第122話 ドン引きである


 取りあえず、ダニエルの話を聞いた感じだと既に魔剣に精神を蝕まれており、恐らくいまから魔剣を奪い取ったところでどうにもならないだろう事は、人の姿を辞めたダニエルの姿からしても明らかだろう。


「だからマリアンヌも、手始めに俺と一緒にこのいけ好かないルーカスを嬲り殺してやろうぜっ!! あの時は確かに俺はルーカス相手に手も足も出せなかったが、今の俺はあの時の非じゃない程の強さを得たから、もうルーカスなんかには負けないと言い切れるだけの力を持っている…………あ?」


 なので俺は今なお気持ち良く喋っている途中であるダニエルの腕を切り落とす。


 これがスポーツなどであれば卑怯な行為であるのだが、ただの殺し合いにルールだのなんだの言っていられないからな。


 むしろこの場合気を抜いてしまったダニエルの方が悪いというのが俺の認識である。


「すまんな。 俺を殺そうとしている事を知った時点で、俺はお前に殺される前に攻撃する権利があると思っているんだが、卑怯とは言わないよな?」

「…………そうか、なるほどなるほど」


 しかし、ダニエルは怒るでもなくただ切り落とされた腕を眺めた後、納得しながら拾い上げると、切られた腕の切り口へとくっつける。


 すると、切り落とされた腕から無数の濃いピンク色をした紐状のものがうごめきながら生えてくると、そのまま切り口へと突き刺していくではないか。


 その光景にアイシャもマリアンヌもドン引きである。


 ちなみに流石の俺も無数の濃いピンク色の紐状の何かがうごめく光景ははっきり言ってドン引きしていたのは内緒である。


 いや、確かに昔のアニメとかでは良くあった光景ではあるものの、こうして実際にみるとアニメ以上に気持ち悪さが際立っているというか何というか……あれを気持ち悪いと思わない人間はいないのではなかろうか?


「おそらくルーカスは俺に勝てないと思って隙を突いて攻撃したのだろうが、残念だったな」

「まぁ、お前がそう思うのであればそれで良いんじゃないのか?」


 ただ単にさっさと倒して帰路につこうとしただけなのだが、それを言った所で何かが変わるわけでも無く、むしろ更に相手が煽ってくる可能性もあるので適当に流しておく。

 

「しぶとそうだな……。ニーズヘッグ」

「どうした、主?」

「アイシャとマリアンヌを首都であるエルフェイムの外へと連れて行ってくれないか? 守りながら倒せない事も無いだろうが万が一巻き込んでしまう可能性があるからな……」

「かしこまりました」




 

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