tale5

あなたが来てくれてよかった。

 

「っ!はぁ……はぁ…」

弾かれたように起き上がると、じっとりと濡れた肌に荒い息が少し収まる。


「あら、お目覚めですか」

キャンドルが一つ灯ると、声の主が見え隠れする。

「あなたはレディバグ……ですね。わたし、今日からここにお勤めに来たメイドのマリアと申します」

「…‥傷がない」

レディバグはマリアの自己紹介はさておき自身の変化に目を見開く。廃れた服ではなく肌触りのいい寝衣に変わり、フォークを突きつけられた足は傷など一つもない。

その慌てようにマリアは使い終わったマッチを折りながら言い添える。

「魔法ですよ」

レディバグはそれを聞いて固まると、マリアもその様子に困惑を見せる。

「……そんなわけ、ないですよ。魔法なんて絵本の中だけ」

それを聞いてマリアは胸を撫で下ろすと、微笑んだ。

「わたしのマリアという字は聖母『マザーテレサ』からきているのですよ。なのでわたしは魔法が使えるのです」

「マ、マザー……?」

饒舌になり出したマリアに若干の引きをみせるレディバグは聞き慣れない言葉に首を傾げていた。

マリアは一旦話をやめると、レディバグの手をゆっくりと包み込んだ。

「わたしが教えて差し上げますよ。レディバグ。あなたは自身の幸せを願って下さい、どうか」

マリアは急にしゃがみ込むとレディバグを見上げ、縋るように言った。

レディバグは居心地の良い空間にベッドシーツを足でなぞった。

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