01-02.再会
彼女は首をコテンと傾げ、言葉を失った僕を覗き込むように見つめている。
「あ、ああ……」
上手く言葉が出てこない僕はリオのつま先から頭の先まで視線を何往復もさせてしまった。
確実に貫かれた〝ライラック〟のコクピット。地獄のような風景がフラッシュバックする。
そんな僕をリオは訝しげにみて言う。
「どうしたの? 遅いと思って見に来てみたらすごい顔だよ? まさか先生に『防衛学園は無理だー』とか言われたの?」
僕は一歩、また一歩とリオに歩みよる。
「リオ、なのか……?」
「え、ちょ、本当に大丈夫「リオっ!!」――っ!?」
気づいた時には僕はリオを抱きしめていた。
僕のせいで……!
僕のせいで……!
「ご、ごめんリオ! 僕は、僕は……っ!!」
「え、ええ!? ちょ、こ、こここコータ!?」
突然の僕の行動にリオは目を白黒させて驚いたようだった。けれど僕はそんなリオにひたすら謝罪をする。
「リオが、僕を……う、うわぁ……ううっ……!」
「ちょ、も、もう。どうしたの、本当に。先生に何か言われたの?」
しばらくするとリオは、辿々しく、しかし優しく両手で僕を抱き返してくれた。そして今度は落ち着いた声で言う。
「……何があったか分からないけど、とりあえず落ち着いて」
僕とリオはしばらくの間、誰もいない校舎の廊下で抱き合っていた。次第に涙は止まり、気持ちがかなり落ち着いてきた。
「……どう? 落ち着いた?」
「う、うん。ありがとう、リオ」
僕がそういうとリオは僕から離れる。
泣き止むまでずっと抱きしめて頭を撫でていてくれたリオは少しだけ照れたようにそう言った。
「ふふっ、いきなり泣き出すんだもん。ビックリしちゃったよ」
「う、うん、ごめん……それと、その、抱きついちゃったことも」
「あは、あははっ。ま、まぁ仕方ないよ。その、イヤ……じゃないし……」
そう言うリオは真っ赤に頬を染めると、自身の黒髪を両手で掴んで口元を隠した。照れた時にやるリオの癖だ。
そうだった、僕たちはいつもこうだったな。
友達以上恋人未満。五年ぶりにこんなやり取りをすると、懐かしさが心に広がっていく。
結局、
そのリオが目の前にいる。そう思うだけでまた涙が込み上げて来そうになる。
今度は早めに気持ちを伝えないとな。僕はそんな事を思いながらリオに微笑みかける。
「リオは優しいな、ありがとう」
「ううん。私たちは家族みたいなものじゃない。困った時はお互い様だから」
理由や原因はどうであれ、こうして死んだはずのリオが目の前にいる。
僕はタイムリープした……と考えていいのか。
少し冷えた頭でそんな仮説を立てる。
もしそうだったとしたら、それはチャンスだ。
もしかしたら僕の行動ひとつであの地獄のような出来事を回避できるかもしれない。
1回目の人生を終えるその瞬間に願った事。守られてばかりだったけれど、今回はリオを守る事が出来るかもしれない。
この2回目の人生ではリオを幸せに出来るかもしれない。
そのために何をすべきか。何が出来るのか。
それにこうしてリオと再会出来たんだ、あの時に伝えられなかった想いを……。
「……? どうしたの?」
などと考えていると僕の視線が気になったのか、リオが首を傾げて僕の顔を覗き込んできた。
久しぶりに会うリオはやっぱり可愛くて、懐かしさも相まって見入ってしまった。
アメリカにいた頃はたまに電話で話したりするだけだったからな。お互いに訓練訓練で帰省もしてなかったし。
まさか見惚れていたんだなんて言えるはずもなく、僕は適当に誤魔化した。
「あ、いや、なんでもない」
「そう? それよりさ、聞いてよ。さっき部活でさ
……」
そうだ。とりあえず今は難しく考えるのはやめて久しぶりの再会を楽しもう。
そうして僕は五年ぶりにリオと一緒に下校した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます