第28話 空間魔術師と壁尻さんの進化
今日の成果と金塊(宝箱は除く)は紫さんがそのまま応接室で換金処理してくれた。
金額が大きすぎるので口座振り込みだ。
「いいこと? 大金を得たからって無駄遣いしてはダメよ? それで身を持ち崩す人があとを絶たないんだからね。見せびらかすような真似をしてると、悪い大人を引き寄せることもあるんだから、ちゃんと気をつけなさいよ?」
ちょっと口うるさい。
だけど、そんな口うるささも紫さんが僕らのことを心配してくれてるんんだと思うと嬉しくなっちゃう。
こんな美人で有能でしっかり者なお姉さんが僕らの専属職員だなんて、口元がニマニマしちゃうよ。
「ちゃんと聞きなさい!」
ごめんなさい。
応接室を出た僕とてっちゃんは転職部屋へとやってきた。
それに空間魔術師のこともあるし、ジョブがカンストしちゃったからね。
早速僕はクリスタルに手を触れた。
基本ジョブをマスターしたことで、新たに中級ジョブという項目が増えている。
火魔術師と光魔術師。
これは各属性に特化した魔法使い系中級ジョブだ。
ただ属性特化ジョブの評価は微妙。
ダンジョンに深く潜ると特定の属性攻撃を半減したり無効化したり吸収したりってのがザラらしいからね。
属性特化はあとあと困るらしい。
それから付与術師はサポート特化の魔法使い。
テイマー系の中級ジョブも出ているけどこれらは取る気がないからスルー。
変わったジョブだとコマンダーってのが出てた。
戦闘中に指示していたからかな?
今後も指揮役をするなら取ってみてもいいかも。
あとは魔法使いとテイマーの複合ジョブ。
人形使いのパペッターにゴーレム使いのソーサラーと死霊使いのネクロマンサー。
この辺はあまり興味ないかな。
やっぱり魔法使い系の本命は、魔法使いを再履修して全魔法を覚えたあとに解禁される中級魔法使いのルートだな。
さてさて本命の空間魔術師はあるかな?
特殊ジョブの項目のところにあった!
すぐにメインジョブに設定する。
呆気ないけどこれで転職完了だ。
紫さんも未確認ジョブっていってたよね?
誰も知らないジョブ。
どんなスキルやアビリティを覚えるのか、これから楽しみだ。
ああ、でもその前にサブジョブも決めないと。
んっと、予定通りに行くなら魔法使いの再履修なんだけど。
その前にセージかな?
僕らには紫さんがいるから≪鑑定≫を僕が取る必要ないんだけど、やっぱダンジョン内で使えた方がいいよね。
初見の魔物のスキルや弱点が分からないと、今後危険なことがあるかもしれないし。
うん、セージにしておこう。
「てっちゃんは決まった?」
「僕は戦士の再履修と、サブは魔法使いにしたよ」
魔法使い?
「魔法剣士になりたいの?」
「いや、テラーナイトを目指そうと思ってね」
テラーナイト!
高い防御力と多様なデバフが特徴のジョブだ。
「意外だね。てっちゃんなら順当に騎士から聖騎士とかガーディアンとかの真っ当なイメージのジョブを目指すと思ってたよ」
「それも考えたんだけどね。い、イジメられてた時にさ、僕は武術をやってていじめっ子よりも強いハズなのに、先に怯えちゃっていいようにされてたから。その時のことを考えると先に相手をビビらせるのはやっぱり強いって思うんだよね」
おお、てっちゃんが闇堕ちだ!
周囲を威圧し恐怖を振りまくてっちゃん。
想像したらなんか格好いいな。
「でも転職大変だよね? 中級ジョブなのに同じ中級ジョブの騎士が前提でしょ?」
「でもテラーナイトにさえなれたらそこから最上級までは一直線だから」
中級のテラーナイトをマスターしたら上級のブラッドナイトで、それもマスターしたらそのまま最上級のデスナイトだっけ。
たしかにその後は速そう。
ていうかすんなり先のジョブに進める戦士に比べて何度も再履修が必要になる魔法使いって不遇だよね?
「先が楽しみだね」
「うん。は、はやく強くなりたいね」
僕らは未来の自分たちの姿に思いを馳せながら家路についた。
「——そういうわけだからさ、紫さんって職員さんが説明に来ると思うから、同意書お願いね。うん、分かってる。年末には帰るから。うん。お父さんも体に気を付けて。お母さんにもよろしくね。それじゃあね」
家に帰って忘れないうちに、実家のお父さんに電話して専属契約の話を報告しておいた。
僕がダンジョンに潜ることに随分と心配していたようだけど、管理局の職員さんに認められるだけの成果を上げたって話したらとても喜んでくれた。
年末に帰ったときに僕の冒険譚を聞かせてあげるのがとても楽しみだ。
通話中は静かにしていた壁尻さんが通話を終えた途端にじゃれついてきた。
あ、そうだ。
壁尻さんの進化のことをすっかり忘れていた。
とりあえずネットで調べてみようかな?
ダンジョン関連の情報サイトをあさってみたけど、≪進化解放≫で進化出来ない魔物の話は見つからなかった。
こういう時こそ掲示板なんだけど、多分壁尻さんの種族の事とか聞かれちゃうよね?
う~ん、それは嫌だな。
「どうしたもんかねぇ」
壁尻さんのお尻をぺちぺちしながら悩む。
とりあえず、壁尻さんのステータスをもう一度よく確認してみよう。
レベルはちゃんと五十になってる。
種族のところに星マークも付いていて、進化可能な状態。
もう一回やってみる?
「≪進化解放≫」
ぷりん?
何も変わらないね。
なんでだろう?
もう一回隅々までステータスをチェックする。
特に変わった所はないけれど——あっ!
いつの間にかスキルが増えてる!
≪真価解放≫だって!
≪進化解放≫と漢字違い!
絶対これ関係あるよね?
「壁尻さん、これじゃない? こんなスキルいつ覚えたの?」
ぷりん?
「壁尻さんも分かんないの? とりあえず試しに使ってみる?」
ぷりん!
「ヤバそうだったらすぐに中断だよ? いいね?」
ぷりぷりん!
机をどけて、狭い部屋に十分な広さのスペースを確保する。
これなら多分大丈夫だよね?
「よし、それじゃあ壁尻さん、≪真価解放≫だ!!」
ぷりん!!
壁尻さんがスキルを発動する!
床に魔法陣のような紋様が浮かび上がった!
それが徐々に壁尻さんを中心に収束していく!!
壁尻さんが光り輝いた!!!
やがて光が収まると、そこには——。
「あれ? 何も変わって——」
ない、と言おうとした時だった。
壁尻さんの尻元から何かがせり上がってくる!
それはなんと!
なんと!!
壁尻さんの上半身だった!!!
「壁尻さんが女の子になってる~~~!!!」
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