tale6
マリアは善を掲げる者であった。
家族がレディバグに冷たくすると、その分の幸せを教えのだ。
息子は用があると紙切れに時間を書き、レディバグの手のひらに落とす。遊びの時間は頻繁に行われ、レディバグの存在意義はそれである。
息子がどこかへ行くと同時にレディバグの意識は途切れ、目覚める時には必ずマリアが横にいる。時が経つに連れレディバグのみなりは人形のように麗しくなっていった。
「ーこうして女の子は夢見たお姫様になるのでした。おしまい」
「姫を夢見るなんてどうかしてるわね」
「あら、レディバグ。夢を見るのは楽しいではないですか。それでいいのですよ」
皆が寝静まった夜中。
あの日灯した光をそばに持ち寄り、マリアの持ってきた絵本で教養をつける。マリアはどんな日でもこれを欠かさない。どんなに死にかけた日も、マリアの魔法は強力であった。
絵本を閉じると、ベッドに腰掛けていたマリアはレディバグに目を閉じるよう促す。
「ねぇ、マリア」
「なんですか」
「夢を見るのは大事?」
眠気と闘いながらレディバグはマリアを見上げた。マリアは悩んだそぶりを見せると、視線をレディバグの足の方へとやり、暖かい手でなでる。
「いえ。あなたは夢を見るより、自分を想った方が……。なんでもありません」
レディバグはその仕草を俯瞰すると、欠伸をして目を閉じた。2人では考える深さが違ったのかもしれない。
「おやすみ、マリア」
「……おやすみなさい、レディバグ」
レディバグが目を閉じたのを見ると、マリアは軋む床に注意を払いながら部屋を後にした。
キャンドルを消した煙が部屋を守るように薄く靡いた。
「レディバグ」
「っ!」
聞き慣れた声がレディバグの耳元を掠めた。
反射的に声のする方へ顔を向ける。
そこにはいつかの期待の目。
レディバグはこの目を見ると驚いた感情がまるでなかったかのように表情が静まる。
つまり合図なのだ。
「レディバグ。おいで」
しかしいくら時間が経っても紙は落とされることなく、その代わりか優しい声がレディバグをで招いた。
「おいで。逃げるのを手伝ってあげよう」
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