第24話 黄金郷・財宝の扉
メタルスライムのいた部屋から出て石碑の部屋へと戻ってくる。
一応、お仕置きモンスターやギミックを警戒していたんだけど、特に何もなかった。
まだ一部屋目だからかな?
それとも僕の推理が当たってた?
ぬぬぬ、正解か不正解かは教えて欲しいよ。
こういうところは不親切だよね、ダンジョンって。
「次はどっちの部屋に入る?」
「ざ、財宝一択だね」
「ほほう、その心は?」
「お仕置きモンスターに襲われたりしても、手に入れたアイテムが役立つかも?」
「金貨袋は役に立ちそうにないもんね」
というわけで次は右の財宝の部屋に。
ちゃんと警戒しながら鍵を差し込んで、いざ入場。
そこは相変わらずの一面金ぴかで、中央が祭壇みたいに少し高くなってるだけの何もない部屋だった。
拍子抜けしながら部屋にはいると、中央の祭壇の上で光の粒が二つ、くるくるっと円を描きながら立ち上った。
謎解き要素のあるゲームで宝箱を出現させるためのギミックを解いたときの演出みたいな感じ。
演出が終わると本当に宝箱が二つ出現した。
もしかして、ダンジョンを作った存在ってゲーマー?
いや、ゲームの方がダンジョンでおきる現象を参考にしているのかな?
それとも偶然の一致?
「た、宝箱が凄く豪華だ」
僕が他所事に思考を逸らしてる横で、てっちゃんは宝箱自体の派手さに驚いていた。
うん。僕もびっくりだよ。
どう見ても純金製で大粒のルビーやサファイア、エメラルドにダイヤまであしらわれている。
こりゃ中身も期待していいんじゃないかな?
「あ、開けてみよう!」
「じゃあ二つあるから一つずつ開けよっか!」
ぷりん?
「え、壁尻さんの分? すぅ~、壁尻さんと僕は一心同体でしょ?」
ぷりん?
「ダンジョンが用意し忘れた? いや、真面目な話をするとさ、人間の数に合わせて出現したんじゃないかな?」
ぷりぷり、ぷりん。
「そうそう、今回は諦めてね?」
ぷりん。
よし、壁尻さんが納得したところで早速宝箱を開けよう!
「一斉に開ける?」
「そうしよう」
「「いっせえ~の~でっ!」」
開いた箱を覗き込む。
「なんだこれ?」
僕が開けた箱に入っていたのは、青いクリスタルの結晶体のようなもの。
手に取ってみると目の前にステータス画面のようなウインドウが表示された!
——————————
『ジョブクリスタル:空間』
使用しますか?
はい/いいえ
——————————
え、なにこれ?
ジョブクリスタル?
使用したらどうなるの??
と、とりあえずキャンセルだ!
「うわぁ!!」
僕が混乱してる横で、てっちゃんが悲鳴を上げた。
「こ、こ、こ、孝ちゃん! た、大変だ!」
「どうしたの?」
「これ! これ!」
慌てた様子で差し出されたのは皮袋。
「これがなに? あ、これって宝箱の中身? なんだったの?」
ぱくぱくと口を開いては閉じ。
何度か繰り返してから意を決しててっちゃんは口を開く。
「アイテムバッグだ」
『アイテムバッグ』あるいは『マジックバッグ』。
雑誌『ダンジョンハック』の人気企画『是非とも手に入れたいダンジョンアイテム百選』にて、創刊から十年連続一位を獲得する幻のアイテム。
見た目は何の変哲もないカバンや袋だけど、中に入れたモノの重量を無視する上にその容量は小さなものでもコンテナ一個分、大きいものだと東京ドーム何個分とかになるらしい。
気になる買い取り価格は、容量の小さいものでも数億円。
大きいサイズになるととてもじゃないが値段をつけられない品だ。
そんな、幻のマジックアイテムが目の前に。
「ほ、本当に?」
「ほ、本当に」
てっちゃんはマジックバッグに腰に提げたロングソードとメイスを出し入れする。
間違いない、マジックバッグだ。
「これってさ、誰にも言えないよね?」
「う、うん。親にすら言えない」
実に困った。
「こ、孝ちゃんの方はどうだった?」
「これなんだけど……『ジョブクリスタル:空間』だって。手に持つと『使用しますか?』って聞かれるんだ」
使ったらどうなるんだろう?
き、気になる。
「てっちゃん、マジックバッグはてっちゃんの物にしていいからさ、これ僕が使っちゃダメかな?」
「い、いいの? どんな効果のアイテムかも分からないんだよ?」
「いいんだよ! なんかさ、ここの宝箱って僕たちそれぞれのために用意された様な気がするんだ」
宝箱出現の演出、人数分の宝箱、この金ぴかの不思議な空間。
きっと思い違いじゃないと思うんだよね。
「ぼ、僕は正直マジックバッグが欲しいからいいけどさ、孝ちゃんは後悔しない?」
もしこのアイテムが役に立たないガラクタだったとしたら。
「そりゃあ後悔するかもしれないけどさ。でもさ、これもまた冒険の醍醐味だよね?」
僕は今ワクワクしてる。
不思議な空間で見つけた不思議な宝物。
好奇心がうずうず疼いてしょうがない。
もしかしたらこの選択を後悔するときがくるかもしれない。
でもきっとその後悔すらも笑って受け入れられる。
それも大事な冒険の思い出だから!
僕は静かにクリスタルを握り込む。
再び現れるウインドウ。
今度こそ『はい』を選択する。
——汝、空間の理を得し者よ。『空間魔術師』の扉は今開かれん。
声が聞こえた。
ステータスを確認する。
ジョブはまだ魔法使いのまま。
転職が解放されたってことかな?
空間魔術師。空間属性なんて聞いたことないから、稀少属性だよね?
もしかしたらマジックバッグみたいに亜空間に物をしまえるようになったりして。
それと————僕の魔力がかなり増えている。
「ど、どうだった?」
「多分、新しいジョブが解放された。空間魔術師だって」
吃驚した顔のてっちゃんは自分の事の様に喜んでくれる。
「やったね、孝ちゃん! なんだか凄そうなジョブだね!」
「ありがとてっちゃん! 転職が楽しみだなぁ」
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