第二部最終章:対面
29.侵入
光達は、早朝からリビングに集まり、光がゲットした情報を見ながら考えていた。
「……俺らは、考えていることは一緒だ。それは『どうして知り合いが殺人紛いの事をしているのか』だ。」
颯がそう言うと、皆は頷いた。
「それは、もう本人に聞くしかないと思うの。」
「じゃあ、本部に乗り込むのか?」
「そういうことだね。でも、『metatual』にはもうログイン出来ないんでしょ?」
「出来るよ。」
光の発言により、皆の視線は光に集まる。
「下、見て。ここに『metatual』のログイン権がある。これをアプリにダウンロード出来ればいいよ。」
「『metatual』のアプリさえあれば、ログイン出来るもんな。」
「でも、いつ出発しようか……。」
彩芽の発言に皆は頭を傾げた。すると、翼が声を出した。
「明日、行かないか?」
「明日?」
「そう。明日も休日だろ?だから、『zero』の奴らもせっせこ働いてるんじゃないかって。」
「確かに、ブラックそうだもんね……。」
翼の発言に皆が賛同していると、颯が口を開いた。
「じゃあ、明日までに色々準備しよう。勿論、心の準備もね。」
颯がそう言うと、皆は頷いた。そして、話は段々と世間話へと変わっていった。
すると、バン、と玄関のドアが大きな音を立てて開いた。そこには山口さんと速水さんがいた。
「え!?どうしたの!?」
「……はぁ、良かった。みんなは被害に遭ってないみたい。」
「みんな、早くテレビを見て!」
二人の切迫した表情を見て、皆はテレビをつけてテレビに映ったニュースを見た。
『速報です。現在、大勢のマントを着た人たちが駅にいる人たちに襲いかかっていると言う情報が流れてきました。現在、外にいる人たちは直ちに家に戻ってください!繰り返します――。』
「え……?」
このニュースに皆は驚いていた。その中、颯が口を開いた。
「『zero』だ。」
「なんで、今その名前を?」
「ほら、資料の中に書いていただろ?そこには一般人も巻き込もうとしているって書いていた。多分、今がその時なんだ。」
「そんな……!」
彩芽が絶句していると、翼が立ち上がった。
「行かなきゃ。」
「翼……?」
「早く準備するぞ。多分、親玉は施設に隠れているはずだ。」
「……そうね。」
翼の発言に久遠も立ち上がると、皆が次々と立ち上がった。
「え?何々?なにするの?」
「山口さんと速水さんはここに居て!」
彩芽がそう言うと、皆は自分の部屋へと戻っていった。
「え、なんだろ……。」
「『metatual』にログイン……?いや、あそこはもうログイン出来ないはず……。」
「……速水さん。まず考えるのをやめよう。」
「そうだね。みんなの安全を願おう。」
二人はそう言い、まずはテレビをゆっくりと見る準備をしようとコーヒーを作りに行った。
「けほっ……。」
光達がスポーンすると、そこは瓦礫で埋まっており、瓦礫をどけながら外へと出た。
ポケットに変身道具がある事を確認し、皆が外に集まっていないか周りを確認すると、外はあの時から放置されたままだったのか、ボロボロのままで、空は曇り空だった。
周りにはまだ誰もおらず、光が困惑していると、瓦礫の下から呻き声が聞こえてきた。彩芽の声だ。
光は急いで瓦礫を退けようとするが、なかなか動かない。
「う、動かない……!」
「ひ、光ちゃん……。変身、変身するんだよ……!」
「あ、そうか!」
光は道具を取り出し、宝石のボタンを押し変身して、瓦礫を軽々と持ち上げた。
そこには彩芽だけではなく、颯もいた。
「危なかったー。もうすぐで死ぬとこだった……。」
「そうだな……。あ、翼と久遠は!?」
「そうだ!翼くーん!久遠ちゃーん!」
光が叫ぶと、ガタッと遠くの瓦礫が動いた。
光達は動いた場所に向かい、瓦礫を退けると、やはりそこに翼と久遠がいた。
「ごほっ、助かった……。」
「ありがとう、光。」
「どういたしまして。」
二人を引き上げ、道路の方へ向かい、全員集まった事を確認した。
「これからどうするんだ?」
「とりあえず、『zero』の本拠地に向かおう。そこに居るはずだよ。」
翼の質問に彩芽がそう言うと、颯が皆に問いかけた。
「場所をメモしてる人いる?」
「一応、私のデバイスの中に書いてあるよ。」
颯の問いかけに光は耳についている機械の左側を押した。そっちはログアウトボタンじゃない方だ。
押すと、沢山のアプリボタンが見え、そのうちメモのアプリを押した。
「ほら、これ。」
皆が光の画面を覗き見るように見ると、そこには大体の場所と建物の画像、そして、この場所からどの方向で着くかと言うナビもついていた。
「ナイスだぞ!光!」
「えへへ。」
颯が光の頭を撫でると、光は頭を掻いた。
「じゃあ、全員変身して出発するか。」
「そっちの方が速いし疲れないもんね。」
翼の呼びかけにより、皆揃って変身をし、遥か遠くの『zero』の拠点へと向かった。
皆で拠点へと向かう途中、景色は崩壊したままの街からどんどん建物は少なくなって、段々と大きな建物が見えてくる。
そして、『zero』の拠点の前に着いた。拠点は圧倒されるほどに大きく、装飾も何もない、鉄で出来た建物で少し怖くなるくらいだった。
「今、部下に当たる人はいないだろうから、侵入は容易いと思う。早く行こう。」
「一応さ、裏口が無いか探さない?」
彩芽の提案により、颯と彩芽、光と翼と久遠の二手に分かれ、裏口が無いか探した。が、どこにも無かった。
「無かったね……。」
「じゃあ真正面から行くしかないか。」
「……!ドアを見て頂戴。」
久遠の掛け声により、皆が正面のドアを見ると、そこには頑丈なドアと横にある暗証番号があった。
「つまり、ここは会員しか入れないようになってるって事か?」
「そう言うことになるわね。まぁ、そりゃセキュリティも固いか。」
「うぅ〜!しゃらくせぇ!お前ら、退け!」
「え、何!?」
「いいから、遠くへいけ!」
翼の掛け声で皆がそのドアから離れると、翼も少し離れてロケットランチャーを取り出し、そのままドアの方へ放った。
弾はそのままドアに直撃し、ドア含め周りの壁と土を抉った。
「翼、流石にそれは……」
「うっせぇな!一々こんなことしてらんないって!それに、ここ占拠すれば、こんなもんどうだっていいむて!」
そう言う翼は、昔の無邪気な姿と少し重なった。
「……はぁ、それもそうだな。」
「なんだか、昔の翼を見た気分。」
颯と彩芽がそれぞれそう言うと、翼は目を見開いた後、少し部が悪そうな顔をした。
「……なんか、ごめん。」
「別にいいよ、翼くん。なんだか逆に吹っ切れたから。」
「そうよ、アンタに元気付けられちゃった。」
「……あー、そう言うところ、直そうと思ってたのにな。でも、ありがとう。」
皆がそう話していると、建物から大きな警告音が流れてきた。
『――侵入者出現!建物を破壊し、この組織を壊滅させようとしている様子!直ちに『bug』を出現させ、侵入者を確保しなさい!繰り返します……――。』
「……なんか、やばい事になったぞ。」
翼がさあ、と青ざめていくと、颯がぽん、と肩を叩いた。
「確かに、やばい状況だけど、向こうから来てくれるって事だろ?なら、迎え撃とうよ。」
「なーにネガティブになってるの?こうなったらもう後戻り出来ないんだから。」
「それも、そうか……。」
颯と彩芽に慰められた翼は、決心したような顔をした。
「じゃあ、行こうか。」
「「うん!」」
光の掛け声に皆は返事をし、そのまま建物に入っていった。
――待ってて、火門さん。なんでそんなことしてるのか、絶対にきいてやるんだから!
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