第9話 レベリング・デイズ

 火曜日。


 佐伯くん改め、てっちゃんは今度の土曜にライセンスを取得して日曜に合流予定なので、今日は壁尻さんと二人で探索。


 ダンジョンに入る前に管理局で使用料を払って転職クリスタルを使わせてもらう。


 幸いにも待ち時間はゼロだった。


 転職用の部屋に入ってクリスタルに手をかざすと、ジョブの候補がずらっと表示される。


 まずは基本ジョブの戦士、盗賊、魔法使い、僧侶。


 次に基本特殊ジョブ。


 この名称は何かい聞いてもモヤッとしちゃう。


 多分基本ジョブみたいに誰でもなれる特殊ジョブってことなんだろうけどね。


 テイマー、バード、ダンサー、遊び人、格闘家、セージ、冒険家。


 バードは呪歌で、ダンサーは踊りでそれぞれバフやデバフをばらまくサポートジョブ。


 遊び人は何か変なスキルやアビリティが多い変わり種で、ちょっと一口には説明できないよくわからないジョブだ。


 格闘家は素手で戦うおマゾさん向けのジョブで、僧侶と一緒に極めたらモンクへの道が開けるんだとか。


 セージは何か色々鑑定する人で、冒険家は隠し通路とかを看破するスキルやアビリティを覚えられるはずだ。


 それから特殊ジョブ。


 何か新しく転職できるもの増えてないかなって期待したけど、残念、候補は一つもなかった。


 最後に生産ジョブ。


 鍛冶師、裁縫師、薬師、錬金術師。


 このへんのジョブも気になるけど、今は魔法使いとテイマーで手一杯かな。


 またいずれ余裕が出てきたら試してみよう。


 とりあえず今日のところはメインの魔法使いとサブのテイマーを入れ替えて置く。


 てっちゃんが合流するまでの間にテイム枠を増やしておきたいんだよね。


 なのでレベルが上がりやすいメインジョブにテイマーを設定しておく。


 魔法使いをメインからサブにしたことで、能力補正が無くなっちゃうけど一階層なら多分大丈夫。


 壁尻さんもいるしね。


 というわけで転職を終えて、ダンジョンにレッツゴー。


 目標はテイマーレベル十だ!




 意気込んでダンジョンに潜ったけどあんまり魔物に会えなくて、テイマーのレベルが一つ上がっただけで終わっちゃった。


 現在のレベルはテイマーレベル八、魔法使いレベル十一、壁尻さんレベル七。



***



 木曜日。


 今日こそテイマーのレベルを十にするぞ!


 最初の一匹を倒したらレベルが上がった。


 前回レベルアップ直前まで行ってたみたい。


 あと一レベル上げるだけだ。


 こりゃ幸先がいいね。


 一階層をずんずん進みながら魔物を倒していく。


 途中で宝箱を見つけた。


 ミミックチェックして悪臭対策に鼻をつまんではいオープン。


 中には装飾のついてない金属製の指輪がはいっていた。


 鉄製かな?


 触ったらなんか魔力が籠ってそうな気がしたので、管理局で鑑定してもらおう。


 一階層で目一杯魔物と戦ってたら、やっとテイマーのレベルが上がった。


 アビリティは≪テイム枠増加Ⅰ≫を自動取得。


 これでテイム枠が三体に増えた。


 スキルはどうしようかな。


 う~ん、テイムモンスターが一時的に強くなるバフスキルの≪鼓舞≫でいっか。


 よし。じゃあ今日は帰ろう。


 ダンジョン管理局の買い取り窓口で今日の成果を清算してもらう。


「あら、今日も一階層だったのね」


 すっかり顔馴染みになった窓口のお姉さんに言われてしまった。


 やっぱり進みが遅いよね。しょんぼり。


「あら、違うのよ。あなたぐらいの歳の子ってみんな先へ先へ行きたがるものでしょ? ちゃんと自制できててえらいって褒めてるのよ?」


 あう、違うんです。


 自制してるんじゃなくて日曜に友達がダンジョンデビューするから、それを待ってるだけっていうか。


「そうなの? なら尚の事慎重にしなきゃダメね。一階層と二階層は危険度が全然違うから、お友達のためにもしばらくは一階層を探索しなさいな」


 やっぱり全然違うんです?


「そうね。一階層は単なるチュートリアルって感じで危険も少ないでしょ? 同じ感覚で二階層にいくと大けがしちゃうわよ」


 あー、罠とかモンハウとか?


「そうそう。そのあたりの対策がきちんと出来るまでは一階層で修行したほうがいいわ」


 うん。そうします。


「素直ないい子ね。あなたはきちんとしてるみたいだし、慎重さを忘れなければきっとうまくやれるわ。頑張ってね」


 お姉さんの素敵な笑顔にドキドキしちゃう。


 はっ、いかんいかん。


 僕は大天使・椎名さん一筋なんだ。


「あ、そうだ。こんなの拾ったんですけど、鑑定してもらえますか?」


 宝箱から出てきた指輪をポケットから取り出してお姉さんに見せる。


「見たところランク一のアイテムね。千円もらうけどいいかしら?」


「はい。お願いします」


 鑑定代を支払う。


 ランク一だから千円で済んだけど、高いランクだと一回の鑑定で百万円とかするらしい。


 しかも鑑定できる人が少ないから時間も何日もかかるとか。


 お姉さんはその場でスキルを使って鑑定してくれた。


「はい≪鑑定≫。これは魔力の指輪ね。つけると魔法の威力がほんのちょっとだけ上昇するわ。鑑定書がいるなら別途三百円いただくけど、どうする?」


「あ、自分で使うから鑑定書はいらないです」


 お姉さんにお礼を言ってから窓口から離れた。


「今日も探索お疲れ様でした」


 買い取り窓口の定型文を口にするお姉さんに小さく手を振ると、朗らかな笑顔で手を振り返してくれた。


 はう。かわいい。


 好きになっちゃいそう。




 現在のレベルはテイマーレベル十、魔法使いレベル十二、壁尻さんレベル九。




***



 土曜日。


 木曜にレベリングの目標をクリアしたからどうしようかと思ったけど、テイマーをメインジョブにしたままレベリングを続行する。


 代り映えしない一階層でのレベリングなので、特に変わったことは何もなかった。


 壁尻さんがレベル十になったときに新スキルを習得したぐらい。


 新スキルは≪闇弾≫。≪風弾≫の闇属性バージョン。


 とうとう壁尻さんは二色のおならバズーカを使い分けるようになった。


 ドヤ尻にも磨きがかかっている。


 かっこいいよ、壁尻さん。


 お尻界最強の座は君の物だ!





 現在のレベルはテイマーレベル十二、魔法使いレベル十三、壁尻さんレベル十一。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

≪作者からのお願い≫


拙作をお読みいただきありがとうございます。


よろしければ、☆や♡、ブクマなどでの支援をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る