tale4
「ルーク、新人だよ」
男が扉の向こう側に話しかける。
依然針が布を抜けるような音は続いているが、男は表情ひとつ変えず、微笑ましいというように軽いノックを二つした。
「ルーク、遊びはあとでしなさい。夕食の時間だ」
突如音が止み、年季の入った音を奏でながらドアノブが回る。
息子はドアの隙間から顔を出すと、嬉しそうに目を細めた。
「やったぁ!今日はクリームスープだって母様が言ってたんだぁ」
扉を身一つ分開いてしまうと男は息子に手を差し伸べた。息子はその手を喜んで握る。
男はその様子にまた微笑むと、横に立っていた見知らぬ女に声をかけた。
「これから息子の着替えが終わり次第夕食を始めるから、妻の手伝いをしてきてくれる?」
その声に女は見向きもせず、何もせず。
その様子に男はため息をつくと息子の部屋へと歩みを進めた。
刻々と時計の針だけが響く部屋。
女は何秒もの間、同じ一点を見つめていた。
「……あなた。大丈夫?」
震える声で女は尋ねるが、何も返事はない。
外で子供のはしゃぐ声がこだました。
それさえも不似合いの背景になったが、それが女の心を打ったのか青い顔が苦虫を噛んだような居た堪れない表情に変わる。
持っていたボストンのバックを床に落とした拍子になにかに走り寄る。
赤いベッドには赤い幸せが横たわっていた。
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