第5話 彼女のプライベート【4】
「社長、何を考えているんですか?」
「ホントだ。暁、いい加減にしろよ」
芹と駿がそろって抗議する。
「はあ?芹が俺を嫉妬させるのが悪いんだろ?」
「「……」」
反省した様子は一切なく告白まがいのことを口にする。そんな暁に芹と駿はポカンとしてしまう。
「あの〜、芹奈さんどういった状況ですか?」
微妙な雰囲気の三人にイベントの関係者から声が掛かる。最初は個人的にコスプレをして客として参加していた芹だが、芹奈が来るだけで集客が上がることから、いつからかイベントへ呼ばれる立場になっていた。
「ご迷惑をお掛けしてすみません。私にもどうしてこんなことになったのか……」
芹はまったく悪くないのだが、騒ぎになってしまったことに謝罪する。
「失礼ですがあなたは?」
イベントの関係者は、今度は暁に声を掛ける。スーツを着て会場では異質な暁は、遊びに来たようには見えない。ハピカレの廉に似ていると騒がれていたが、廉のコスプレをしているようにはまったく見えないうえに、人を圧倒するオーラがある。
「お騒がせして申し訳ありません。
「エエッ‼新城堂の社長秘書⁈」
駿を見て驚きの声をあげたスタッフは、その隣の威圧感のある暁に視線を向ける。
「し、し、新城社長⁈」
「ああ」
「社長、謝罪してください」
「とんでもない。新城堂の社長様がイベントにお越しいただけるなんて夢 みたいです。
「……」
社長と名乗ってしまい芹を追いかけて来たとは言いづらい。
「すみません。たまたま近くで打合せがありまして、イベントのことは把握できていなかったのですが、人が大勢集まって来ていたのでなにか今後の参考になるかと寄らせていただいたんです」
駿が瞬時にフォローする。
「そうなんですね。光栄です。新城堂のブースは見ていかれますか?」
「いや、これ以上騒ぎを大きくするわけにはいかないので失礼する」
「そうですか……」
「芹を連れて帰っていいか?」
「「えっ⁈」」
箕谷だけではなく芹からも驚きの声が上がる。
「ダメなのか?」
「芹奈さんとお知り合いですか?」
「芹はうちの社員だ」
箕谷はコスプレイヤーの芹奈とは面識があるが、アルバイトではないので身元までは詳しく知らなかったのだ。
「そんなっ、私帰りません。まだ旬くんのところに行ってない……」
「昨日から、シュン、シュンって、シュンは何者だ?」
「……」
「新城社長は『ハピカレ』はご存知ですか?」
「知らなかったが、会場で廉とやらに似ていると言われて調べた」
「そうですね。確かに、登場人物のイケメン三銃士の廉に似ておられる。その三銃士が、廉と旬と稜なんです。芹奈さんが夢中なのは、その三銃士の旬ですね」
「旬とやらは、乙女ゲームのキャラクターだったのか……」
自分が嫉妬していた相手が彼氏ではなく、さらには実在する人物でもないことに、安堵と歓喜が駆け巡る。暁はニヤニヤが止まらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます