第130話 殺してくれないか?
そんなダニエルの姿を見て俺は思わず【フェニックスの尾】をストレージから出していた。
ドゥーナの足を治す為にと取ってきた時に、ゲームと同じような効果なのか不安だった為一応予備として一枚多く採取して来たものであり、結局フェニックスの尾がゲーム同様にドゥーナの足を治してくれたため残ってしまっていたものである。
本当はこんな行為、ダニエルが今まで行ってきて残虐非道な行いからしてありえないという事は理解できているのだが、それでも『俺がストーリーを改変しなければダニエルはこんな罪を背負う事も無かったと思うと身体が勝手に動いてしまっていたのだ。
「…………何の冗談だ?」
そんな俺の行動に、ダニエルは苛立ちを隠すことなく俺の取った行動の意味を聞いて来る。
「俺ならば一度お前を殺して、生き返らすことができる。 そうすれば今の化け物のような姿も人間の姿へと戻るだろう」
「……それで、罪から逃げて、死ぬまで逃げて生きろとでも言いたいのか? なめてんじゃねーぞっ!!」
そして俺はダニエルへ一度死んで、やり直さないかと提案するのだが、ダニエルは魔剣の影響で化け物になった身体の再生力はまだ残っているのか、再生した手足で俺の手にもっているフェニックスの尾を掴むと地面へ落とし、踏みつける。
「…………お前は、ダニエルは強いんだな」
「当り前だ。俺を誰だと思っている? 気持ちだけはお前にだって負けやしねーよ」
そういうダニエルはどこか誇らしげで、何か吹っ切れたような表情をしていた。
「あぁ、身体が崩壊してきたようだ。 どうやらあの魔剣のお陰で俺のこの身体を維持できていたようだな。魔剣が無くなった今、俺の身体はやはり維持できないようだな……本当に、俺の人生は一体何だったんだろう。結局、振り返ってみると承認欲求と嫉妬心に狂わされた人生だった……。なぁルーカス……俺の身体が崩れて無くなってしまう前に、俺の意識を保っている内に殺してくれないか?」
「…………分かった」
なるほど、ダニエルをこの手で殺す事が、これから俺が背負っていく罪なのだろう……。
そして俺は、小声で「すまなかった」と呟き、ダニエルの首を切り落とすのであった。
◆ルーカスside
あれから数か月がたった。
ダニエルを殺したあと、崩れ行くダニエルの身体をストレージへ入れて帝都へ、そしてドゥーナを拾ってタリム領へと戻って来た俺はダニエルの墓を作り、そこへ崩れてしまって最早原型をとどめていないダニエルだったものを地面に埋めて桜のような花が咲く木を植え、そこへタリム領で作られた酒を撒く。
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