tale8
雨が吹き荒れ、地響きに人は驚く。
一音程が続く声が途切れながら裏庭の木と共に頭を垂らしていた。穴の空いた傘から流れ落ちる雫が鼻の先まで届き土の溢れた芝生に染み渡る。
レディバグは起きなかった。
手当てをして清潔なベッドで腰掛け、その時をじっと待っていたが、ついに誰かがここに埋めたのだ。
マリアはもう泣きはしなかった。力んで震えた拳がもう抜け落ちた悲しみの代わりである。
ぶつぶつと呟く声がようやく落ち着くと、
「アーメン」
マリアはそう言い、手を合わせる。
芝生を静かに見つめると、踵を返し家に戻った。裏庭から続くドアはキッチンへと繋がっている。
キッチンには沸々と煮立った鍋が赤く染まっている。空きスペースにトマトの切った後が残ったまな板がそのままだ。
「あら、マリア。手伝いをしに?」
マリアは何も答えなかった。頷くこともなく、ただ煮え立つ鍋を眺めている。
妻はそれを見てため息をついた。
手に持った布巾を近くの椅子にかけ、マリアの近くによる。
「今日はトマトのビーフシチューよ。……あらなに。そんな汚らしい格好をして。ずぶ濡れで土まみれでみっともない」
妻のヒールの音がマリアの目の前で鳴る。
そして綺麗な骨の音が鳴った。
傘の布に骨が引っかかる。
マリアは編み上げたブーツで妻を抑えて思い切り引き抜いた。
少しの静寂。
しかしマリアは首を傾げた。
「花が咲かない?」
マリアはあぁ、と声を溢すと家の中を歩き進める。
「もう若い方が……いいのでしょうか」
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