01-11.友人
全高20m程度の巨大人型機動兵器の総称。
Mobile・Knightの頭文字を取り、MKと記載される。呼称する場合はモビルナイトと呼ばれるのが一般的。
人間と同じく四肢が有り、多様な機種が存在するが、その多くは人間のように二足歩行型。
第一世代と呼ばれる初期型は複数名でのオペレーションが必要だったが、アカギ教授が開発した高性能OSが普及し、1名のパイロットで操縦する事が可能になった。
とはいえ操縦自体が簡略化された訳ではなく、あくまでOSによる素早い操縦補助が可能になったに過ぎず、その操縦には非常に高い技量が要求される。
そう、やはり
だから本来なら経験豊富なベテランパイロットを試作
けどそれじゃダメだ、と思う。
アイツはあの時、軍を率いていた。現場は混乱していて当事者である僕は当然、全容なんか掴めるはずはないんだけど決して小規模な軍では無かった。
少なくとも数機の
そんな規模の部隊を率いる事ができるという事はアイツの後ろにいる組織もそれなりに大きいといえる。
資金もそれなりに潤沢だろうし、バックには社会的地位がある人物も控えているだろう。
そんな大きな組織を相手にしようとしている。いや、何も正面からぶつかろうとしているわけじゃないんだけどね。
『そっちが来るなら、こっちも行くぞ』とアイツの手に及ばない場所から牽制するための試作機だ。
アイツの動きを抑制できればとりあえずはリオを守る事が出来るはず。少なくともあの日からは。
話が逸れたけど、兵卒ならともかくフラッグシップ機になるであろう試作機は信頼のおける人物に任せたい。信頼できるベテランパイロットの当ては僕にはない。となれば1周目の防衛学園で出会った
試作機2機のパイロットは僕とアイツ。これは譲れない。
防衛学園ではなく、操縦訓練が非常に充実しているアカデミーで自分を磨くべきだ。
「……けど、どうやって引き込もう」
そう、僕はそれに頭を悩ませていた。
アイツが通っている学校は知っているし、ここからそう遠くない。会いに行こうと思えば今からでも会いに行ける。
でも会いに行ったとしてどうする。
正面から会いに行って事情を話しても頭のおかしいやつだと思われて話は聞いてもらえないだろう。
それにアイツは防衛学園に入った後からパイロットとしての素質を開花させていった。
パイロットへの夢は持ってはいるが、その素質には未だ気付いていない。というか交流もないのに熱心に口説いたとしても不信がられるだけだ。
それとも逆に弱みに漬け込むか……いやバカな。そんな最悪な出会い方をしてしまったら関係の修復など不可能だ。
アカギ教授の時みたいに1周目の時の知識を活かせないか。
アイツは何が好きだった、趣味は、友人関係は、家族は、何をすれば喜ぶ。僕が何を言えば心を掴める。
『……困った事があったら言えよ。その、親友、だと思ってんだからな』
「……」
最低だ。僕は。
防衛学園での泥沼のような人間関係。その中でアイツは数少ない友人のひとりだった。その中でも親友と呼べる唯一の存在。
そんなかけがえの無い友人に僕は何をしようとしていた。
自分の都合だけを考えて、どうすれば親友の心を掴めるかで頭を悩ませていた。しかも僕は何を考えていた……本当に最低だ。
僕の都合で親友の人生すらねじ曲げようとしている。自分がやろうとしていた事に気がついて吐き気がした。
確かにパイロットとしての素質はある。防衛学園ではダントツだった。
けど、パイロット以前に僕のかけがえのない友人じゃないか。
僕の部屋で朝までゲームをしていた事もある。ゲームの勝ち負けでケンカした事もあった。
あの時は結局どうしたんだっけ……ああ、そうそう。掴みあってても仕方ないからゲームで勝負しようってなったんだ。
「……ははっ」
親友と過ごした5年間は本当に楽しかった。
陰湿なイジメや嫌がらせが蔓延する学園だったけど、友人のおかげで乗り切れた。
その記憶を共有する仲間がいない。
あの5年間の記憶は僕だけのものになり、実際には未だ何も起こっていない幻になってしまった。
その事がどうしようもなく胸を締め付けてくる。
僕はまた親友と過ごしたい。繋がりたい。
パイロット。それは何とかなる……。
僕のワガママで友人の人生をねじ曲げるなんて出来ない。けど、僕は、やっぱりこの2周目の世界でも友人でありたい。
パイロットとしての力は確かに貸して欲しい。リオを守るために力を貸して欲しい。また起こるかもしれない戦争を止める力を貸して欲しい。
けどそれは二の次だ。
僕は、またアイツと話がしたい。
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