第128話 ゴミ過ぎてヤバいレベル

 流石に連続で使用できたとしても、これほどの威力の能力がある技を間髪入れず武器スキルを行使できるとは思っていなかったのだろう。


 さらに、先ほどの六連撃を捌き切ったところで、安堵したのか集中力が切れてしまってのか、碌に捌くことができずに四肢が切り飛ばされ、そして切り口には青い炎がダニエルを焼き尽くさんと燃え広がって行く。


「結局、魔剣を手にして沢山の命を奪い得た仮初の力といえどもこの程度でしかないのか……。本当に、お前が『俺憎し』と復讐の為に費やした時間も努力も命も、全て無駄だったな」


「ふざけんなぁぁぁぁぁあああっ!!!!」


 そして俺の挑発に痛みよりも怒りが勝ったのだろう。ダニエルはその怒りを叫んで俺へと伝えて来る。


 しかしながら叫んで怒りを伝えたところで『あぁ、こいつ俺に怒っているんだな』と感じるだけであり、四肢から燃え広がる炎が消える訳でも、失った四肢が生えてくるわけでもないと言うのに。


 こういう時に感情的にならずに冷静に思考を巡らせる事ができるかどうかで冒険者としてのう器が知れるというものである。


 だからこそアイシャは俺に負けたしダニエルも俺にここで殺される訳である。


 その前に俺は、一度土魔術でダニエルの身体を拘束して四肢を切り落とされたと同時に床へ落ちた魔剣を拾う。


 すると、魔剣を拾った瞬間に老婆が俺の目の前に現れ『この剣を手にすればお前の望みを一つだけ叶えてやろう』言うではないか。


「なるほどねえ……。この魔剣自体が憎しみや悲しみ、怒りなどといった負の感情を長い年月によって溜め込み過ぎ、結果それが魔剣に自我を与え、そしてこのように魔剣を手にした者へと『幻術』を見せてくるのか……」


 うーーん、控えめに言ってゴミ過ぎるなこの魔剣。


 どれだけヤバいかと言うと、ゴミ過ぎてヤバいレベルである。


 あまり攻撃力が高い訳でもなく、武器スキルが別途あるわけでもないしストレージも無い。はっきり言ってこの時点で俺からすれば『自分も含めて不幸になる』というゴミでしかない。


 そんな魔剣を地面に突き刺して【童子切安綱】を構える。


 この【童子切安綱】なのだが、酒呑童子を切った鬼切りの実績があるのだが、もう一つ、キツネに憑かれた女性からキツネを追い払ったという伝説もある訳で……まさに精神を乗っ取って来ようとするこの魔剣にはうってつけという訳である。

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