第124話 狂っているとしか思えない


「ふん、まぁ良いだろう。お前が俺と戦う事に対してどう思っていようが俺には関係ない。良く思っていようが悪く思っていようが俺はお前を殺すつもりだし、逃がすつもりも無い」


 そんな俺に対してダニエルはそう答える。


 その言葉は魔剣で得た感情ではなくダニエルの本心から出た言葉である事が、俺にも伝わってくる。


「とりあえず、お前がお前である状態で殺してやるよ」


 なのでせめて、魔剣に乗っ取られた状態ではなく、ダニエルとして意識がある状態で殺してやる事こそが、ダニエルの運命を狂わせてしまった俺ができる唯一の役目であろう。


「その上から目線がどこまで続くか見ものだなっ!!」


 そしてダニエルは、腰に挿している魔剣を抜刀して、構える。


 こうして実際に魔剣を直で見ると、確かにヤバいモノだという事が分かる。


 それは、大量の命を吸ったからこそでているオーラなのか、元からあの禍々しいオーラを放っていたのかは分からないのだが、取りあえずぶち壊さなければならない存在である事は間違いない。


 そんな事を思った瞬間、ダニエルの姿が目の前から消えるではないか。


「よくこの攻撃を防げたなっ!! この一撃でお前を殺そうと思っていたが、そう簡単に死んではくれないかっ!!」


 あの一瞬で俺の背後に周り、背中から魔剣を突き刺してこようとしている事に気付いた俺は咄嗟にストレージから剣を取り出して横薙ぎでダニエルの攻撃を払うように防ぐと、即座に距離をとる。


 ちなみにストレージから出した剣は、最終的にゲーム内で俺が装備していた当時の武器評価でS評価をされていた三種類の内の一つであり、ピックアップ課金十連ガチャを二十回回して『外れ武器を交換する事で手に入るチケット三百枚と引き換える事によって手にした武器』である。


 当時は『ピックアップとは?』とは思ったものの、それでも『当たらなかった自分が悪い』だの『チケット救済があるだけこの運営は良心的だ』などと思っていたのだが、今思えば五万、いや、一万円以上回しても当たらないのが当たり前という時点で狂っているとしか思えない。

 

 あの頃は射幸心を煽られてまともな思考ができなかったというか、外れているのにドーパミンがドパドパと出ていたと自分でも分かる位に興奮していた事からもそのヤバさが分かるが、それが分かるのは毎回『爆死した時』だけであり、そして何故か一か月後にはその爆死したという『苦しい経験』よりも『新規ガチャを回したい』という欲求の方が上回るのだから恐ろしい。

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