておりまして!」


『メアをイメージした睡眠の質向上ドリンク・夢魔の涙もラインナップ――え、わたしの涙を飲むのかしら? さっきの試飲、カモミールとラベンダーのブレンドティー……』

「そこは、イメージですから! ※実物の商品とイメージの仕様が異なる場合がございます! はい、テロップ入れたのでオッケーです!」


『真面目に答えてしまったわ、忘れてちょうだい。夢の住人が悪夢を食らうために、気付けば俗世に染まってしまったみたい』

「そんなこともありますありますって。ナイトメアさんのコラボ商品・夢魔の涙を購入したお客さんには、オリジナルコースターやクリアファイルをプレゼント中。たくさん注文していただければ、サイン入り色紙や非売品グッズが当たる抽選券を配布します。リスナー方、どしどしじゃんじゃんオシカツしてくださぁーい」


『メアも売上に貢献することで、現世での活動がさらに広がるわ。メリーたち、供物の列を作りなさい』

「訓練された生贄の皆様、Vを支えるのはあなたたちですよ! ……ところでナイトメアさん、私も最近眠りが浅くて疲れが取れないんですよねー。ぜひ、改善した秘訣を教えてください」


『そうね、メアの場合……枕かしら? 思いきって、変えてみたわ』

「オーダーメイド枕ってやつですか? やっぱり、高級品は違います?」

『安眠にピッタリな抱き枕を偶然見つけたの。費用は全然かかってない。けれど、ある意味高くついたかしら?』


「ほほう! 意味深ですねえ」

『一度使うと効果てきめんで、手放せなくなるから。アレがないと快眠できないじゃ、始末に悪いじゃない? ほんとはホテルに持ってきたかったのに、来な――しまい忘れてしまったの。ちゃんと確認して、バッグに詰め込むべきだったわ』

「大事なものはきちんと管理しないとダメですねー。私もよく、提出データを忘れちゃいますからー。いやほんと、ホントにあるんですっ。USBの中に!」


『今宵の帳は長くなりそうだわ。メリーたち、悪夢を抱えて集いなさい』

「はい、配信のお知らせをしたところでそろそろお時間となりました! 以上、今回のゲストは夢喰ナイトメアさんでした! あとで本人もVカフェを満喫するそうです」


『メアのイメージを崩したくないから、お客さんが少ない時にこっそりお邪魔するわ。知り合いのVtuberや新しい子の研究が捗りそうで楽しみよ』

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